ディー判事ものは読んだことがないけれど
先のエッセイを書くにあたって、山颯の『女帝 わが名は則天武后』を読み返したのだけれど、武則天の片腕となって働いた狄仁傑の出番がほとんどなくて、亡くなった時に名前だけが出ていました。この小説は一人称の叙事詩のような印象で、政治や法律のあれやこれやは事細かに書きこまれていません。狄仁傑の活躍はだから書かなかったのかな、くらいで本を閉じて、再び仕舞いこみました。
確か、中国出身でフランス語で小説を書いた人の作品を積読していたのがほかに一冊あったっけと、探して、見付けました。
『バルザックと小さな中国のお針子』、ダイ・シージエ、新島進翻訳、ハヤカワepi文庫です。映画にもなったそうですが、本も映画もまだ目にしていません。本の帯に、「ダイ・シージエ最新作『ディー判事コンプレックス(仮題)』2007年5月刊行」とか印刷されています。(原題は『Le complexe de Di』ですが、日本で刊行された題名は『フロイトの弟子と旅する長椅子』)
ディー判事?
どっかで聞いた、というか、目にした記憶が……。
そうだ! 中野美代子か井波律子か、陳舜臣のエッセイか何かで、若き頃の狄仁傑を探偵役にしての海外ミステリがあると読んだ記憶がありました。
狄の字が、日本の音読みでは「てき」となるけれど、中国語読みだと「ディ」(或いはティ)となるそうで、ディー判事シリーズとして、何故かヨーロッパ人がミステリ小説を書いていて、結構有名だと書かれていたような覚えがあります。
検索してみると、作者はヒューリックという滞中経験のあるオランダ人。
ほへー。
日本の捕物帳に相当するような中国の公案物に出てくる名裁判官ものといえば包拯とかいう歴史上の実物。大岡越前守や遠山の金さんのように扱われているとか。狄仁傑もそのような対象になっているようです。
案外、『女帝』で狄仁傑の出番がなかったのは、ミステリものを連想されるのが嫌だったからかしらと、勝手に想像してみるのでした。
そして、『Le complexe de Di』はミステリではなく、中国の精神科医の物語なので(『バルザックと小さな中国のお針子』の中身をまだ読んでいないのに、訳者あとがきを先に読みました)、勘違いされないように、タイトルを変えたのかしらと、考えました。『女帝』の方はともかく、『Le complexe de Di』については、『フロイトの弟子と旅する長椅子』を地元の図書館で借りてきて、訳者あとがきを読んでみなくては。勿論作品だって読みますよん。ついでと言っては何ですが、『ディー判事もの』も借りてみようかしら。




