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幼女との出会い

「ピギャャャャャッッッッッッッッ!!!!!!!!!」

俺の前でさっきまで俺の事を殺気立った目で見ていた魔物が断末魔の叫びを上げた。

「あ、その、助けてくれてありがとう。」

「......ん。」

と、その幼女は短く答えた。

さっき俺こと向井 真一は魔物に襲われていたところをこの幼女に助けられたのだ。

それ故に、今、俺の前には血塗られた幼女が立っているカオスな世界が広がっている。

「その、俺ん家の風呂、良ければ使う?」

「........うん。」


******


「血、全部落ちた?」

「......落ちた。」

風呂から上がったその子の髪は肩までで切りそろえた水色だった。そして金色の瞳に、全裸だった。


.........って、え.......、、、全裸!?


「あ、その、服着てくれると嬉しいかな~?」

「ん....。分かった。」


どうやら珍しいアイテムボックス持ちだったようで

そこから服を出したようだ。


「え~と、改めてまして向井(むかい) 真一(しんいち)です。」


「.....リリアナ......です。」

「えっと、その食べたい物があったらお礼におごるよ?」

「.....じゃ、冒険者ギルドに行きたい。」

「じゃ、行こっか。」

「......ん。」


家から五分歩いていく。


周りの風景を出来るだけ見ないようにして。


******


たどり着いた冒険者ギルドはボロボロだったが、

無視して入る。

中に入ると冒険者ギルドは、シーンと静まり返っていた。

しばらくすると中から、「いらっしゃいませ~!!」

と元気な声が聞こえてきた。


出てきたのはピンク色の髪をポニーテールにした今では最後のギルド職員のアイーシャさんでした。


「こんにちは!今日はハロルンチア・バヒルンでも狩ってきたんですか?」

いきなりSSランクの魔物の名前を出す天然っぷりだ。

「あはは、そうだといいんですけどね。」

「うん?そこに隠れてれている女の子って真一さんの隠し子ですか?」

「なにさらっととんでもない事言っちゃってるんですか?」

「冗談ですよ~。」

冗談に聞こえなかったですよ。

アイーシャさんと話していると裾をクイクイッと引っ張られた。

「お腹.....、減った......。」

「あっ、そろそろ何か食べようか。」

「今日のオススメはポークビーンズのスープですよ!!」

「じゃ、それで。」

そうして席に着くと何故か料理を持ってきたアイーシャさんまで席についた。   


「何故かしれっと横に座りますよね。」

「まあまあ、気にしな~い気にしな~い。」

「.........モキュモキュ.........。」

もう、リリアナちゃんは黙々と料理を食べている。

「ところで、そのお子さん、本当は真一さんの何なんですか?」

「本当はって.....、ただ魔物に襲われた所を助けられただけですよ。」

「女の子に助けられるなんて格好悪~~い。」

「ぐっ、」

アイーシャさんと話しているとまたしても裾をクイクイッと引っ張られた。

そちらをみるとリリアナちゃんが何かいいたそうにこちらをみていた。

「どうしたの?リリアナちゃん。」

「......どうして真一は勇者なのにこの村にいたの?」

「......、そうだよね、真一ってゆう名前で勇者だって分かるよね。

その、俺、実は病気でさ、あと一週間位しか持たないからさ.....。」

「その事もあり真一さんはこの村に残られたのです。」


アイーシャさんが、目を伏せがちに答える。


もともと、俺は、数多く呼ばれた勇者の一人だったのだが、この世界に来てから数日で、病にかかってしまった。

しかも、それは、痛みはないものの、半年後には必ず死ぬと言う不治の病だったのだ....。


まあ、そのお陰で魔王退治に駆り出されずに済んだ訳だ。


「はぁ、それにしても、後一週間ですかぁ~。」

「後、一週間ですねぇ~。」


俺のゆる~い問いかけに、アイーシャさんが、ゆる~く答える。


「一週間って.....、魔王の事?」

リリアナちゃんが首をコテンと可愛らしく傾げている。

「そう、魔王が人類を滅ぼすまでに与えた猶予。」

「魔王を倒そうと立ち向かった勇者は、皆さん倒されてしまいましたからね。」


アイーシャさんの言うとおり、魔王を倒そうと立ち向かった勇者は全て殺された。

そして、残っているのは、この街だけ。

しかも、何の気まぐれか、魔王は最後にこの街を滅ぼす前に、一週間猶予を与える事にしたのだ。

猶予と言っても、降参し、魔王の奴隷になるか、滅ぼされるかの二択なのだが.....。


「まあ、丁度あと一週間で終わる俺には関係ないけどな。」

「ムゥ。そんな悲しい事言っちゃいけませんよ!」


アイーシャにしかられるが、魔王の奴隷になる位なら、本気で死んだ方がマシかも知れない。


「......私は、それでも立ち向かいますよ。」


アイーシャさんが、ぽつりと告げる。


思わずアイーシャさんの方を見てしまう。

こう見えて、アイーシャさんは、実はSSランクの冒険者で、もう、引退はしてしまっているが、それでも、腕は現役の頃と、そう大差ない。


「本気....、何ですね。」


「もっちろん!」


アイーシャさんは、元気そうに答えるが、本当は、

SS冒険者でさえも、勇者を倒す事は難しいのだ。

それでも、アイーシャさんが、魔王を倒しに行くのは.....、


「私は、倒されていく冒険者達の仇を打つため、そして、国を守るために、戦うわっ!!」


アイーシャさんが、立ち上がり机をバンっと叩いた。

アイーシャの演説は、とても感動的なのだが、その右手に持っているビールジョッキが無ければもっと感動できたのだが....。


「だいたいぃ~~、どぉこぉの馬の骨ともしれない奴の奴隷になんでぇ~~、なぁんる訳なぁいじぁないれすかぁ~、もう、考えたぁだけで反吐がれますよぉ~~。」


ヤバい......。


アイーシャさんが、本気で酔っ払ってきた。


というか、アイーシャさん本当はこっちが本音なんじゃ.....。

しかも、微妙に毒舌になってるし....。

可愛い顔して、以外と酷い事思ってるんですね。


「それにしても、リリアナちゃんって、ずっと森に一人で暮らしてたんですかね。

街では見かけた事なかったですしね。」


「たしかに、そうですよね。」


今、リリアナちゃんは寝ている。

お腹がいっぱいになって、俺の上で俺にへばりつきながらぐっすり寝ている。


本当に、不思議で、いい子だ.....。

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