Let’s go!
星野源はそのまま二階堂ふみと一緒に付いていきます。行先は映画の完成を棒に振ってまで逃げた男の許。その男は別に女を作っていたのでした。二階堂ふみは復讐の為に男の部屋に行きます。縮み上がる男女に二階堂ふみは酒瓶を割り、その欠片を口に含みます。
「別れのキスよ」
口に含んだガラスの欠片で、キスをしながら男の顔を傷付けます。二階堂ふみが口ずさむ唄が、昔聞いたCMソングと思い出し、星野源は彼の女がかつての見惚れた子役の少女の成長した姿と気付きました。
二人で歩いていると、結局國村隼の手下たちの見付かり、組事務所に二人して連行されます。星野源は娘が映画を投げ出して逃げた原因の男と完全に勘違いされています。このままでは命の危険にさらされる……。
「この人映画監督よ」
二階堂ふみはとっさに口に出しました。態度を変えるヤクザの面々。そして星野源に厳命するのです。
「娘を主役に映画を撮れ、そしてヒットさせろ」
國村隼組長は妻の為に組を上げて映画を自主製作すると決めていて、組員も賛同、内容は堤真一の組との抗争なのです。
星野源は殺されたくないばっかりに二階堂ふみの発言に肯きますが、映画の撮影はできません。意気揚々と準備を始める組の様子に、遂に逃げ出します。ところがすぐに追いつかれて首根っこ押さえられます。恐怖と緊張のあまり、側にあった木箱にヘドを吐いてしまいます。木箱から溢れてきたのは、かつての映画グループの連絡先メモ。殺されないようにするにはこの人に頼むしかないと、メモ通りに連絡させてくれと星野源は言います。
高校生の映画グループも十年経って、しかし、まだ無名であり、アクション担当の元ヤンキーは俺たちもうじき三十だ、夢見て生きてられないと地道に仕事をしようとして袂を分かっています。しかし、グループの頭の長谷川博己はまだ諦めていません。そして行きつけの店で紹介された女性、成海璃子を気障ったらしい歯の浮く台詞で口説いていました。
そこへ星野源たちが駆けつけ、映画を撮影してくれ、但し、スポンサーはヤクザ、内容もヤクザの出入りと条件が告げられます。
長谷川博己は一瞬寄り目になります。悩んで断るどころか喜んで受け入れます。ヤクザの運転するワンボックスカーで送られながら、成海璃子(彼の女は家に送られる)は「キスしてもいいわよ」と長谷川博己に伝えます。車に乗り合わせている全員が一斉に、「キスした方がいい」と言います。しかし、長谷川博己はそこでキスするような男じゃないぜなどと決めたつもりの台詞を言うのでした。キスしとけばよかったのに。長谷川博己はアクション担当の元ヤンキーや撮影担当の仲間を連れて、組事務所に到着します。
堤真一の組と話合いがあり、堤真一も二階堂ふみのためならの気分になっていて、抗争と撮影を受け入れます。で、出入りは日本刀を使用、銃は使わないと取り決められました。
ロクな準備もなく、始めてもいいのかと長谷川博己は思いますが、そこはそれ、すぐに撮影決行です。何故か星野源まで日本刀を持って付いていく破目に。
ヤクザ抗争の情報を掴んだ警察も動いています。
堤真一の組に乗りこんで行って、國村隼はそこで二階堂ふみの写真が引き伸ばされて飾られているのを見付けますが、無言のまま、出入りのチャンバラ開始。
血の雨、血の海、カオスの状態、ここまでくると残酷シーンというより茶番なのです。しかし、國村隼の首が吹っ飛び、報復の為に銃が使用されました。
警察の機動隊が機関銃持って駆けつけ、ヤクザたちに容赦なく射撃をしていきます。
星野源は景気付けと薬をかがされ、画面が虹色。しかし、右手を手首から切断されます。二階堂ふみが巻き込んでごめんなさいと謝ります。
「このまま右手があったって詰まらない人生だったよ」
なんてことを言いながら、二人は抱き合いキスをするのでした。
何をしているのか全く把握できずに制圧することしか頭にない警察からの一斉射撃が浴びせかけられます。
國村隼と堤真一のそれぞれの組と映画撮影メンバーは銃弾に倒れ、制圧されたかのようでした。しかし、長谷川博己一人立ち上がり、カメラや集音の機械からテープを回収し、バックに詰めて、逃走します。
走り去る長谷川博己の頭の中には、満員御礼の映画館、観客の歓声に応える出演者、製作者一同、既に傑作を撮った気分になっています。夜の道をひたすら走っているところで、「カット!」の声。撮影は終わったとばかり、長谷川博己は疾走を止め、本物の撮影スタッフたちがちらほら出てきます。
映画は終わりました。星野源の歌が流れます。
ああ、ヘンな映画だった、面白かった。主役は誰でもない、映画そのもの。映画を愛し、映画製作に係わる高揚感。たまにはこういう映画も悪くないです。
決してこの映画に教訓を学ぼうとしてはいけません。夢を見てそれを追い掛け続けようが、叶わなくて投げ出そうが、それぞれの人生、自分で選んで自分で責任取ってきたと言えなきゃ詰まらないでしょ。