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昔話法廷

 NHKEテレの『昔話法廷』の内容に触れます。

 なお、わたしはNHKの回し者ではありません。


 一昨年と、昨年のそれぞれ夏休みにNHKEテレで『昔話法廷』が放送されました。子ども向けの番組です。もし裁判員裁判に参加したら、あなたはどう判断しますかと仮定し、子どもにも判り易く、馴染みのある昔ばなしを題材にして裁判を進める形になっています。

 真面目に制作されていますし、動物さんたちは結構リアルな着ぐるみで、出演する俳優陣もなんだか贅沢。

『カチカチ山』を題材にした回では、兎は太宰治と違って女の子ではなく男の子でした。既に殺人罪で服役している狸が検察側証人として出てきます。弁護側証人としておじいさん、演じるのはうっかり八兵衛こと高橋元太郎。おじいさんはきちんと見守り、更生させて二度と罪を犯さないようにしますので、執行猶予を付けて自分に預けて欲しいと裁判員に訴えます。裁判員は、肯きそうになりますが、検察側はおじいさんが付いていながら、狸を一度殺そうとしたのですと主張し、兎に狸とまた会ったとしても罪に手を染めないと言えますかと問われ、沈黙します。着ぐるみの無表情が意味深に見えてきます。

 一体どう判断したらいいものでしょう。

 昔ばなしそのままではなく、現代風の演出が入っています。『三匹のこぶた』では、狼の家のカレンダーにこぶたの家で肉を食べると書き込まれていました。検察側はこれはこぶた側に招かれていたのではないかと主張、一方弁護側は今までこぶたたちは命を狙われていたのだからそんなことはしない、狼がこぶたの家を襲撃して食べようと予定して勝手にメモしたのだろうと主張します。検察側は狼が来るのを知っていて、わざわざ大きな鍋でお湯を沸かしていたのだろう、計画的な殺人ですと罪を鳴らすのでした。

『舌切り雀』では雀娘の歌手デビューが決まっていたのに根岸季依のおばあさんから舌を切られた為にデビューが取り消しになった設定が加えられていました。一方おばあさんはつづらから毒虫毒蛇が出てきて襲われたと言うけれど、一か所しか怪我していないし、何処でつづらを開けるか解らない、自宅で開けたら恩のあるおじいさんを巻き込んでしまうのだから、おばあさんの言いがかりではないかと弁護側が言うのです。

『浦島太郎』は、玉手箱には一気に老化して死に至らしめる毒ガスが詰められていたが、浜風にガスが流れて浦島太郎はおじいさんになっただけで済んだ、乙姫が殺人未遂罪で問われる設定になっています。

 乙姫の着物の着付けがおかしいと見ていたら、妊娠していると衝撃の展開。妊娠を告げたら、浦島太郎が地上に帰りたいと言い出したとのこと。格さんや大岡越前守を演じてきた横内正がとんでもない男の浦島太郎を演じているのです。情状酌量で執行猶予を付けてくださいと弁護側が言い、検察側はきちんと罪を償わなければ母子とも不幸だと言います。

『アリとキリギリス』では、アリとキリギリスは子どもの頃から親友同士、ところが冬に困窮するキリギリスをアリは助けなかったと、保護責任者遺棄致死罪で裁かれることになっています。アリとキリギリスの友情関係だけでなく、アリには妻があり、十人くらい子どもがいる設定になっています。収穫が少なかったので、キリギリスまで受け入れたら冬が越せなくなると判断の結果だから罪に問えないと、弁護側は言うのです。キリギリスは歌を歌って食い扶持を稼いでいましたが、ある時アリに対してコツコツ働くだけが能みたいなことを言われたか、日記に書いていたのを見たかしていて、それがアリの行動に影響していたのではと検察側が言います。弁護人が嶋田久作で、検察側がミムラです。

『白雪姫』の証人が七人の小人ではなく、森の狩人の苅谷俊介、いかにも人の良さそうなおっちゃんです。白雪姫が毒林檎を食べて苦しんでいるのを助けてくれた王子とはその時初めて会いましたと、姫は言いますが、森の狩人はこの写真の青年と姫は以前から森で会って親しげにしていたのを目撃していたと言いました。

 白雪姫を毒林檎で殺そうとした罪で訴えられている王妃は真行寺君枝。検察側から、ネット通販の履歴から林檎を検索していますねと問われます。

「白雪姫と同じものが好きなんて公に認めたくなかったんです」

「お城のみんなは白雪姫が好きだけど、みぃんなわたしのことは大嫌いだから」

 と爆弾発言までして、白雪姫が遂に「くそばばあ!」と罵るのでした。十五分の番組なのに、二時間サスペンス並みに面白いのでした。

 各回とも裁判員の視点で進みます。どっちの言い分が正しいのか、どう判断したらよいのか、迷いながら番組は終わります。

 被害者、或いは犯人の心情や行動に沿い、追体験していく小説やドラマや映画とは違い、裁判は時によっては残骸のような或いは生々しい証拠品を見て、証人の話、弁護側・検察側の説明を聞きながら判断しなければなりません。先入観を持たず、自身の良心の判断に任せると言われても、内容が非常に曖昧で想像力を駆使しなくてはならない場合もあるでしょう。

 大人が観ても、裁判員裁判制度の難しさが伝わります。

 そういえばEテレじゃなくてBSでだったけれども、過去の哲学者や思想家を、後世に良くない影響を与えた罪で裁くとかいうほとんど芸能人のワイドショーみたいな『判事マツケン』ってのもあったなぁ。

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