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行政問題と厳しくなりつつある社会


惠美子「△○▲※~!(意味不明の叫び)」


岩崎都麻絵「なじょしました? 医療費控除の申請も終わったし、ピアノの調律師さんも来て調律してくれたし、花粉症の症状も出てきて、年度末の行事はあらかた終わったんでしょう? 『三十と一夜の短篇』に今回あたしも参加して楽しかったよ」


惠「耳鼻科の受診はこれからですし、色々と予定はございます」


都「いいじゃん、この人の旦那さん人事異動なかったし、平和な年度末と年度始めになるじゃない?」


惠「いや、何もなくても旦那さんの職場は、毎年年度末年度始めは忙しいんです」


都「(自分が勤めで病んだ経験から良人を心配していると悟って)役所の問題をえぐる暴露小説でもお書きになったら?」


惠「いいえ、国家公務員は退職後も守秘義務を守らなければならないので、それはできません。ここのサイトでノンフィクションやらドキュメンタリーのジャンルないし、絶対受けないって解ってるじゃないですか」


都「具体的な例を出して叙述しなければ守秘義務は大丈夫じゃないの?」


惠「社会の教科書じゃないのだから、法律の解説や役所の機構や決済の仕方をだらだら並べて面白いと思っているんですか?」


都「誰も読みませんね」


惠「ほらみなさい」


都「ところであんた、国家公務員だったの? 地方公務員だったと思ってた」


惠「国家公務員でした。良人とは職場結婚でした。地方公務員に移管される前提だった国家公務員という面倒くさい立場だったんです。

 戦後から半世紀くらい身分がそんな状態の公務員のいる機構の役所にいたんです」


都「なんで半世紀もほっとかれたのよ。同じような立場の警察官やら学校の事務員はさっさと国家公務員から地方公務員になっていたのにさ」


惠「さあ、立法府の方も面倒臭いと思っていたのでしょう。でも面倒とほっとかれていたから、権力構造が変でしたし、度重なる法律改正と制度疲労で、末端の職員一人一人が頑張って働いていたって限界だらけでした。

 で、ウチの属していた役所で問題が起きた時に週刊誌の見出しに、ウチの省庁には高卒キャリアが多いとありました」


都「ふうん、大卒だって難しい国家公務員の上級試験に合格して、年齢的に社会人の経験もあるだろうから、高卒キャリアったって優秀な人材じゃないの?」


惠「わたしもそう思いますよ。でも落とし穴、高卒だと学閥がない。財務省(旧大蔵省)は東大が多いとか、そんな話聞くでしょ」


都「まあ、東大からキャリアの成功組だとそんな感じで言われるわね」


惠「つまりはほかの省庁につながりがない、特に財務省に顔利かないと予算取るの苦労しそうとか、大手マスコミも立派な大学出のコネがない。そもそも週刊誌の見出しに高卒キャリア云々って褒める為に書いたと思えないでしょう」


都「そうねえ」


惠「それにさあ、一般の窓口に並ぶ職員は正公務員ではなく、臨時的な雇用の方もいますし、窓口対応の公務員って大した権限無いわよ。

 公務員は国民全体の奉仕者じゃなくちゃいけないのだから、法律で決められたことしかできなくて、いくら政治が悪い、こんな法律間違っていると頑張られてもそこの役所の職員が超法規的判断できないし、特別扱いしたら、国民全体への奉仕者でなくなっちゃう。

