表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王王子と星銃銃士の王国復興《リ・ジェネシス》  作者: 斉藤・賢生
王子と銃士の出会い
4/23

監視任務

公国・神威の「魔法協会公国支部」。

そのとある執務室に光一郎は呼び出されていた。

目の前には執務用の机とその奥に立つ男の姿がある。

「光一郎くん、魔導大戦とは何ですか?」

その問いに光一郎は不機嫌そうな表情を隠すことなく言う。

「進治さん……なめてんのか?そんなのガキでも知ってる常識だぞ?」

その返答に、

黒い髪にまるで角のような白い二本のメッシュをつけた真珠色の瞳をした年若い男―、

式島しきしま進治しんじが申し訳なさそうに、しかし悪びれずに答える。

「あぁ…!これは失礼しました!…ですが、これも必要なことですのでどうかちゃんと答えて下さい♪」

ちなみに、

この二人は上司と部下の関係にある。

上司である進治が敬語で話し、

部下である光一郎がため口なのは、

単にそれぞれの性格の問題だ。

しかし、上司と部下である以上。

どれだけ馬鹿馬鹿ばかばかしいと思っていても、

命令には従わなければいけない、

光一郎は「しかたねぇな…」と前置きし、

「魔導大戦とは……。

神王暦582年に世界の三分の一を支配していたヘイルスウィーズ王国の悪政に反発した連合国軍との間に起こった戦争のことを指す。この戦争は十年後の神王暦592年5月22日に連合国軍の天道・桃花がヘイルスウィーズ王国の国王ジーク・フリート・ヘイルスウィーズを討伐したことにより終戦を向かえた―。

これでいいか?」

長い説明を終えた光一郎が聞くと進治は満足そうな笑顔で言った。

「ええ、間違いのないいい説明でした。歴史書を丸パクリしたみたいな言い方でしたけどね」

「あぁ?なんだよ、悪いのか?」

「いえ♪いえ♪そんなことないですよー♪あ、ちなみにその約2ヶ月後に我々の働いているこの「魔法協会」が組織されたんですよ?」

「知ってる!…で?結局俺を呼び出したのは何故だ?まさか、今さら俺に世界史の授業をしようってんじゃねぇだろうなぁ?」

「ええ、もちろん違います。……今からするのは新しい“任務”についての話です」

途端に進治の雰囲気が鋭いものに変わる。

その雰囲気を感じとり光一郎も気を引き締める。

「進治さん…それは“制圧部隊の隊長”として正式な命令ってことか?」

「えぇ、無論そうですよ光一郎くん―いえ“副隊長”」

そんな風に、

魔法協会「魔導制圧部隊」の“隊長・式島進治”と”副隊長・天道光一郎”は任務の話を進める。

「光一郎くん。質問ばかりで申し訳ありませんが滅亡したヘイルスウィーズ王国についてはどのくらいのことを知っていますか?」

「…え?」

進治からの問いに光一郎は思わず疑問の声をあげる。

「…どのくらいって言ってもな…一般的なことだけだぞ?―王族を中心とした絶対王政の政治を行い、500年もの間にわたり悪政を敷き自国の民と隣国を苦しめた歴代国王は「魔王」と呼ばれそれが転じて「魔王国」とも呼ばれていた…」

と光一郎は「魔王国」について知っていることを話した。

「ふむ…まぁそれだけ知っていれば十分でしょう」

「十分…?どういう意味だ?」

「もちろん、この任務を遂行する上で必要な「魔王国の知識」として十分という意味です」

……なるほどな、つまり今回の任務は魔王国に関係してるってことか…

その光一郎の推測が当たっていたのか、

進治が魔王国の―任務の話しを続ける。

「では、光一郎くん『ヘイルスウィーズ王家』に関してはどのくらい知っていますか?」

「…それも一般常識程度しか知らねぇよ。先祖代々魔法の扱いに長けた血筋で、大戦が終結した際にほとんどの王族が処刑されたってことと…あとは先代魔王ジーク・フリート・ヘイルスウィーズの名前ぐらい―」

