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僕のパーティメンバーのパワーバランスがブッ壊れている件  作者: 雪月風霞
第一章 ブッ壊れパーティ誕生
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第7話 予定調和

「士郎お兄ちゃん、何だかおかしくない?」

不意にロックがそんなことを言ってきた。何らかの違和感を感じているようだ。

「あぁ…確かにおかしい」

そしてその違和感は僕も感じていた。

敵が一人もいない。見回りの敵すらもいないのだ。これはあまりに不自然だ。あんな脅迫状じみた物を置いてきたのだから僕達がすぐに来るのは分かっている筈。なのに何処を見ても、何処に向かっても人っ子一人いやしない。

「士郎お兄ちゃん…何だか不気味だよ…」

ロックは少し不安なのか、僕の手を強く握ってきた。

「大丈夫だ。何かあったら僕が守るから」

そんなロックを少しでも安心させたくて僕は手を握り返した。その時だった。

ドゴォォッ!!

突然上から爆発音がした。かなり大きい。建物が震える程だった。

「!?すぐ上だよお兄ちゃん!!」

「嫌な予感がする!!急ぐぞロック!!」

階段を駆け上がり音のした方へ向かう。




「ここだね…」

「ああ…ここだな…」

音のした部屋の扉の前まで全速力で来た。

「開けるぞ…ロックは僕の後ろに隠れて」

「うん…分かった…」

ドアノブを握りできる限り音が出ないように少しだけ開け、中を覗いてみると…

「ほらほらぁ!!この私を倒すんでしょ!?もっと気合い入れて来なさいよぉ!!」

誘拐された二人の内の一人、普段はやる気が無いくせに一度スイッチが入ると戦闘バカになる方、要するにフレイがいつも通り暴れまわっていた。

「このっ!!調子に乗ってんじゃねぇぞこのアマぁ!!」

生き残っていた敵がフレイに殴りかかる。まずい!!止めろ敵さん!!不用意にそいつに殴りかかったら…

「雑魚がっ!!」

相手の攻撃を捌いて投げる、古武術の技。確か当て身投げだったか…

「うわぁぁっ!!」

憐れ、敵さんはフレイに投げられ気絶した。

「やれやれ…こんなに骨の無い奴らとは思わなかったわ…氷華のマーシャルアーツの方がよっぽど強いわよ。一から出直しなさい」

敵に説教垂れてやがる…

「ん…あぁ士郎。やっときたの。遅かったわね」

「遅かったわね、じゃねぇよてめぇ!!僕達がどれだけ心配したか分かってんのか!?」

こちとら疲労の溜まった体を引きずってここまで来たんだぞ!!なのにこれじゃ無駄足じゃねぇかよ!!

「いやぁ~、油断したわ。まさかケーキに睡眠薬混ぜられるとは思わなかったわ。お陰で氷華共々簡単にお持ち帰りされちゃった♪」

フレイは自分の頭をコツンと叩きながら「テヘッ☆」といった感じで舌を出した。やべぇ…ぶっ飛ばしてぇ…

「ん?じゃあその氷華は今何処にいるんだ?」

「んー?私も分からない。私が目覚めたときにはもういなかったから他のところで敵を潰してるんじゃない?」

うおっ、やっぱりか…早く氷華を探さないと敵さんの危険が危ない!!…あれ?何で僕は敵の心配をしてるんだ?

「じゃあ僕達は氷華を探してくる。フレイはどうする?」

答えは分かっているが一応聞いてみた。

「当然私はこの軟弱者達を鍛え直すわ。ロリコンは大人しく幼女と一緒に人探しでもしてなさい」

あ、やっぱりっすか。この戦闘バカは相手があまりに弱すぎると一から鍛え直そうとする。お前は餓狼伝〇の〇ムさんか。つか、僕はロリコンじゃねぇよ何度言えば分かるんだ…

「分かった。じゃあごゆっくり…」

ロックを連れて大人しく部屋から出る。途中男性の悲鳴が聞こえた気がするが気のせいだろう。無視して氷華を探しに向かう。




「あとは探してない部屋はここだけだけど…」

僕達の目の前にある部屋はどうやら拷問部屋らしい。まさかこんなところにはいないだろうが他の部屋にいないので必然的にここしかないわけで。となるともう嫌な予感しかしない。

「いいかロック、僕が良いと言うまで扉の前にいてくれよ」

「?分かった」

僕の意味不明なお願いもロックは聞いてくれた。よし…行くか。僕は扉を開け中に入った。そこには…

「フフッ…どうしたの?鳴き声が聞こえなくなってきたわねぇ?もっと情けない鳴き声を聞かせなさいよこの雌豚が!!」

…案の定いた。しかも鞭を持ってシスターさんの様な人をいたぶってやがる…あの顔、あの口調…間違いない…氷華が〝氷の女帝〟に戻っちまった!!早くシスターさんを助けないと…と思ったが…

