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3つのルール  作者: アキラ
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第7話 彼と彼女

俺はとっさに身構えたものの、

直後にドアの外から聞こえた声によってその緊張感を緩ませた。

「星加さん、マリアです。入ってもいいかしら。」

マリアさんはそう言って了承を取ろうとしたのだろうが、

完全にもう部屋のドアを開けて、こちらをひょっこりと見ていた。

もうこの段階で「ダメです。入らないでください」とは言えそうもなく、

しぶしぶ彼女?を部屋に招き入れることにした。


マリアさんは礼儀正しく、スカートの裾を上げながら、

さながら舞踏会へと赴く貴婦人かのように部屋へと入ってくると、

その格好のまま「お邪魔しますね」と言ってから、

俺が今座っているソファに近づいてきた


どこからどう見ても名家のお嬢様という印象を与えられ、

やはりさっきのマリアさんの自分は男発言は

俺の気を紛らわすための冗談であるように思えて仕方がなかった。


しかし、マリアさんはソファに腰掛けるや否や、

先ほどまでのお嬢様のような雰囲気が消え、さらには足をおもむろに広げ、

もしも人がマリアさんの目の前にいたとしたら、

パンツが見えるだろう危険な格好をしだした。

俺は思わずうろたえてしまうも、当のマリアさんは全然気にも留めない様子で、

部屋が暑いためなのか、それとも彼女?の来ている服が他の女子と違い

厚着のためなのか、手をパタパタとし始め、今度は男っぽいという印象を受けた。


しかし、驚くのはまだ早かった。

「いやぁ、それにしてもあっちぃなぁ。

どうしてもこの服だと熱が籠って、蒸れるんだよなぁ。

ま、それに加えて最近の暑さは尋常じゃないから。あ~、あっち」

マリアさんのその言葉はもはやお嬢様の一欠けらもなく、

完全におっさんに近いものになっており、

ちらっと彼女を見るとおもむろに上着を脱ぎにかかっていた。


「え、え、え!!ちょっと待ってくださいマリアさん!!な、何脱いでるんですか」

そんなマリアさんの行動に対して、

本日何回目か分からない動揺を隠すことはできずに

彼女が脱ぐのを止めようと訴えかけた。

しかし、マリアさんは俺の言葉よりも自分の心地よさを重視したいのか、

俺の質問を無視すると、どんどん服を脱ぎ始め、

気が付いた時には上はシャツしか着ていないという

到底女子のものとは思えない格好をしていた。

そしてやっと涼しさに満足したのか、最後の砦のシャツを脱ぎ去ることはせずに、

さっきまで服を掴んでいた両手をすっと下した。


「ふぅ!これでやっと落ち着いて話せるよ。

いやさ、熱いと気分が焦るからか知らないけど、落ち着いて話すことなんてできないだろ。

あ、さっきの君のなんで脱いでるんですかの質問の答えはこれでいいよな?

それにしてもさっきの慌てふためきよう、君もしかして天然系を狙ってるのかな?

ま、君のような可愛らしい顔つきだとその破壊力はすさまじいから、有りだけど

・・・。ってお~い、大丈夫か?聞いているのか?

そんなハトが豆鉄砲食らったような顔して」


俺はマリアさんの凄まじい変貌についていくことはできず、

彼の話の途中辺りから全く話が頭に入らなくなってしまっていた。

そんな俺の想いに気付いたのか、マリアさんは俺の目の前で手を振っていた。

(なんなんだ!?この人、入ってきたときとキャラが完全に違う。

というよりもまるで別人のようだな。

でも明らかに今目の前にいるマリアさんと

部屋に入ってきたときのマリアさんは同一人物なんだよなぁ・・・)


「君、今俺のキャラが部屋に入ってきたときと今では全く違ってて、

別人みたいだって思っているだろ?まあ、そう思うのも仕方はないか。

よし、それじゃあ」

マリアさんは俺の考えていたことをぴたりと当ててきたので、

内心驚きしかなく、彼の顔をまじまじと見ていると、彼はおもむろに目を閉じた。


そして数秒の後、

目を開くと彼の雰囲気は部屋に入ってきたときのものに戻ったような感じがしたと共に、

おもむろに姿勢をピシッと直した。

「ふふふ、まあ、しょうがないわね。

私だってもしも貴方と同じような目に遭ってしまったらもちろん、驚くわ。

だけどね、これは紛れもなく現実なの。だからあなたも受け入れてね」


俺はまたしても、動揺を隠せなかった。

なぜならさっきまでおっさんのようなことを言っていた

マリアさんの顔をした男から一変して、

今目の前にいるマリアさんは紛れもなく部屋に入ってきたときの

お嬢様の雰囲気を漂わせた少女になったのだ。

驚かないことなんでできない。

やっと、俺の中で彼と彼女が同一人物だと紐づけすることができたのだ。


しかし、それが良い事なのか悪い事なのかは明確で、

そのことを考えていく内に俺は今まで感じたことのない種類のショックを受けるのだった。


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