そこまで言ったところで進治が光一郎の言葉を遮るように新たな言葉をつむぐ。

「そう、そのジーク・フリート・ヘイルスウィーズが問題なのです。」

「どういうことだ?」

死んだ人間が問題だという進治の言葉の意味が分からず光一郎は質問を投げ掛けた。

「説明します。まず最初にジーク・フリート・ヘイルスウィーズには妻も子供もいないということになっています。これは知っていますか?」

「あぁ、まぁな」

「ですが、それは嘘です」

「はぁ?」

先代魔王にして最後の魔王ジーク・フリート・ヘイルスウィーズには妻も子供もいない。

それはそれこそ子供でも知ってそうな一般常識だ。

しかし、目の前にいる進治は、

その一般常識が嘘だと語る。

「詳細は私にも分かりません。ですが妻はともかくとして―少なくとも子供は確実にいます」

「変なことを聞くが…生きてるんだろうな?」

かつて魔王国が滅亡した際。

その悪政の元凶は、全て王族にあるとされた。

故にヘイルスウィーズ王家の人間は一人の例外もなく処刑された。

ならばいるはずがないと思っていた先代魔王の子供も、

当然処刑されているはずだった。

そう光一郎は思い、それゆえの質問だった。

進治にもその真意が伝わったのか「あぁ」と納得して、

「えぇ、もちろん生きています。それどころか今は学生として生活しています」

「…続けてくれ…」

ここまで常識を否定された光一郎は、

もはや淡々と進治の話しを聞こうと心に決めた。

「大戦が終結した直後まだ幼いその“子供たちは”公国・神威によって各国から―聖王国にさえ秘密裏にし保護されました」

「ちょ!ちょっと待ってくれ!」

“淡々と聞こう”そう心に決めたにもかかわらず、

光一郎は意見の声を挙げた。

しかし、どうしても聞き捨てることの出来ない言葉があった

「『聖王国にさえ』秘密裏にした?何故だ!?」

光一郎と進治の出身の国は公国・神威だ。

しかし公国・神威は、魔王国が滅亡した現在いま

世界の四分の一を統治する大国「神聖アルヴァレン王国」―別名「聖王国」の傘下の同盟国だった。

つまり公国・神威が秘密裏に敵国の王族をかくまっているということは聖王国への反逆にもなりかねない。

そんな光一郎の考えに、しかし進治はあくまで淡々と

「その理由は私にもよく分かりません。ただ分かるのは今、この子供が公国・神威や聖王国ひいては魔法協会にとって危険な存在かもしれないということです」

「……詳しく教えてくれ」

進治が険しい表情作ったので光一郎も改めて気を引き締める。

すると進治が執務用の机に置いてあった、数枚の書類を渡してくる。

そこには光一郎と同じくらいの少年の人相書きとその少年に関してのことであろう、いくつかの報告が記載されていた。

「彼の名前はレイド・スラッシュ・ヘイルスウィーズ。魔王国の元第一王子であり、現在は南座学園に三年生として在籍しています」

……なるほど、それは確かに危険かもしれない…

南座学園は公国・神威の魔導学園。

魔導学園とは大戦終結後に各国で造られた魔導士を育成するための機関だ。

そしてその学園に在籍しているということはすなわち魔導士になることを目指していることを表す。

「ヘイルスウィーズ王家は代々、優秀な魔導士として有名です。彼の魔王は一説には軍隊と同等の力を持っていたと言われています…。もし彼…レイド・スラッシュ・ヘイルスウィーズにそれほどの力があった場合は彼が何らかの脅威になるかもしれません」

「あぁ、理解した…」

「それでは、任務についてですが―」

「いや、なんとなく分かった。…暗殺任務か?」

光一郎は暗い気持ちで進治に問うた。

光一郎は職業柄17歳という若さでありながら、

人の死には何度か立ち会っていた。

しかし、光一郎自身がその行為に及んだことは、

一度もなくまた―、

おこないたいとも思っていなかった。

だが次の進治の言葉に光一郎の暗い気持ちは晴れた。

「いえ光一郎くん、今回の任務は暗殺任務ではなくあくまでも“監視任務”です」

「監視任務?」

「えぇ、確かにレイド・スラッシュ・ヘイルスウィーズが危険な存在であると確定すれば最悪、抹殺する事になるかもしれませんが。まずはそれを見極めなければいけません」

「そうか―、分かった。で?俺は何をすればいいんだ?」

暗殺任務ではないということが分かり気持ちが晴れた。

しかしそれもつか―。

次なる進治の言葉に光一郎は凄まじい衝撃を受けた。


「光一郎くん。君には一年間南座学園に生徒として学園に潜入してもらいます」


「な―、んだと!?」

光一郎は激しく動揺していた。

何故なら光一郎は17歳でありながら学校というものに行ったことがなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