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放射線を除去できるとしたら

 六年前、良人がビデオレンタル店から『宇宙戦艦ヤマト』の実写版映画を借りてきて観ていた。正式な題名は英語で表記するのだか知らないが、木村拓哉が主演していた作品だ。

 良人は作品を再生したは良いが、仕事の疲れがあったのか、半分眠りながらの鑑賞だった。わたしは横で片手間に観ていたが、泣けてきた。映画の内容にではない。当時、東日本の震災があって、福島の原子力発電所の問題が大きく報道されていた。

 放射能を除去する方法があればどんなに救われるか。それが身近に感じられる問題だったからだ。

 しかし、劇中にある通りの放射能除去装置が実際存在したらどうなるか。

 装置を使って放射能を除去したら、質量保存の法則というのがあるのだから、放射性物質は消えてなくなる訳ではないし、放射線の半減期をそこだけ異常に早めてしまうのか、理論がよく解らない。消えてなくならないのなら、掃除機の集塵器みたいにためこむのでいずれどこかに廃棄しなくてはならず、廃棄先は宇宙空間なのか異次元なのか、半減期を早めるのなら『ドラ○もん』に出てくるタイム風呂敷みたいなもので、放射線に汚染された物質をも経年劣化させることになる。

 そこはオハナシだから、追及してはいけないし、進んだ科学を持つ異星人の装置だから、地球人とは違った法則や理論があるのかも知れないと、止めておく。

 実際放射線の汚染を短時間に除去できる装置があったらどうなるか、考えると恐ろしい。原水爆を使って、使用国が相手国を降伏に追い込んでから除去装置を持って乗り込んでいけばいいのだからと、安易な作戦を立案されたら、冗談では済まされない。

 今、『プルトニウムファイル』(上・下二冊 翔泳社 アイリーン・ウェルサム著 渡辺正訳)を読んでいる最中だ。物理や化学の知識が無くても読める。しかし、読んでいて胸糞悪くなる。

 マンハッタン計画は理論物理学者オッペンハイマーを中心とした原爆開発計画だか、その脇役であった医者たちが、放射性物質――主にプルトニウム――の人体に与える影響を研究していた。単にそれまでレントゲン技師やウランやラジウムを含んだ蛍光塗料を扱っていた工員で健康を害した人たちを追跡していたとか、マンハッタン計画に従事していた技術者の健康管理をしていたとか、広島・長崎の被爆者やそこに入った米兵や軍医・衛生兵のサンプルを集めていたとかだけではないのだ。

 プルトニウムなどの放射性物質をインフォームドコンセント無しに、任意の患者に注射などの形で投与し、体外排出はどうか、体内に残存するならどこの臓器や器官か、どのように影響するかを観察していた。

 軍は研究に従事する医師たちにどれくらいの量の放射線なら人体への影響が出ないのかを知りたがった。だが簡単に結論が出る事柄ではない。それでも、国民の安心の為、そして原爆投下の効果を喧伝する為、放射線は時間の経過とともに消える、そうすれば無害ですと発表していた。

 わたしが読み進んでいるのは上巻の三分の二程度。ここで頭痛がしてきそうで小休止している。著者はこの本の元になるプルトニウム注射の人体実験の報道でピューリッツァー賞を受賞している。当のアメリカ合衆国の国民が原水爆による放射能汚染には『大本営発表』で誤魔化されてきた客観的な証拠でもある。

 これからまた米軍やその御用学者が如何に自国民を人体実験に使っていたかの記述が続くのだろう。気分が悪くなろうと読了せねばなるまい。

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