表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3つのルール  作者: アキラ
4/28

第4話 女装

俺がマリアさんから渡された服に着替え終わると、マリアさんはこちらに近づいてきた。

それにしても女の子の服は着るのに苦労した。恥ずかしかったという心意的な理由もあったのだが、やはり女の子の服は男物とは大きく違っていたことも重なって、いつもよりも長い着替えの時間を費やしてしまった。

まあ、一番厄介だったのが当然のことのように女物の下着を渡されたことだった。

女物の服を着ること自体、死んでも嫌だと思うほどの抵抗感があったのだが、下着までも女物を付けなければいけないというのは想像以上に恥ずかしいことで、こんな辱めを受けることになるとは1時間前の俺は全く想像もしていなかっただろう。

ただ着けなければいけない状況があった。いや厳密にはマリアさんによって作られたと言っても過言ではなかった。

というのも、俺が渡された下着を前に苦悶の表情を浮かべながら、この状況をどうすれば打開できるのかということを考えて、一向に着ようとしなかったところ、マリアさんは「どうしたの?あ、手伝ってほしいの?」などと言ってきたからだ。

それは俺にとっては死亡宣告と同義だった。

この状況を作り出した張本人だと言っても相手は女性であり、女性に女装を手伝わせるというのはもう既に男としては終わっているが、それ以上に人間としての尊厳を失うことを意味していた。そもそも下着の手伝いということはもちろん性器を見られる可能性も高まるわけで、どうしてもそれだけは避けなくてはならなかったのだ。

ということもあって、半ばヤケクソで女物の下着をつけようとしたのだったが、下の方は自分自身の葛藤や迷いなどを打ち払い、心を無にすることでなんとか穿くことができたのだが、上の方はもちろんのことながら、着けることはできたのだが、ホックを止めることは容易ではなかったのだ。

それもそのはずで、男性の衣服を着る際にそんな背中に腕を持っていき、目の届かない場所で止めるということはほとんどしないのだが、女物の服や下着はそれが当然のことなのだ。

言い方は悪いが、俺は今初体験の真っ最中だった。

そうしてブラジャーと格闘すること、数分が経ったのだが、いまだにホックを止めることはできておらず、俺の腕は悲鳴を上げ始めていた。

もうこのまま一生止めることはできないのではという絶望感を味わっていると、いきなりマリアさんが着替えるためにカーテンを閉めていたそのカーテンを開けてきたのだ。

おそらく、マリアさんの中で我慢の限界が来ていたのだろう。

マリアさんはカーテンを完全に開け、俺の体を上から下へと視認していくと、俺が何に困っているのかをすぐさま見抜いたようで、電光石火で俺のブラジャーのホックを止めると、少し憐みのような微笑みを浮かべながら、カーテンを閉めなおしてくれた。

俺は一瞬何が起きたのかわからず、少しの間心を失ったかのように立ちすくんでいたのだが、数秒も経たないうちに何をされたのかを理解した。

その瞬間、俺の顔は風邪を引いたのではないかというほどに熱が一気に顔に集まり、いつの間にかへたり込んでしまい、羞恥心に身を焦がしながら、自分自身の不甲斐なさに涙を流してしまった。

そこからは何も覚えていない。

気が付けば着替えを終えて自分の姿を鏡で見ていたのだ。


そして、今のこの状況に至るわけなのだが・・・

マリアさんの片手にはなぜか小さめのケースのようなものが握られていて、それが化粧品を入れるためのポーチだったということに気付くのにそう時間はかからなかった。

なぜなら俺が今、そのポーチケースから出された道具の数々によって、どんどん自身の顔を少女のものへと作り替えられていったのだから。マリアさんによって。


昔テレビのCMで見たことがあった。「可愛いは作り出せる」という言葉、それを見ていた当時の俺はまさか今の俺がその対象になっているとは考えもしないだろう。


化粧を終えた俺をもう一度上から下へと、今度はじっくりと見たマリアさんは心底満足した様子だった。しかし、当の本人の俺の精神力は女物の服装への着替えに続き、女の子に化粧を施されたことで、もう瀕死ともいえるほどの状況になっており、鏡に映る俺は今までの俺の顔や服装ではなく、美少女とでも言っても遜色のないほどの可愛い顔に、女の子らしさを強調したフリフリの服装に身を包んだ少女そのものとなっていて、健全な男子の一人でもある俺はこれがもしも他人であれば惚れていたかもしれないと思うほどだったのだが、それが自分だと思うと何とも言えない気持ちになってしまい、諦めにも似たような感情で微笑みを浮かべるのだったが、鏡に映る彼女の顔はどことなくぎこちなく口角を上げたような表情で、それに加えて、目が魚のように死んでいて、どう見ても微笑んでいるようには見えなかった。

そんな俺の表情を見たマリアさんは、何かを考えるようなそんな素振りを取るのだったが、すぐにさっきまでの優しい微笑みに戻っていた。そして視線を俺と交差させるように見つめてきたかと思うと、表情が少し男みたいな表情になった。そして


「まあ、そういう表情になるのもしょうがないな。俺も指名されて、君のように着替えと化粧されたときはそんな顔をしていたから。なんだか懐かしい感じがするな。まあ、でもそんなにも意気消沈することもないと思うぞ。そこらへんはまた落ち着いた時に話そうか。それよりも今は君をここの寮生に紹介する方が最優先だ。さ、行こうか。笹辺君」


その言葉とその顔に俺は唖然としてしまった。

そう、彼女(結城マリア)は俺と同様、男だったのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