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彫刻のあるホテル

 仙台市の青葉区本町に江陽グランドホテルがあります。若い頃、宝飾品の展示会で行ったことがありました。

 このホテルは彫刻や陶磁器のコレクションをロビーや宴会ホールなどに常に展示している、美術館にいるような気分になれる場所でした。

 ドナテッロのダビデ像や、ベルニーニにプロセルピナの略奪など、レプリカにしても素晴らしい作品だと感心して鑑賞しておりましたが、如何せん、同行者がそだな趣味の持ち主でないのと、ほかに用事があるのとでゆっくり見て回れませんでした。

 大震災の直後の春休み、当時高校生の長男の教科書の購入がいつも近くの大型書店ではなくて仙台市の本町にある予備校に指定になったので、長男を連れてそっちまで出掛けました。

 高校の教科書買いに予備校かい、それも震災直前まで話題になっていた京都界隈の有名大学のカンニング事件で盛り上がっていた、どーもその子が通ってた系列らしい予備校かいと、遠くまで出向かなければならないことにブツブツ言いながらです。

 で、方向音痴の親子で少し迷いながら教科書を買い、帰り道、江陽グランドホテルの前に差し掛かりました。

「ランチは営業しております」

 と、お客様とホテルマンが会話しているのが聞こえました。

 思わずわたしはホテルマンさんに近付きました。

「お昼ですか?」

 ランチどきの時間帯ではありました。

「いえ、食事ではないのですが、ここの彫刻が前から好きで、彫刻は大丈夫でしたか?」

「一部修理している物もございますが、ロビーに陳列している物あります」

「観ていってもいいですか?」

 お金を落としてくれなそうなお客でも、流石にここは断りません。

「どうぞ、ご覧になっていってください」

 えええ、の顔の長男を引き連れ、中に入りました。

 大きくて安定悪そうなプロセルピナの略奪は修理中のようでした。

 わたしがこのホテルで一番可愛らしいと思っているアモールとプシュケ像が飾ってありました。

 アモールもプシュケも羽が小さく、プシュケの羽は蝶というより、バイキン○ンの羽のようなのですが、大理石の若々しい恋人たちの彫刻が無事なのを確認できて、嬉しかったです。

「帰ろーよー」

 重い教科書を持ち、母親に連れ回されるのにうんざりの長男から催促されました。ホテルと気に入りの彫刻の無事を知ったので、満足することにして、ホテルを出ました。

 その後、また別の用件でホテルに忍び込み(この言葉は適切でないですね、お金を落とす客ではないのに入り、です)、あれこれ鑑賞してまいりました。また行ってみたいです。

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