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あすのみらい  作者: 怠猿
3/4

second 偽りの虚

 その少女は一言で表すなら絵に描いたような美少女だ。腰元まで届き透き通るような白髪、幼げの残る顔。その見るからにサイズの合っていない白の軍服に身を纏っている。

彼女もまた、俺と同じく『ガイア』を持つ人間だ。実は言うと、この軍には彼女の親衛隊が存在するのだが、所属しているメンバーは全員がかなりの変態(親衛されてる彼女自身も言うくらい)である。

「比叡。お前って、性格除けば可愛いんだけどな」

「やめてもらえないかしら。死体みたいな瀬良に「可愛い」って言われたら私自身の価値が下がってしまうわ」

「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い――、」

「調子に乗らないでもらえるかしら‼ あら、ここでは見かけない顔の娘ね? 立てるかしら」

 康太郎を女性だと思ってるのか? ふむ、面白い。なら俺は生暖かい眼で二人を見守っとこう。

「あ、いえ、大丈夫です。一人で立てます」

「なら良かったわ。えっと、あなたの名前は? 私の名前は比叡メイ。所属は五班よ」

「俺は萩吾康太郎。所属は二班」

「いい名前ねー…康太郎? 男性の名前よね…? あと、なんで瀬良はそんな気持ち悪い顔をしながらこっちを見てるのかしら」

 ああ、もうダメだな。これは。

「あ、うん。そうですが」

 ……あー。鋭い目つきが更に鋭くなってる。何度も見たことあるから分かるけど、

 ちょー激おこやないの。

「……」

「なんで、俺を睨むんですかね? 俺が一体何をしったっですんがぶる⁉」

 思いっきり回し蹴りされた。あー、危ない危ない。

受け身を取ってたから大丈夫だったけど、まともに直撃してたら正直な話、死んでた。

「あぶねえ‼ 死ぬところだったじゃねえか‼」

「チッ」

「比叡。お前、本気で俺を殺す気だったな」

「だからなにかしら?」

「ならばよろしい。戦争だ」

 シャキン(彼女の倍以上の大きさの大刀が彼女の手元に登場)

ダラダラダラダラダラダラ(汗)

「なにか遺言はあるかしら」

 ポン(俺の手元に二本の双剣登場)

「弱いのよ」

カキーン(俺の双剣が大刀で弾かれ空中に飛び)

「あ(ら)」

 パリーン(双剣が窓を破壊)

「俺、悪くないから」

 康太郎が部屋の中に逃亡。

「また、お前らかあああああああああああああああああああああ⁉」

 廊下の奥から凄い勢いでこっちに走ってくる一人の人影。

通称モアイ。本名はゴンザレス竹島 (53)毎回毎回、なにか起こると風の如く現れたり走ってきたりするおっさん。一度会話をすると半日は解放されないため恐れられてる人物だったりする。

「……そろそろ部屋の中に入るか(しら)」

 俺と比叡も廊下から部屋の中に移動する。廊下の方からゴンザレスの悲鳴に似た叫び声が聞こえたけど無視。すいません。

 相変わらず不気味な黒の法衣を羽織った人物が数人いるけど微かに骸骨マスクの隙間から見える顔で見知った人物だということが分かって一安心。

 とりあえず、並べられている席に適当に俺は座り、比叡は俺から少し離れた席に座ると一人の、黒の軍服を着た少女―――萩吾瑞希大佐が部屋の中に入ってきた。

「廊下の窓が綺麗に割れていたが、割った奴は素直に手を上げろ」

「瀬良が窓を割りました」

「比叡が窓を割りました」

 声が重なり、ほぼ同タイミングでお互いに指を指す二人に瑞希大佐は溜息を吐く。

「また、お前らか……」

 この後、俺と比叡(おまけに康太郎)は瑞希大佐に説教をされたが、それはまたの次回。


「それで、なぜ第三会議室に来るように言ったんですか? 会議ならさっきの部屋でも出来るはずですが」

 白の軍服を着た青年がそう言うと周りの白、黒、赤の軍服を着た男女が頷く。勿論、俺もだ。

「ああ、ここに呼んだのは会議ではない。ここにいるのは瀬良陽太、比叡メイ、西郷翔也、霧島紗枝か」

「僕たちですか? 他にも人はいますよ?」

 名前を呼ばれた人間―――共通点は『ガイア』…?

