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3つのルール  作者: アキラ
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第21話 照れと喧嘩

そして結月の手を握りしめていると、なぜか彼女の指が俺の手をさすっていた。

(何だ、この状況は・・・。)


自分の心の声が他人に聞こえなくても良かった。とふと思う。


「わ~。星加ちゃんの手、すべすべでいいなぁ」

ひとしきり俺の手の感触を確かめたのか、

ぎゅっと握られていた手が離れていき、離れ際にそんなことを言ってきたのだ。


俺は今まで生きてきた中で言われて来なかった言葉。

いや正確には男に言うには憚られるような言葉の数々をうけ、

少し恥ずかしくなってしまっていた。

だから自然と頬に熱がたまっているかのように、顔が熱くなってしまった。


しかし、結月の猛攻はそれだけで終わるはずもなかった。

「いや~。それにしても星加ちゃんって手だけじゃなくって

顔もすごく綺麗だし、スタイルもモデルさんみたいに綺麗で、

それでいて雰囲気がお嬢様のような優雅さで、すっごくうらやまし~。

前の学校の時、結構モテたでしょ~??」

なんの悪意も感じられないからこそ、なおさら質が悪い。


俺の赤面はますます加速していき、もう既にゆでだこ状態だ。



「はぁ,これだから女子共は・・・。」

あまりにも俺と結月のやり取りがうるさかったからなのか。

後ろの方に座っていた見るからにヤンキー風の少年が

俺達に聞こえるような音量でぼやく。


(女子共って・・・。俺のことも含まれているんだよな?なんか複雑な気分だな)

ここでもまた、女子であることに何の疑いももたれていない俺。

正直言って、ここまで来ると少しは心も痛んでくるというものだ。

(俺って・・・。そんなにも男らしくなかったのか・・・。)



そして、俺が落ち込んでいることで何かを勘違いしたのか

結月の表情が急に怖いものへと変わっていった。

かと思えば、ズンズンという音が聞こえてきそうな勢いで

ヤンキー風の少年の席へと迫っていった。


「ちょっと。アンタ!!さっきの聞こえているんだけど、どういうこと!?」

結月はすごい剣幕で少年へと迫っていった。


少年はまさか行ってくると思っていなかったのか、

驚きを前面に出した表情を取っている。

それにしても結月はなんて、行動的なんだろうか。

あんな見るからにヤンキーに啖呵を切るだなんて・・・。すごいな。


「あ?うるさいからああ言ったんだが・・・。」

そして、驚きから立ち直ったのか、

彼はあからさまに不機嫌な表情になりながらぼやく。


「そんなことないでしょ!!アンタの耳どうなっているの!?

おかしいんじゃないの!?」

彼の態度になおも噛みつきに行く結月。

明らかに火に油状態となっていた。


そして、そんな突然始まった喧嘩の波は

まだ知り合って間もないクラスの中に広がった。

どう考えても、雰囲気が最悪な方向に進みつつあった。


関係のなかった生徒達の顔に不満や怒りといった負の感情が募り始める

しかし、一度振り上げてしまった手を

そう易々と下ろすことが出来ないというのも人間の常である。

クラスの雰囲気が悪化していっているにも関わらず、

結月と彼の言い合いは続く。


「おいおい。お前らうるせえよ」

「そうよ。静かにして!!」

とうとう、全く関係のなかったはずの二人が口を出し始める。

それを皮切りに他の生徒達も騒ぎ出す。


このままでは阿鼻叫喚の地獄絵図になってしまうのではないか。

ただ俺と結月が話していたことがそもそもの原因で、

ここまで変な方向に進んでしまった。

出来ることなら、この場から一刻も早く去りたかった。

しかし、それが今この状況で許される選択なのか否かは検討するまでもない。

逃げられない・・・。

そう、脳内で結論をたたき出し、

俺はじっと心を殺しながら沈静されるのを待った。


「ちょっと、君たち!!落ち着きなさい!!」

そんな時だった。凜とした声が教室中に響き渡ったのは・・・


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