 管轄違いの話をされて、そちらへご案内しなくちゃいけない場合もあるしさあ」


都「たらい回しにするなと怒られるヤツね」


惠「そう。監督する官庁の管轄は違う上に、法律上悪いのはその人でなくて、勤務先なんだけど、何もできなかった経験もあります。

 ノンストップで対応できる窓口が理想ですが、これは木っ端役人にはできません。市民の方々の声が立法府や行政府の力のある人に届かないと」


都「どこもかしこも真っ黒ね」


惠「あ、でも酷いと思ったことありますよ」


都「何に?」


惠「年金記録問題の大騒ぎの時に、この年金記録にご記憶ありませんかと通知が来たことがあるのね」


都「この人の本名はエゴサーチできないくらい同姓同名がいるから、同じ生年月日に絞っても何件もあったんだ」


惠「そうです、身に覚えのない短期の年金記録、全部自分のではなかったのですが、流石に腹が立ちました。当時この人は三十代半ば、いくら年金受給にまだ関心の無い年齢が多いといったって、こんなに放っておかれている記録があるのかと、情けなくなります」


都「だって年金記録は国が管理しているものとみんな信じ切っていたんだから」


惠「二十歳になるなり、就職するなりすれば、年金手帳は渡されるはずです。それを完全にしまい忘れていたんですね。若しくは結婚などで姓が変わっちゃったんで、一見宙に浮いたようになる」


都「え、婚姻届けで夫の姓を名乗るとしたら自動的に変わらないの?」


惠「変わりません。変わらないから、結婚で姓が変わって名義の書き換えしなきゃいけない不利益をどうしてくれると、妻の姓にした男性が最近頑張ってるニュースがあるじゃないですか。

 つまり岩崎都麻絵が、どっかのろくでなしと結婚して、苗字が変わったら、岩崎都麻絵の年金手帳やら、健康保険証やら、運転免許証、預金通帳、自分名義の各種財産ぜーんぶ戸籍取ってろくでなしの職場を通じておこなう種類もあるけれど、ほとんど自力で行わなければならないの」


都「架空の人間を使って仮定の話をするのもどうかと思うけど」


惠「マイナンバーの場合は結婚・離婚・養子縁組の場合どうするのか、戸籍の届けと連動するのかは調べていないので知りません。

 今説明した通り、結婚して苗字が変わった場合、独身時代と、結婚後、きちんと年金記録を統一しておかないと別人のままになっちゃうし、たまに都麻絵を「妻絵」とか「都麻子」と職場の担当者が届けに誤記しちゃうと、それでまた別人の記録になりかねない。

 年金記録問題や逃亡犯と同居していた女性が偽名でお勤めして厚生年金を掛けていた事例があるから年金手帳を持っていない人は経歴を届けにきちんと書くようになったし、金融機関はマネーロンダリングの防止の為に、新しく口座を開く時の身分確認しっかりするようになっているでしょう」


都「自動車学校に入る時は本籍地入りの住民票が必要だしね」


惠「あちこちで色んな手続きで身分確認が必要になってきています。今回の医療費控除でもマイナンバーが必要という項目があって、ああああ、と思いました」


都「副業を持っているとそっちも税務署に目を付けられるとか、週刊誌でやってたヤツかしら?」


惠「ま、それもあるし、子どもが就職やらアルバイトをする際、イマドキお給料を現金手渡ししないのは解っていましたが、振り込みの口座、マイナンバー、年金手帳と子どもの働く場所に教えなきゃいけないし、就職したらしたで今度は雇用保険の被保険者証や健康保険被保険者証と渡されます。当たり前だけど、どんどん子ども名義の大事なものが増えて、それを管理しているのが自身や家族以外にもいるんだと感じます。当然戸籍や住民票を管理している役所もあります」


都「気分的に良くないんだ。それに流れ者がひょっこりここで働かせてくれって言ったって、マイナンバーは、運転免許証は持っているか、年金手帳がないと厚生年金加入の時に面倒くさいぞと、出てくるから、現実生活がどんどん厳しくなってくる訳だ」


惠「監視社会と見るか、安心して暮らせる社会かと思うかは別ですよ。アメリカ合衆国みたいに、なんでも自己決定自己責任で行けるほど、人間強くないですから。ただ、自分の経歴は自分で管理した方がいいか、国にすっかり任せた方が楽なのか、考えることも必要だと思います」


都「意味不明の叫びから、真面目にまとまった……」

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