「もしかして、ガイアを持つ者の話ですか? それとも、誰かが来たとか…」

 長い髪を後ろに一本に纏め、目が痛くなるくらい赤い軍服を着た気弱そうな女性が言うと、

「話が早いな、霧島紗枝。彼女の言う通り、新たなガイアを持つ者がここにやってきた。入れ」

 瑞希大佐は微かに頬を緩め、一言言うと外から返事が聞こえ、ドアが開かれる。そして、一人の少女が部屋の中に入ってくる。

 その少女は背が165くらいの髪は黒のセミロングで、短くされた袖から伸びる細い腕に見える【黒の十字架模様】と膝まで届く黒のスカートには深くスリットが入れられ、そこから脚が覗く。全体的に言えば凛々しい。の一言で終わるだろう。ただ、一つだけ言うことがあるとすると、

 目つきがかなり鋭い。怖いのではなく、鋭い。そんな少女―――は瑞希大佐の隣に立ち自己紹介をする。

「私の名は崇城暁。今日から二班に配属されたわ。皆さん、よろしくお願いするわ」

 その少女はにこりと笑う。この子、比叡に似た何かが感じる。

「それじゃ、崇城暁を含め、ここにいるガイアを使う者は五人になったな」

「……大佐。一人忘れています。現在ここにはいませんが」

 瑞希大佐はうっかり顔で「忘れていた」と一言。忘れていたってしょうがない。俺だってアレの存在を翔也が言うまで忘れていたし。

「せっかくだ。まだ時間はあるからここにいる全員の自己紹介も済ませるか。そうした方が崇城暁にとってもいいだろう」

 それはいい考えだ。瑞希大佐は周りを確認しながら、

「それでは私から自己紹介をしよう。名は萩吾瑞希。ここの軍の中では大佐を。所属は二班だ」

 瑞希大佐が言い終えると一人の青年が席から立ち上がる。

「僕の名は西郷翔也。一応、七班に所属させて貰っています。どうぞよろしくお願い申し上げます」

 紅の長髪に意志の強い瞳と中世時代の紅色の騎士服を纏ういい意味で目立つ青年はその場でお辞儀をして席に座る。おどおどしながら立ち上がるのは赤の軍服を着た女性だった。

「あ、あの…。わ、私のな、名前は霧島紗枝…。七班にしょ、所属、し、していまひゅ!」

 最後までおどおどしながら紗枝は席に座る。(席に着いた紗枝が胸に手を当てて息を吐いたら比叡が毒を吐いたのは内緒であるが)その後、七班の自己紹介が終わり、

「次は俺か」

 と言って立ち上がるのは白のコートを着た男性だ。

「名は、倉本士郎。所属は五班。一応、よろしく言っておく」

 男が座ると比叡が立ち上がり自己紹介をする。

「私の名は比叡メイ。所属は五班よ。別に空気を読んで挨拶したわけじゃないかしら」

 心の中で素直じゃないな。と言っておく。口にだしたら大変なことになりかねないし。

 比叡も席に座り、五班の自己紹介も終わって、残るは俺ら、二班の自己紹介(瑞希大佐は既に自己紹介済みの為、無し)のみ。康太郎が席から立ち上がり、

「俺は萩吾康太郎、つい昨日、本部からこっちに移動しました。所属は二班、どうかよろしく」

 康太郎は頭を下げて席に座り、いよいよ俺の番か。結構、緊張するな。

「俺の名は瀬良陽太! 二班に所属しているぜ!」

「………………」

 白けた。

すげえ白けた。そんな空気に比叡が割り込み――、

「ガイア(笑)を持つ者。と付け加えたほうが良いんじゃないかしら。瀬良の場合は」

「人のガイアに(笑)を付けるんじゃないぞ、比叡」

 比叡は「ふっ」と鼻で笑い、

「瀬良(笑)を付けられるのが嫌ならせめて私に勝たなきゃかしら」

「おい、更に酷くなったぞ⁉」

 あと少しで言い合いになりそうな空気を瑞希大佐はコホンと咳を入れると俺は席に座る。

「全員の自己紹介が終わったところで二日後のノイズ討伐作戦、っと、崇城暁。席は決まってないから適当に座ってくれ」

 崇城が俺と比叡の間に座ってからノイズ討伐作戦が始まる。

「基本的の戦術は―――」

 この基本的戦術は班によって変わる。

 守りに徹して少しずつ敵の体力を削る班や、大火力の攻撃で一気に敵の体力を削る班、攻撃と守りの両方で攻撃が危なくなったら守りにチェンジの繰り返しをする班や、色々居るのだが、――俺らの班は守りの『ま』文字も存在しない完全、攻撃に徹した班だ。

