天羽文乃によるお宅訪問
『それじゃ、今日、賀田くんの家行くから』
ちょくちょく連絡をくれる天羽さんが、遂に俺の家に来るのだ。
「困っている人の救世主!! 我籐大悟参上」
「参上じゃねぇ惨状だ!!
何でいるんですか我籐大悟!! あとこの散らかり様!! まさか一昨日図書室散らかしたのお前か!?」
「あぁ、私、片付けできない性分なんで」
「性分なんで、じゃねぇよ散らかしにくるんじゃねぇよ……毎日綺麗にしてんだよ……俺は……」
「じゃあこのゴミ屋敷よろしくな惨状は一体……」
「お前のせいだ大悟ぉ!!! お前が『エロ本とかしまってなーい?』とか変なことし出すから!!」
「止めなかったお前が悪い」
「それだってこんなちらしっぱにするとは思ってねぇよぉあああ!!!」
悪びれもしない。そんな大悟を振り回す。
「ガクガクふるな吐き気するぞ、俺の朝飯はラーメンチャーハン両方大盛りぐぇぇえ」
「うっわ止めろおおおおお!???」
「そう言うわけで、散らかってるけどよろしく」
「あ、はい」
天羽さんが来た。取り敢えず廊下とリビングは粗方片づけた。寝室に全部投げる形で。
そもそも得意じゃねぇの、片付けは。最初から気を付けてたから出来ただけで。
天羽さんはおずおずと言った様子で、座布団に座る。
「あの、気になるんだけど」
「何? ああ、それはタダの馬鹿」
「………なんで正座とプラカード……『私は部屋を散らかしました』??」
「ちらかってる元凶コイツだから」
「へぇ……私も片づけられないんで共感できるんですけどねこの部屋の感じ」
「……困ってる?」
困らせた本人が何をぬけぬけと。
「黙ってろ大悟」
「いや、派手なオーラだっ」
「黙れ」
「あい、すいません」
取り敢えず威圧して大悟を静かにしたが、天羽さんが落ち着かない様子なのは変わらない。というか威圧は良くないよね。
大悟は正座のままな。
「仲良いんですね」
「まぁ、そうかもね」
「友達、居るんですか」
「結構居るよ? うん」
大悟以外に友と呼べる野郎は居ないがそれは黙っていよう。
「さっき大悟さん? が言ってたんで言うんですけど困ってること、結構あるんですよね」
「あー、うんコイツそう言うのに聡いの」
「そうなの?」
「はいそーです!!」
「うるさい大悟」
「すいません……ねえもしかして今日一日こんなんなの? それ俺困っちゃうなぁ」
「少なくとも天羽さん帰るまでそのままでいてもらうからね???」
「アッハイ」
「ははっ、本当に仲良いんですね……で、困ってる事って言うのが………あー、今日行うつもり無かったんだけどなぁ」
「言いたくないなら言わなくて良いよ?」
「えぇ、それは困るなぁ」
「困」
「うるさい大悟」
「喋らせろやキレるぞいい加減!!」
「おおキレて見ろよ大悟!!? こっちゃ多少は鍛えてんだよ!!」
「そーかそーか、俺は困ってる人を助けまくってるからなぁ! 言ってしまえば人のために働いて鍛えてんだよなぁ!!?」
「二人とも静かに───」
ピンポーン
呼び鈴の音だ。あ、ヤバい。これ、ヤバいヤツだ。
「ど、どうした?? そんな顔面蒼白になって」
「ヤツが………来た………隣室の……あいつが………」
天羽さんは怪訝な顔をして俺を見た。
「つか、そんなにビビるような相手がいるのか? チャイム鳴らした奴見て来るわ」
「あ、私も行くー」
あー、行っちゃった。
「「ひっ!?」」
あー、見ちゃった。
仲良く騒ぐ人達がうるさいという建て前で突撃してくるぼっちの視線を喰らってしまったようだ。あの嫉妬の昏さ、マジで怖い。
「おいおい隣芳堂だったのかよ先に言えよ」
「すごーい美人さんが本気で怒ってるとあんな怖いの!?」
大悟が精一杯に声を抑えているのに対してその大声は止めてくれないかな!!?
「天羽さん見てるのバレるから───」
ガチャ
あ! 鍵閉めてなかったわ……。
「───あの、とても騒がしいので静かにしていただけませんか? 永久に」
「「「ハイ、スイマセン」」」
「分かればいいわ、それでは御機嫌よう」
「ちょっと待って下さい!! ちょっと一緒に遊びませんか?」
「「「───はい?」」」
うん、待って天羽さん何言ってるの。何言ってるの?
そう言って取り出したのは、コントローラーだった。確かこれは、忍転堂さんのゲームハードWill、のリモコンだっけ??
