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3つのルール  作者: アキラ
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第5話:歓喜

そして俺はそのまま疑問を解決する暇を与えられないまま、

先ほどまで完全に女子だと思っていたマリアに引きずられるかのごとく、

手を引かれていった。


マリアが男だということが判明したからだろうか。

先ほどまで感じていたような“女の子”が持つ独特の雰囲気や体を、

それに限りなく近い事はあるが、マリアはそれを持っていないのだと気づき始めた。

例えば、足。女性の足をそんなにも深くじっくりと見たことはないため、実際問題どこがどう違うのかということを具体的に説明することはできないが、女性特有の柔らかそうな肌というわけではなく、むしろ男性の肌に近かった。

そして一番大きな女性との違いとしてしばしば例に挙げられる胸についても、同様であり、マリアの胸の部分はまな板というような表現がよく似合うような平坦さであった。最初のころはただただ単純に貧乳なんだろうなという風に軽く思っていたことではあったものの、真相が分かった今、それが当然のことであり、マリアが男であることを雄弁に語っていた。

まあ、そうはいいつつも、男というネタばらしをされなければ、そのことに気付くことさえできないほどに、胸がないということを活かした着こなしにより、マリアはスタイルがよくきれいな女性であることを醸し出していた。

それは他の部位においても言えることでもあり、男だとわかって初めて気づいた男であることを主張するような様々な部位を隠すように、マリアは自分自身をうまく魅せていた。

それに加えて、マリアの立ち居振る舞いや丁寧な物言いなどといった内面的な美しさが、女性であるという錯覚を他者に助長させていた。

そう思ってしまうほどにマリアの所作はどれをとっても完璧で美しく女性でもここまでの人はそうそういないだろうし、俺が今まで出会ってきた女性に比べて、マリアは遥かに女性らしかった。

多分、男だということが分かっていなかったら、俺はこの人のことを好きになっていたかもしれない。そう思ってしまうほどにマリアは綺麗な“女性”であり、こういう人のことを世の中ではお嬢さまという風に呼んだり、女子高などでよく見られるようなお姉さまという表現が使われるのだろう。

部屋から出るまでの短い時間の中、

俺はマリアが男であるということが分かったものの、

いまだにそのことに疑問を呈すこととなってしまった。


俺が一向にマリアの後について、ドアを開けようとしないのを見かねたのだろう。

マリアは部屋のドアを開けるような所作をしていたかと思うと、

なぜか俺の手をぐいっと引っ張ると、そのまま俺をドアに押し付け、

壁ドンをしてきたのだ。

そのいきなりの行動に対して、俺は思い切り驚いてしまった。

壁ドンをされるということも初めてではあったが、マリアの顔の美しさはこの上なく、まじかで見て初めて気づいたことだが、肌は雪のように白く、きめ細やかで光を純粋に反射していて、瞳の大きさも男では考えられないほどの大きさであり、鼻もいい感じで整っていて、体の時とは違い、完全に女性のものと遜色なかった。というよりも男であるということが嘘に思えてしょうがなくなるほどで、気が付けば、俺はマリアに見惚れてしまっていた。

しかし、そんな俺の考えを見透かしたのだろう。

マリアは俺の耳元に自分の口を近づけると、

ギリギリ聞こえる程度の声で囁いてきた。

「君、今俺がさっき言ったことを嘘だと思っているだろ?まあ、自分でいうのもなんだけど、こんなにもきれいな顔立ちで、こんな格好をしていれば、誰だってそう思うだろうけど。俺も先代の時にはそう思ってしまったわけだが、俺はれっきとした男だよ。だから同じ男として、言っておくよ。このことは誰にもばれたらダメだからな。君には本当に災難だとは思うが、この学園から無事に卒業したいと思うのなら、俺のように女として生活をしなければいけない。それもただの女というわけではなく、誰にも認められて、男だと疑われるような隙を与えない完璧な女性にな。そのために、これからは俺がさっきしてあげたように化粧や服のコーディネイトもしてもらうから、自己紹介が終わったらレッスンを開始するよ。まあ、とはいっても、君は俺とは違ってかわいい系の顔をしているから、俺とは違う方向になるかもしれないけど、それよりは今は自己紹介が優先だから、立ち止まってないで行くよ。」


そう言われてしまっては仕方ない。

途中あたりで言われた「この学園を無事に卒業したいのなら、女として生活しなければならず、それがばれてはいけない」という言葉にいささか疑問は感じたものの、いまはそれを頭の片隅に起き、この後に自分自身が醜態をさらしてしまうという確信を胸に、マリアの後ろについて、ドアを開けた。


ドアを開けると、マリアの部屋に入る前と同じ光景が広がっていたのだが、

さっきまでとは明らかに異なる視線を感じた。

俺は内心恥ずかしさに狼狽えながら、

彼女たちの女装した男を見たときの罵る声や嘲笑する声が来ることに備えていた。


しかし、彼女たちから返ってきた反応は予想外なものだった。

「きゃぁぁぁ!!マ、マリア様、そのお方、なんと愛おしいお顔なのでしょうか。

さながら天使のよう・・・」

「そ、そうね!!さっきまでは全然そんな感じなかったのに、

服と化粧を替えただけでここまで変わるなんて!!」

「あぁぁぁぁぁ!!星加様、天使ですよぉ!!」


そんな彼女たちの反応に戸惑いを覚えてしまった。


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