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フランス映画『読書する女』

 レイモン・ジャンの小説と同名のフランス映画『読書する女』の内容に触れます。

 女性が手元で本を拡げ、読みふける、或いは朗読している、絵画の構図にあり、写真機が出始めた頃の座った貴婦人のポーズの一つでもありました。わたしが学生時代に観た映画『読書する女』はズバリ、朗読するお仕事をしている女性が主人公です。三十年くらい前の映画ですね。フランス製で、超大作でもない、ミニシアター系で話題になっている良品という奴で、田舎に来るまで、タイムラグがあり、先に新潮文庫で出版されていた原作を読んでいました。

 やっと地元のミニシアターで上映だあ、と観にいきました。原作に忠実ながら、構造を複雑にして、同じ作者の小説を朗読してみたりと、遊びが入っていました。

 ヒロインが女性の友だちから、「あなたは綺麗な声をしているのだからそれを活かした仕事をしてみない?」と言われます。

 いくつか職業を挙げられ、最後に「本を朗読する」と提案。今はカセットなどのレコーダーがあるのだから、そんな古めかしいことなんて、と思うヒロインに友だちは続けます。

「老人や子ども、病人や体の不自由な人、孤独な人が待っているわ」

 友だちの言葉はヒロインの好奇心を刺激し、依頼者の家を訪問して朗読する仕事をしてみようと決めるのでした。

 広告代理店に行って、広告を依頼しようとすると、担当の男性がそんな職業を載せるのかと、言います。ヒロインはこんな職業に依頼は来ないだろうとか、子どもっぽいと思われているのかしらと、反発しながらも、依頼を通します。

 そして、依頼が来ました。交通事故で足が不自由になった少年の気分転換にとのお話。ヒロインは少年の家に行き、母親から事情を聞き、かなりとぼけた様子のおじいちゃんの突然叙事詩らしき一節を叫び出すのに驚かされながら、少年の部屋に行き、モーパッサンの作品を朗読します。少年はヒロインの容姿、特に足に視線を寄せます。ヒロインは自分の足の魅力に自信を持ちつつ、朗読。ところが、少年は、足にか、モーパッサンの内容にか、ひどく興奮しはじめて失神。お医者さんを呼ぶ事態に。

 大騒ぎになりましたが、依頼の取り消しはなく、これ以降もヒロインは少年に、あまり刺激の強くない作品を選ぶようにして朗読を続けます。

 目の不自由なお金持ちの未亡人の依頼が来ました。お金持ちだけど、共産主義に共鳴している方のようで、そういった本を好みます。

 ヒロインは朗読の仕事を始めてから、大学時代の先生に会いに行ってそれまでの経過を話して、改める点はないかと尋ねてみたり、同棲している男性と話し合ったりしています。ヒロインは自分がそこそこ若くて魅力的なのを知りながら、単身依頼者の家に訪問する仕事の危険や世間体のあれやこれやに無自覚です。

 そして遂にパートナーがこの依頼はおかしいと感じるような手紙が届きます。

「この依頼の手紙は変だ。始めには『マダム』と書いておきながら、終わりの方には『マドモワゼル』とある」

「どこがおかしいの?」

「いや、僕は君を信じているよ」

 ヒロインがそのお宅に訪問しますと、中年の男性が出迎えます。ヒロインが本を読み出すと、いびきを掻いて寝てしまいます。その後も通うのですが、中年男性はとんでもないことを言い出します。

「君は本を読むだけ? それだけじゃないんだろう?」

 ヒロインはこの男性をぶん殴っても良かったと思うのですが、その当時のフランス的な対応になり、男性は未練タラタラ、ヒロインはわたしはわたしで自由なのと、別れます。

 ヒロインはある夕方、朗読を勧めてくれた友だちとカフェで待ち合わせをします。友だちに手持ちの本の朗読をせがみます。面倒がる友だちですが、渋々読み始めます。

 本の内容に合わせて、ヒロインは空想を始めます。カフェの席にいる人たち、それまで会った人たちを登場人物になぞらえ、うふふな物語の脳内再生。これは原作にない部分、友だちが読むのは、原作者の別の小説。

 ヒロインは今度、六歳の女の子に本を読んでと仕事で忙しい母親から依頼を受けます。父親はどっかに出張中で、両親が不在がちの家に子守り代わり。女の子はそれなりに知恵付いていて、悪戯好き。黒と白の床のタイルがチェス盤みたいな家で読むのは『不思議の国のアリス』。しかし、女の子はじっとしていません。外に移動遊園地が来ているから遊びに行こう、どうせお母さんが帰ってくるまで戻ればいいんだもん、とヒロインに言って、飛び出していきます。一緒に遊んでいて、女の子が上着をばっとめくってみてびっくり。母親の物と思わせるアクセサリーをどっさり身に付けていました。慌てて自宅に連れていくと、早く帰宅していた母親が誘拐と窃盗じゃないかと警察沙汰。

 判事さんから朗読の依頼。今度こそお堅い職業の人だから安心だわと、伺うと、これを読んでと手渡されたのはサド侯爵の『ソドムの百二十日』。かなりどぎつい倒錯性愛シーンを冷静に読み、気に入った、またお願いするよと言われます。再び判事さん宅に行くと、これまでのトラブルで顔を合わせていたお医者さん、警察の偉いさんまで来ていて、朗読会を始めよう。これ趣味? 嫌がらせ?

 ヒロインは仕事を放り出してしまうのでした。


 原作と違って、ベットサイドで妻が夫の為に本を読むシーンから映画は始まります。そして、サドの小説を読まずに判事の家を出てきて朗読は終わりますが、本を読み終わった妻が今度は朗読の仕事をしてみよう、終わりじゃないわと呟いて、映画は”FIN”となります。妻役とヒロイン、夫役とヒロインの同棲相手は二役。

 読書しながら想像を膨らませる面白さと、同時にあるエッチな部分が楽しいお話&映画でした。

 ヨーロツパ版の「フジツボの怪」みたいな話も出てきて、可笑しいというか、ちょっと怖いです。(海水浴に行って膝を怪我したら……、ヨーロッパバージョンの都市伝説と流布しているらしいオハナシ)

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