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3つのルール  作者: アキラ
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第11話 お世話役とストーカー

何とか着替えることに成功した俺は、

これまた用意されていたショルダーバックを肩から背おると、

女子寮の廊下へと続くドアを開けた。

するとなぜかドアの前にはいつからいたのか

小学生と言わんばかりの低身長の少女が立っていて、

出てきた俺の顔を確認するや満面の笑みを浮かべた。

「おはようございます。お姉様!!

今日も昨日と同じくらいお美しいですね。」

お、お姉様!?と内心狼狽えた俺だったが、

ここは平常心を保たなければという意識から

心が体の動きとして反応しないように押さえ込んだ。

(というか、いったいこの子はどういうことなんだ?

俺のことをお姉様というあたりもそうだけど、

なんでこんなところで待ち伏せのようなことを・・・)

「あ、申し遅れましたね!

私は今日からお姉様の身の回りのことをお任せになりました上居胡桃と言います。

今日はお姉様の初登校の日なので、一緒に学園に向かおうかと思い、

こうしてお姉様が部屋から出てこられるのを今か今かと待っていたわけです。

これからどうぞよろしくお願いしますね」

考えていたことを俺の視線から彼女は気づいてしまったのか、

はたまた初対面の場合にはそういう風に習っていたのかは定かではないが、

彼女は俺の視線を食い入るように自分の瞳で受け止めてから、言葉を紡いでいった。

「あのぉ,もしかするとなのですけど、マリア様からお聞きになっていませんか?私のこと」

俺が密かに待っていたその言葉を彼女は口にしてくれた。

そのためか俺は即座に頷くという行動を取ることにした。

すると彼女はかなり小さくではあったが、

やれやれという言葉と共にため息をつくと、俺の顔をまじまじと見つめてきた。

「簡単に言いますと、お世話役のようなものですよ。確か生徒手帳の寮生活の項でも記載されていると思いますけど、この女子寮で住まう高校生以上のお姉様方には私たちのような学園初等部からだいたい1年間身の回りのお世話をする少女が付けられるわけです。こういう風にする理由はいろいろあるみたいですけど、一番の理由は異性との接触の監視みたいですよぁ。この学園色々特別ですから、女子は女子、男子は男子できっちりと分けた方がいいって言う学園長の決め事みたいで。まだ私たちには理解も出来ないですけど、お姉様のように綺麗な方なら、男の人も引く手あまたでかなり残念かとは思いますけど、これからは私がどこかで見ているので、会わないようにお願いしますね!」

(それってストーカーじゃ・・・)

彼女の言葉に内心で突っ込みを入れながら、

学園の特異性を再確認させられることになった。

というか、今の発言でこれだけは絶対に聞いておかなければならないことが出来た。

「え~と,胡桃ちゃんだっけ。君の今の話何となく分かったんだけどね。

その、どこかで見ているって言うのは私が部屋の中にいるときも、

トイレやお風呂に入っている時もなのかな?」

この質問は一番重要なことだろう。

昨日のマリアさんの言っていたことが正しければ、

男であると言うことがばれた時点でアウトだ。

と言うことは絶対的にばれるリスクは最小限であった方がいいのだが、

部屋の中にいるときやトイレ、お風呂にいるときにまで見られているのであれば、

ばれないわけがない。

というか、そんなことをされてしまっては心の休息が一切とれない。

現に今のこの状況にしても、俺は慣れない女言葉を使い、

恥ずかしさと共に精神的な疲れが浮かび上がっている。

こんな状況にこれからの学生生活を

投じなくてはならないというのは耐えがたかった。


彼女は俺がそんなことを考えているとは思いもしないだろう。

というか先ほどの言葉から生徒手帳はじっくりと読み込んでおいた方がこ

こで生活を行うに当たっては最重要なのではという確信にも似た考えが

頭の中を駆け巡った。


「あ、そこまでは見てないので安心して下さい!!お姉様。

というよりも私なんかがお姉様のような綺麗な方のお体を

見ることなんて恐れ多くて出来ないですよぉ」

何を想像しているのかは皆目見当が付かなかったが、

彼女の顔はほんのりと赤くなっていた。

そんな彼女の表情を見ながら、俺の内心は安心していた。

お風呂とトイレにさえ来られなければ、

見られてはいけない場所も見られることもないのだから。


そして俺は安心しながら、胡桃ちゃんと共に学園へと行くことになった


のだが・・・

学園への道を歩いて行くたびに突き刺さる視線の数々、

さらには俺が道を通ろうとすると、理由は全く分からないが、

道を空けてくれてなぜか微笑んでいる。

そんな不気味な光景に心をすり減らさないわけはなく、

(もしかしてこいつら、俺のことを女装して少女を後ろに従えながら学園に来ている哀れな男でも思って嘲笑しているのではないか)という風に思い、学園へ近づくたびにメンタルを大幅に削られているような感覚に陥いる羽目になってしまった。


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