この人は声優ではない
わたしが子どもの時あたり、テレビで子守りをさせてはいけないみたいな言葉があったような気がします。そして当然、自分たちが子育てする時だって育児雑誌やら何やらで、テレビやビデオを使って子守り代わりにしてはいけないと言われていました。そうは言っても、家事で時間を取られるような場合や、大事な大人の話をしなきゃいけない場合に、つい使ってしまうものです。親戚の冠婚葬祭にぜひ連れておいでと言われて家族総出で行ってはみても、泣き出したり、退屈して暴れ出したりしたら大変ですので、わたしの子育ての頃は八ミリビデオが流行でしたから、子どもを静かに座らせておく対策としてアニメや特撮を観られるようにして持参していました。
イマドキはスマートフォンに子守りをさせていいのか、なんて言われているようで、だいたい人間のやることはツールが変わるだけで、やってるこたぁ変わらないのです。
子どもの方も、テレビやビデオの仕組みが何となく解るようになると、「○○ヒーロー」や「ナントカカントカのお話」のビデオを観せろと親にせがむようになってきます。
ウチの長男がチビ助で、わたしが育児休業を取得していた時は、デ○ズニーの『トイ・○トーリー』の第一作目がビデオ化されていましたので、それを観たいと毎日せがむのでした。朝食とその片付けやらが終わった頃合いに言い出すのです。零歳児の二男と一緒に散歩に行った方がいいと思って、そう言うのですが、聞き入れません。(その頃は姑と同居していませんでした)
あの頃は台詞を暗記するほど『ト○・ストーリー』を一緒に観ていました。視聴が終わると散歩に行くと、すっかり暑くなった時刻に長男が外に飛び出していくので、弟君は散歩の途中でグースカ眠っていました。
その元気の有り余っていた小僧も成人して就職しました。ある朝、ゆっくり出る出勤の日、わたしと姑が朝茶を飲みながら朝のドラマを観ていました。その番組を観て一言。
「唐沢寿明って声優じゃなかったんだ」
「……」
確かに唐沢寿明は『○イ・ストーリー』の主役の声を担当していましたが、声優が本業ではありません。それはもう一人の主役の所ジョージも同じです。
「所ジョージは声優じゃないの知っているでしょ。唐沢寿明って有名な俳優じゃないの。確かに無名の下積み時代仮面ラ○ダーショーに出ていたらしいけど」
「ふうん……」
長男は笑って出勤していきました。『トイ・ス○ーリー』の主役の声を覚えていたんだと、別の感心をしました。
NHKの朝ドラ『とと姉ちゃん』を観ていてのヒトコマでした。唐沢寿明の役は雑誌「あなたの暮らし」の編集長の花山伊佐次、『暮らしの手帖』の編集長花森安治をモデルにしています。実際の花森安治は雑誌作りのために、女性の動作や気持ちを体験しようと髪を伸ばし、スカートを穿いていたように聞きました。唐沢寿明演じる花山伊佐次もスカートを穿いて登場しました。しかし、髪は伸ばさなかったし、スカート姿も一回きり、それもスコットランドの民族衣装のようで、女装とは言えないのではと一瞬思いました。
スコットランドのキルト姿、本式はあのチェックのスカートの下にパンツを穿かないのだそうです。(ヒストリカル物で、相手役の青年の動作にヒロインが今見えちゃった? などとトキメクのです)