支配
なんの取り柄も無いお兄ちゃん。
容姿がいいわけでもなく、何か特技があるわけでもない。
ただの資源の無駄でしか無いお兄ちゃん。
ほんとに生きている意味が無いお兄ちゃんだけど……
大丈夫だよ。
私だけはお兄ちゃんの味方だから。
私だけはお兄ちゃんを愛してあげるから。
誰にも愛されなくてもいいんだよ。私が居るんだから……ねぇ、お兄ちゃん?
「お、おい。どういう事なんだこれは?」
鎖に繋がれているお兄ちゃんが、怒りを露わにしつつ質問をしてくる。
「どういう事って、お兄ちゃんも自分で理解出来てるんでしょ?」
「いや、全然意味が分からねぇよ!」
「同じクラスの岸川さん」
「岸川さんが何なんだよ?」
「最近……随分と仲が良いみたいだね」
「それが何の関係があるんだ?」
「関係って……」
お兄ちゃんは格好良くも無いし、特別何か凄いものがあるわけでもない。
そんなダメダメなお兄ちゃんが女の子と仲良くしてるなんて許せないよ。
いや、そもそも私意外の女とは話をする事自体も間違ってるよ。
お兄ちゃんは私だけを見てればいいの。
私と会話をして、
私と寝食を共にして、
私とずっと一緒に居ればいいんだよ。
だから――
「お兄ちゃんに自由なんて必要ないんだよ。ずっと部屋に居て、私と永遠に過ごせばいいんだよ」
私のためだけに生きて、私のためだけに死ねばいい。
だってお兄ちゃんには、それしか存在価値が無いんだから。
死ぬまで私に尽くしてくれればいいんだよ。
そうすれば、私はお兄ちゃんに愛という形で応える事が出来る。
一生愛し続けてあげる。
「お兄ちゃんもそれを望んでるよね?」
だって誰にもモテないし、特筆すべき物も無い。
そんなお兄ちゃんだから、私に愛されたいって思っているよね。
「まぁ、お兄ちゃんが拒んでももう遅いんだけどね」
だって、お兄ちゃんを鎖に繋ぐ事に成功してるんだから。
だからお兄ちゃんは逃げる事は出来ない。
その時点でもう全てが終わってるの。
お兄ちゃんの意志なんて必要ない。
仮に抵抗の意思があっても、じっくりと矯正していくから問題は無い。
身も心も私が支配してあげる。
だから大丈夫だよ。お兄ちゃん。
ねぇ、お兄ちゃん――
「大好きだよ」