第25話 謎の青年
「日和先生。これは想像以上にまずい状況かもしれない。
即刻部屋に戻り、この事を事務長にお伝えください。」
「は、はい。」
日和先生は能力を解除すると、そのまま階段を駆け下りていった。
「そこにいるのは誰だ??」
彼女が目の端から消えたのを確認してから
神座は屋上に置かれた貯水庫の方を見る。
「へ~。やっぱり執行者の先生方は勘が鋭いですね」
そんな言葉と共にゆらりと物陰から姿を現した青年。
不気味な笑みをその顔に張り付けている。
「君は何者だ。どうしてここにいる!?」
「何者って。生徒の顔くらい覚えてくださいよ。」
こんな状況なのに、青年はへらへらと笑っている。
「名前を言わないというのであれば、連行するまでです。」
神座がじりじりと青年に迫り寄る。
しかし・・・。
「ふふ、そう簡単に捕まえられませんよ。」
その言葉と共に彼は屋上から飛び降りる。
「な、なにを!?」
神座は落ちていった青年を捕まえようとかける。
しかし、時すでに遅し。
眼下には落ちていく青年の姿が映る。
ここの屋上はマンションでいうところの7回分の高さがある。
そんな場所から飛び降りて無事なはずがない。
手掛かり云々よりも、生徒が今まさに死に向かっている。
神座は自分を責めながら、青年を見つめる。
しかし、その時信じられないことが起きた。
落ちていた彼の姿が突然なくなってしまったのだ。
それも完全にその形跡すら残さずに・・・。
「「あ~。もしもし」」
「「そちらの様子はどうだ?」」
「「や~。ほんと。執行者の先生方は行動が早いっすね~。
もう見つけたっすよ」」
「「そうか。」」
「「でもまあ、犯人の目途は立っていないみたいなんでまだ大丈夫っすよ」」
「「お前のその自信はどこから来るんだか・・・。
けどまあ、いい。また連絡する」」
「「わぁりましたぁ!!」」