「えっと、リモコン入れといてって母さんに頼んだら三つ入れられちゃって……でもちょうどよくないですか?? たしか賀田さんWillあるって言ってましたよね??」
「確かにあるけど」
「なら、ちょうど四人いることですし? やりましょうよ、安心して下さいパーティーゲーム持ってきましたし!!」
天羽さんはそう言った。バッとソフトとリモコンを出しながら。
「……って、迷惑でした? ははは……」
「………あ、え、や、は」
「えっと」「芳堂さん」「芳堂さん! 一緒にゲームやりましょうよ」
押し切られる芳堂さん。きっと三ヶ月ぼっちだったから、そう言うのに耐性がなくなっちゃったんだろうなぁ。
パーティーゲーム、なんて言われたけど、それは有名なゲームだった。これまたかの有名な忍転堂さんのダリオパーティーとかいう。
「………これいいのか?」
「どうした大悟、せめて正座は続けろ」
「いや、タイトルとか結構ギリギ」
「さー始めよっか!! このゲームおもしろそうだなぁ!!!」
大悟は正座のままで呟くのがちょっとしつこかったので叫んで発言を潰す。決してやましいことがあるわけではない。ないからね。大丈夫セーフセーフ。
というわけでスタート。
そして終わった。一回戦完遂だ。
「あー芳堂さん強い!」
基本が双六でコインを集めることを主眼に置いたこのゲームにおいて、コインの入手法は主に二つ。
マスを踏むことでコインが増減する。
ミニゲームでほかのプレイヤーに勝つ。
この二つだ。アイテムとか色々要素があるけど、どうせこのゲームをやるのは今回こっきりな気がするので説明はしない。
「全部一位通過とか何者………」
「ぶっちぎりすぎたわ、さすが芳堂……」
因みに俺ら三人揃って実力が団子状だった。コイン奪ったり出来る罠マス配置とか結構芳堂狙いだったんだが、全部かわされた。
最終的に3vs1になっていたが、それでも一位から一瞬も引きずり下ろすことは適わなかった。チートかこれ。
「いやぁ、本当凄いよ芳堂さん!!」
天羽さんは素直に賞賛して、俺達二人はぐたーっとしていた。大悟正座解いて良いとは言ってないが……まあ良いか。
「ええ、この位。余裕よ」
「もしかしてこのゲーム持ってる!?」
「ええ、持っていますわ。何度もやりました………独りで」
「そっかぁ、だからこんなに……他にもゲームがあるけど一緒にやる?」
「……ええ、当然ですわ」
芳堂さんは、分かりやすい位に嬉しそうだ。教室ではむっすーっとしていたけれど、本当に楽しそうだ。
「じゃーん次はこれ! ダリオカート!!」
天羽さんは楽しそうにゲームソフトを出した。
あ、この次の結果、言うまでもないよね。
「だから……何故」
「青甲羅………三個は飛んでたぞ……??」
「あんなもの、避けられればどうと言うことは無いですわ」
いや、普通はターボで回避できないからね……。キノコあってもね……。
「いやぁ、凄いね……私ももう少しがんばらなきゃ」
天羽さんは常に二位だった。いや、結構迫っては居たんだけど、一位が圧倒的すぎて……。
多少自信があったんだろうか、ちょっと悔しそうだ。
それ言ったら、ふざけてると言われそうな俺達二人は……。
「このゲームはオンライン対戦が出来るから、ずっとやってたわ」
「やってたらこんなに上手くなれるの?」
「そうね。でもそんな事を延々しているなんて、きっとつまらないですわ」
「そうなの?」
「意味のないこと、ですわ」
「……まあ、次行きましょう! 次!!」
天羽さんの馴染む能力凄いなぁ、と考えているうちに、どんどん時間は経過して、そうこうしている内にお開きの時間になった。
「あ、もう6時……そろそろ帰らなきゃ」
「文乃、送りますわよ?」
「ありがとう朔良、でもこういうとき真っ先に言うべき人は……」
俺を見るな。この時間になると大抵人じゃない奴が跋扈してるんだよ……。俺が送ると逆効果になるわ。
「………まあ、うん、送るよ? うん」
「なんで目が泳いでるのさ」
「えー、夕方こわーい」
「代弁するなよ、怖かねぇっての」
「………怖い?」
「いや、だから行くって。駅までだっけ?」
「冗談だよ、お母さんが迎えに来てるから平気」
「それなら安心だね。まぁ、一階まで送ろうか」
「そうしましょうか」
「よし。ついてくぜ」
集団でぞろぞろと、部屋を出ていく。さり気なく芳堂さんと天羽さんが連絡先交換していたが、それはそれは、微笑ましい光景であった。
天羽文乃
『今日は楽しかったよ』
賀田玄
『それはどうも、と言っても俺はほとんど何もしてないし、結局勝てなかったんですけどあれは』
天羽文乃
『(笑)』
『まあ、私も勝てなかったんでおあいこです……次は勝つ!』
賀田玄
『あ、そうだ。学祭夏休みの終わりにあるんだけど、来る?』
天羽文乃
『行く!!』
『ってなんで唐突に(笑)』
『何かやるの?』
賀田玄
『お化け屋敷だよ?』
天羽文乃
『怖い?』
賀田玄
『あんまり』
天羽文乃
『あらら?』
賀田玄
『でも本物が出るかも?』
天羽文乃
『冗談でもやめてよ』
賀田玄
『嫌な予感がするんだよなぁ』
『思ったけど呼ぶ側が出し物以外で怖がらせてどうすんの』
天羽文乃
『それ込みでお化け屋敷(笑)』
『でも、行くよ? 朔良と会えるし』
賀田玄
『と言うか、困ってる事って言うか悩みってなんだったの?』
天羽文乃
『もう大丈夫と言うか自信ついた、行って良かった』
賀田玄
『はいはいありがとね』




