第22話 仲裁と優しさ
声の主は眼鏡をかけた黒髪ロングの少女だった。
少女はその凛とした顔立ちに眼鏡がマッチしていることにより、
ザ・委員長といったような印象を抱かせる。
そんな彼女の言葉は騒いでいたクラスの人たちには効果的だったようで、
シーンとさっきまでの喧騒が嘘のように静まり返る。
その渦中であった結月も少年も声をひそめる
(す、すごい・・・。)
俺はそんな彼女に思わず尊敬してしまう。
こんなしっかりした子が同年代にいるなんて・・・。
「それで話を聞いていましたが、あなた、名前は?」
そして彼女は静かになった少年と結月の近くへ行くと、まずは少年に声をかけた。
「俺は影山だが・・・。」
少年は渋々といった様子で自分の名前を彼女に教える。
「ありがとうございます。影山君。
影山君、あなたのお気持ちはよく分かりますよ。少しうるさかったですから。
ただあの言い方は頂けないと思うんです。あれでは陰口のようですし、違う意味で怒りを買ってしまいます。
ああいう場では、恥ずかしいでしょうがはっきりと言いに行ってあげるべきでしょう。」
彼女は影山君の行動を認めた上で、何が悪かったのかを丁寧に教える。
影山君はそれを聞いて、まだ怒りは残ってはいそうだが、納得はした素振りを取った。
「問題はあなたですよ。」
彼女は結月の方に向き直ると、開口一番咎めた。
「だ、だけど・・・」
[だけど。じゃあありませんよ!!]
「私たちはまだ今日出会ったばかりなんですよ。まだお互いの事を知りません。
どういう人がいるんだろうと不安や期待にみんないっぱいなわけです。そんな時にあれだけ騒いでいたら不満も溜まるというものです。それに対して不満を漏らした影山さんに対してℚの悪態。言い方に問題があったことは事実ですが、うるさかったことも確かな事実でした。あなたはあの時、批判をするべきではなく、ただ謝るべきだったと思うのです。あんな火に油を注ぐようなことをすれば、クラスの雰囲気がさらに悪化することも自明の理です。」
彼女は一息に結月を攻め立てた。
ぐうの音も出ない正論ではあるものの、
ここまでくるとさすがに結月のことを可哀想に思ってしまう
そもそも、あれだけ結月がうるさくなってしまったのには
俺にも原因の一端があるわけで・・・。
怒られている結月の姿を瞳に映し、居たたまれなくなってしまう
「あ、あの・・・。結月ちゃんだけが悪くは・・・ないです。
わ、私が原因を作って、止めなかったのが原因なんです。
ゆ、結月ちゃんを起こるならわ、私も怒ってください!!!」
どうしてこんなことをしてしまったのか自分でも分からない。
意を決して二人の間に飛び込み、慣れない女言葉を使って止めるなんて・・・。
今までの自分であれば到底考えられないような行動。
しかし、冷静になってみるとその行動がいかに危険なことなのかに気付いた。
(あ、これはやってしまったか・・・。
自分で言ったことだけどすごく怒られるのでは?)
思わず次に発されるであろうお咎めの言葉に身構える。
しかし・・・。
「優しいのね。あなた・・・。」