 守りがない為、下手をすればお陀仏、仮に生きていても四肢がなくなったりすることもある(無事に帰ってきた班には下半身がなくなっていた人もいた)。

 ガイアを持つ者と持たない者で変わるのがそこの辺りだ。

 まず、変わるのが与えるダメージ量が全然違う。

簡単に例えるなら、『レベル1の勇者とレベル100の勇者が同じ武器を装備してモンスターに与えるダメージ』くらい違う。無論、防御も同じなのだ。

だからと言って、ガイアを持つ者も普通の人間だ。巨体の化け物に薙ぎ払われれば胴体は引き千切れてバラバラになるし、踏み潰されれば一瞬で肉片に早変わりする。

生憎、軍にいる人間全員は『狂った研究者』によって僅かながらの【身体強化】と【高濃度の放射能】でも被ばく、死なない肉体に改造されている為、多少の傷なら大ケガにはならない。

「―――だ、分かったか?」

 あ、聞いてなかった。

「では、瀬良陽太。私が言った言葉をそのまま真似て言ってみろ」

「き、」

「き?」

「聞いてなかったので分かりません」


 ビュン


 ……………………………………………………………………………………………は?

何かが音速の域で耳を掠めた。

 恐る恐る、後ろを振り向くと短刀が壁に柄まで『埋まってた』。何? どんな風に投げたら短刀が柄まで壁に埋まるの? ここまでになると彼女が人なのかどうか怪しく感じる。

「危なかったな、瀬良陽太。うっかり手が動いて投げてしまった。すまない」

「すまないで済みませんよ。これ」

 下手すれば顔半分無事だったら奇跡なくらいだ。

「人の話をちゃんと聞かなかった瀬良陽太が悪いのだぞ。次からはちゃんと話を聞くように」

「………はい」

 次からちゃんと話を聞こう。音速で壁を穿つナイフ投げは食らいたくないからな。

「誰かの為にもう一度言うぞ、戦術は攻めに徹しろ。分かったな」

 ああ、いつも通りだ。

 部屋にいる全員が「はーい」と返事をして作戦会議(?)は終わった。

「ふう」

 溜息を吐いてから時間を確認するが時間はまだ昼前。昼まで何して時間を潰そうか。

「彼と遊んでこようかな」

 一人の青年の姿を脳裏に浮かべ、少し頬を緩めてしまった自分の頬を強く叩いて気を引き締める。

 そうだ、昼に彼を誘ってご飯にするのもいいかも。ううん、ダメ。彼は私と一緒にご飯食べたら気分を害するかも知れないし…他にも一緒に食べる人の邪魔になるかも。

「自分の気持ちに素直になれてないなあ…」

 再び溜息。

 どうすれば自分の素直な気持ちを彼に伝えられるだろうか。白の軍服の上から胸に手を当てて目を瞑る。

 目を開けて前に写る自分自身を見つめる。

 幼げな顔に腰まで届く白髪。おまけにサイズの合わない白の軍服。

同じ力を持っていても彼と私は『釣り合わない』と心の中で言って自身の心に虚を吐いていたのに。それでも変わらずに彼のことが好きな自分が憎い。

 胸ポケットから小さなアジサイの髪飾りを取り出し見つめ、少ししてからそれを前髪に着ける。彼は気付くかな、だけど彼のことだから全然気付かないかも。

「まあ、いいかな。その内……この気持ちを伝えられるかも知れないし」

 また、私は虚を吐いた。


 手に弁当箱の入った袋を持って部屋から出た私は長い廊下を目的ないまま歩く。もし、彼と会ったら一緒にご飯を食べよう。けど、この大きな施設で彼と会う確率は低い。どっちにしてもこのままフラフラとさまよい歩いても会う確率は低いままだ。

「一度、彼の部屋に行ってみようかな」

 彼の部屋は私の部屋から歩いて十六分程度、結局何もしないまま昼になるのは嫌だからせめて、彼がいればいいな。と思いながら彼の部屋に向い歩き始める。




まだ、本編に入りません…。すいませぬ…!

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