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3つのルール  作者: アキラ
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第10話:期待と憂鬱

彼女は一向に回復しそうになかった。

開いた口が塞がらないとはまさにこのことなのだろうかと

言わんばかりに口をぽかんと開いたままで何の反応も示してはくれない。

このままでは一向に話が進まない。

そう判断した俺はさっき拭い去ったばかりの偽りの自分という仮面をかぶることにした。

そしてさっきの言動が幻だったと思わせるために、彼女の首を軽くたたいて眠らせると、

そのまま彼女をお姫様抱っこしながら部屋に配置されていたベッドの上に寝かせ、

掛け布団をかけてあげた。


それから数時間後、彼女はやっと目を覚ました。

彼女はきょろきょろと辺りを見回すと

「あれ?私は何をしていたんだっけ?」などと呟いていた。

人は想像を絶するようなことが起きると、

そのことを信じないように脳が錯覚を起こさせるのかもしれない。

そしてそのことを利用するように、彼女のために入れておいたコーヒーをもっていった

「あ、マリアさん。やっと起きられたんですね!

いやぁ、俺びっくりしてしまいましたよ。

俺が附則を読んで怖がっている間に寝ているんですから。お疲れなんですか?」

「え、あ、そうなのね!ごめんなさい。ついつい寝ちゃったみたいで。

それでさっきの話なんだけど」

彼女は俺の回答に対して正直納得できない部分もあるかのように首を傾げていたものの、

それを考えても埒が明かないと判断したのか、彼女が気絶するまでの話に戻ろうとした。

しかし、それを俺は許さなかった。

「いえ、今日はもう大丈夫ですよ。

マリアさんもおつかれのようですし、それにもうこんな時間ですよ?」

そう言いながら、俺はマリアさんに自分のベッド脇に置いてあった電波時計を見せてあげた。

時刻はもう23時を過ぎていた。

まあ、この時間になっているのも仕方がない。

学園を出て女子寮に入れられたのが14時、

そして着替えが終わって女子たちにもみくちゃにされて

部屋がゆっくりできるようになったのが17時、

そしてマリアさんが来たのは18時、そこから30分くらい話した後に気絶させた。

この時点で18:30。

そしてマリアは一向に目を覚まさず、こんな時間になっていたのだ。

彼女があまりにも起きてこないので、強く首を叩きすぎたのかなぁだとか、

脳震盪でも起こしたのではとか思ったが、起きてきたので杞憂に終わった。


彼女はもうそんな時間になっているとは、露にも思っていなかったのだろう。

大慌てでベッドから自身の体を起こすと、着てきた上着を羽織り、

「また来るわね」という言葉だけ残して足早に部屋から去っていった。

俺はそんな彼女がドアから出て、ドアが完全に閉まるまでその後姿を目で追いかけた。


バタン。ドアが完全に閉まる音がした。

その音を確認することができた俺はおもむろに笑い声をあげた。

こんな声を他の人にでも聞かれてしまえば、きっと気持ち悪がられるだろう。

しかし我慢することはできなかった。

思えばマリアが寝ている間も笑い声で目を覚まさせてしまっては

さっきの自分の言動や態度を思い出させてしまうかもしれない

ということから我慢することを得なかった。


しかし、もうこの部屋には俺以外のだれもいない

こんな状況下で自分の感情を爆発させずにいられるだろうか。いやできない。

俺はひとしきり笑い声をあげると、すっと普通の表情へと戻した。

そして昔から使っているノートを自身の鞄の中から取り出した。


「マリア」

本当は男だという女子寮の寮長。

他の女子からは「マリア様」と呼ばれており、かなり慕われている。

雰囲気はお嬢様感を存分に出しているが、

男だという風な発言をしているときや行動をしているときには

そういう感じは皆無に等しく、おっさんのようだ。

このことから、本当は男だという彼女の言葉は本当だろう。


ノートにマリアのことを知った情報から書いていき、また鞄の中へと入れなおした。

そしてさっきの附則の内容を思い出し、

明日からの学園生活に期待を抱きながらベッドに転がり、顔をにやつかせた。

(あ~、なんか面白くなりそうだな。ははは。あまり期待せずに入学したが、

あの附則の通りならさぞ面白いことがこれから待ち受けているのだろう。

早く明日にならないかな)

その夜は明日からのわくわくであまり眠ることはできそうもなかった。



「ふぁ~、眠たいなぁ。っていうかこの制服着にくいなぁ。

まったく女子の制服っていうのはなんでこんなにも露出度が高くて着にくいんだ。

めんどくさ。」

朝からついつい不満を言ってしまう。

昨日の夜まであったわくわく感はどこかへ消えてしまい、

今は女子制服に着替えることにめんどくささを覚えて、

やや憂鬱な気分になってしまっていた。

というか、クローゼットを開けた時から嫌な気分になってしまった。

というのも入っていた衣服が全部女物だったからで、

それは学園に通うための制服も例外ではなく、

昨日着てていたはずの男子制服はどこにもなく、

スカートとブラウス、セーターが入っていたのだ。

その光景を見た途端、学校へ行く気がかなりの割合でそがれたが、

初日からさぼる気にはなれず、しぶしぶ着替えているところだった。


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