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3つのルール  作者: アキラ
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第12話:違和感と選択

しかし、登校時に感じたあの不気味な視線がまだ可愛かったのだと今なら思える。

昨日も訪れていた教室へ向かう際、俺は誰からも声をかけられることはなかった。

そのことに関しては何ら新入生としては不思議なことではない

初対面であろう人々が突然話しかけてくると言うことはまずない。

ほとんどの場合が教室で赴いた後に半ば強制的に行われる自己紹介に基づいて、

第一人称をそれぞれが決定し、

自分と似ているところが少しでも存在する人に話しかけていく

そして自分自身が感じた親近感が正しかったのならば、

その後も話しかけていくなどして相手の好感度を上げていくだろうし、

逆に自分と合わないと感じたのならば、それ以降話しかけることはないだろう。

まあ、例外的に空気を読めない人間や顔面偏差値の高い人間、

優しく面倒見のいい人間などは誰に対しても分け目なく接するだろう。

それが相手に対していい印象を与えるのか、悪い印象を与えるかは別にしても。

そうした交流の末に、教室内でまとめる役割が選ばれ、

逆に阻害されてしまう者も出てくるわけで、

その前段階を飛ばして交流を図ろうとする者も阻害しようとする者も、

普通は存在しないわけだ。

俺自身この普通の状況に慣れすぎていたことから、

まさかあんな特別な状況に陥るとは夢にも思っていなかった。



話は俺が下駄箱で靴を履き替えようとしたときに戻る。

俺は身長が低いわけでもなく、ただ単純に一番上に配置されていた

下駄箱から自分の学園用の靴(これまた勝手に女子のものに変換されていた)を

取ろうとしたときだった。

どこから現れたのか男の俺でも見とれてしまうほどのスラッとした高身長の男が

サッと俺の下駄箱から靴を取り出してくれた。

それだけではない。まるで王子様がお姫様に行うかのごとく、

彼は跪くとそのまま俺の足を掴み、

シンデレラに代表されるあの恥ずかしい靴の履かせ方をされたのだ。

この行為には当然、驚いてしまい、彼が下駄箱からどこかへ去って行くまでの間、

俺の頭の中は真っ白に塗りつぶされ、天井だけを眺めていた。


(いったい、さっきのは何だったんだ)

そう途方に暮れながらも教室へと向かうのだったが、ここでも違和感があった。

というのも通学途中の道でのように大勢の人に見られているだけなら

まだしも今回は、なんと廊下を歩いていた生徒たちが

まるで位の高い人が進むときのように、道を空けてくれたのだ。

なかには羨望のまなざしを向けてくる生徒もいて、

俺の頭の中は困惑の一字で埋め尽くされていた。

まあ、そんなこんなで話しかけられることはなかったものの、

妙な精神的疲労を感じながら、教室へたどり着いた。


教室は昨日も来てたから知ってはいたが、

40人程度の生徒が座ることの出来る椅子と机が配置されていて、

3人の生徒が既に着席していた。

(とりあえず目に付いた生徒から覚えておくことにしよう)


最初に目に付いたのは見るからに勉強が好きそうな、

眼鏡をかけて今時古風な七三分けで髪の毛をきっちり整えている男子だった。

彼は何の勉強をしているのか目視できなかったが、

教材らしきものに夢中でこちらがドアを開けて、

教室の中に入ってきたにも関わらず、視線が教材から離されることはなかった。


次になぜか俺が教室の中に入ってきてから

おもむろに固まっている男子が目に入った。

彼は本当になぜだか分からないが、俺を視認した瞬間から動きがまったくない。

さながらメデューサやゴルゴンに見つめられたかのごとく、

その場所で固定されていた。

ただ顔だけはにやついていたが・・・


そして黒髪を胸のあたりまで伸ばしている女子が目に入った。

彼女は他の二人とは異なり、俺のことを視認した後、

自分の机に教材を起き始めていた。

まるで俺のことなんて興味なさそうに。

おそらく、彼女も先ほどこの教室に入ったところなのだろう


そして3人の生徒を見終わったくらいの頃合いで、教室のドアが開いた。

「お、はよ~!!いや~、ここが今日から俺が学ぶ教室か~!!」

廊下から現れたのは見るからに軽そうな男子で、

変な挨拶と共に教室へ足を踏み入れてきた。


「お!!可愛い子発見!」

更につぎに発した彼の言葉が余計にその軽さを

露呈することになっているのだが、彼は教室の中を見渡したかと思うと、

その言葉と共にやや小走りでこちらへ駆け寄ってきた。


そして突然、こちらに手を差しのばしてきて、

俺はとっさにさっきの言葉は自分のことを言っていたのかとようやく理解した。


しかし、まあそんなことよりもこの握手の申し出に乗るのか

ということの方が重要な気がしてきた。

おそらくここで彼の手を握りしめ、

笑顔の一つでも向けてやれば喜んでくれるだろう。

しかしそんなことをしてしまえば、関わりが出来てしまう。

そんなことになってしまっては、マ

リアさんに言われていた男とばれてはいけないということが

達成できなくなってしまうかもしれない。


できればあまり人とは関わりを持ちたくない俺にとっては、

握手しない方がいいだろう。

しかし、ここでそんなむげな態度を取ってしまえば、

嫌われてしまう可能性は高まるだろう。

ましてや彼の雰囲気はリーダーに適していると思う。

そんな彼に嫌われてしまうと言うことは

すなわちクラスメイトから阻害されることになるのだ。

そんな全員から距離を置かれて学園生活を送るのだけはいやだった


(さて、どうするべきか)


この話はいわば、一つの分岐点となります。

握手するか握手しないかの2つの選択を提示することによって

読者の方にも楽しんでもらいたいのです。


ということで、次話から分岐ストーリーに変わります

タイトルにどちらかわかるような文字を入れようと思うので、

皆様が選んだ方のストーリーを読んでくださいませ!!

あ、だからと言って「もう片方は読まないようにしてください」ということではないので

安心してくださいね♪

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