「はひぃっ!!私は豚です!!いやらしい雌豚です!!人に貶されて興奮するような変態豚です!!どうかこんなどうしようもない私をもっと罵ってくださいぃっ!!」

…うん、やられてる方もやられてる方だった。

「あぁ…この感覚…忘れかけてたけどやっぱり良いわねぇ…♪フフフフフ…ふ?」

お、やっと此方に気づいたな。

「…どうした?続けろよ」

「ごめんなさい今すぐ止めます」

素直に止めてくれた。

「それでよい。お前は部屋の外にいるロックと上で暴れてるフレイと一緒に宿に戻ってろ」

「え、でもそしたらその雌豚は…」

「いいからとっとと行け」

「ワカリマシタ」

よし、聞き分けが良くて宜しい。氷華が部屋から出る直前此方を滅茶苦茶恨みがましく見ていたような気がするが気のせいだろう。




「大丈夫ですか?」

一人残った僕はボロボロのシスターさんに声を掛けた。

「はい、私は大丈夫です」

良かった、一応無事らしい。

「貴女はどうしてこんなところに?てか、貴女の名前は?」

「私の名はイースです。ここにいた理由はですね…」

そこまで言うと何故かわざわざ僕の耳元で理由を話してくれた。纏めるとこうだ。

ここを根城にしていたあいつらに虐められる為にずっとここにいたらしい。

「はぁ!?あんた馬鹿じゃないの!?何だよその理由ふざけてるのか!?」

このシスター頭おかしい…

「はぁ…はぁ…もっと罵っても良いんですよ…?」

もう駄目だよこの人…完全に手遅れだよ…

でも…だからと言ってここに置きっぱなしじゃ危険だ。仕方あるまい…

「えーっと…とりあえず僕と一緒に来てくださいよ。ここから出ましょう」

「お断りします。私はまだ虐められ足りません」

こいつ…!!いや待てよ…?ならば…

「そうですか…残念です。僕と一緒に来ればいつでも氷華に虐められる事が出来るのに…」

「是非ご一緒させてください」

イースは急に立ち上がり部屋を出ていった。これが…ドM根性か…




「えー…というわけで、新しくイースさんが仲間になりました。皆さん仲良くしてくだ…いや、やっぱ虐めて差し上げろ」

イースと一緒に宿に帰還すると既に皆が帰ってきていたので軽く紹介した。イースが今までずっと拷問部屋でセルフ放置プレイしていたことや氷華が〝氷の女帝〟化していたこと、更には今この瞬間氷華の眼がヤバいことになっていることは言わないでおいた。

ちなみに後で聞いた話だが、イースの固有スキルは〝全補助魔法・全状態異常魔法使用可能〟と〝状態異常『不死』魔法発動可能〟らしい。前者は分かるが後者が分からなかったので詳しく聞いたらかなり玄人好みな性能だった。

状態異常『不死』とはその名の通り、一時的に死ななくなる状態異常らしい。〇Qのザ〇キやポケ〇ンの一撃必殺技等を食らっても絶対に生き延びることが出来る。これだけ聞けばかなりチート性能である。こんなのバステじゃない。

だが怖いのはここから。『不死』状態になると披ダメが5倍になる。死ななくなる代わりに死にたくても死ねないほどの痛みに耐えなくてはならなくなるというこのバステは、しかしイース自身はかなり使いこなしていた。主に自分自身に。流石ドM…

とにかく、これでバフ・デバフ要員が入ってきた。これは素直に嬉しい。これで後は回復役か…見つかればいいな。フレイに早速弄られて悦んでいるイースを見ながら今日は眠った。夕食?知るかそんなもん。あいつら勝手に作って食べるだろうよ多分。

「そうそう、明日にはこの街出るから、荷造りしとけよ」

僕の声は、しかし皆に届くことは無かった。




次の日の朝早く、朝食を作ろうとしたら既に誰かが作っている。

「あ、おはようございます士郎さん」

「うん、おはようイースさん。早起きなんですね」

「まぁ…これでもシスターやってますから」

頬を掻きながら照れ臭そうに笑っている。普通にしていれば可愛いのに…どうでもいい事だが、イースさんは今年で19だそうだ。何気に初の歳上系だが…何故だろう…甘えたくない…

「士郎さんこそ、今まではこんなに早く起きていたんですか?」

「うん、僕が調理係だったからね」

「そうでしたか…すみません仕事を奪っちゃって…」

「いや、大丈夫だよ。むしろ今後も手伝いを頼みたいくらいだ」

「はい、私なんかでよければいつでもどこでも雑巾のように使いボロ雑巾のように捨ててってください」

「そんなことは絶対にしないけど…その覚悟は上等だよイースさん。これからもお願いします」

「此方こそ、不束者ですが宜しくお願いします」

僕達は握手をした。

誤字・脱字などありましたらご指摘下さい。

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