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第一章 一話 出会い



これは私がまだ幼い頃、彼女と出会った話しである


「シャーロット、今日、和国から国王夫妻とその御息女がいらっしゃるから準備しておいで」


母の声に、私は小さく頷いた。

自室に戻り、剣の稽古着を脱ぎドレスに着替える。動きづらいし好きじゃないけど、今日は仕方ない。


大広間に入ると、すでに和国の方々が揃っていた。


「こんにちは、私はシャーロット・グレイシアと申します。和国の方々、遠路遥々よくお越しくださいました。」


少し背筋を伸ばしてそう言うと、目の前に立っていた男性がにこやかに笑った。


「こんにちは、私は東雲清流と申します。そして、こっちが妻の桜と娘の風花です。仲良くしてくれると嬉しいよ」

人当たりのいい声だった。

この人が、和国の王様。思っていたより、ずっと優しそう。


そのとき、母が私の耳元で囁いた。


「シャーロット、風花ちゃんが部屋の外に行っちゃったみたいなの様子見てきてくれる?」


「はい、母上」


式典を勝手に抜け出すなんて、何考えているんだろう。

そう思いながら廊下に出ると、風花は建物の壁に手を当てたり、紙に何かを書き留めたりしていた。


「こんにちは。風花さん、だよね?」

声をかけると、風花さんは少し驚いたように振り向いた。


「急に出て行っちゃったから、様子を見に来たの」


ふと、近くでよく見ると、整った顔立ちをしている。

人形みたいだと思った


「ご、ごめんなさい。私の国と建物の造りや材質とかが違って……気になってしまって……」


言い終わるころには、風花さんは少し俯いていた。


…怒っていると思われたかもしれない。

胸の中が、少し慌てて、とっさに言葉がでた。


「よかったら……城を案内しようか?」


そう言うと、風花さんは俯いていた顔をあげて嬉しそうに目をパッと開いた。


「いいんですか!ぜひ、お願いします!」


私はほっと息をついた。


「どこか見たいところはある?」


「訓練場見てみたいです!」


訓練場?少し意外に思ったけれど、私はうなずいた。


「わかった。ついてきて」


手を差し出す。

けれど風花さんは、私の手を握ろうとせず、視線を落としたまま動かなかった。


「どうしたの?」


そっと手を取ると、指先が硬いことに気づく。

私と、同じだ。


……この硬さ。

剣の稽古をしている人の手だ。


「もしかして、風花さんも剣を習ってるの?」


風花さんはしばらく黙っていたけれど小さくうなずいた。


「なんで隠すの?別に変なことじゃないのに」


その瞬間、風花さんは顔をあげた。

強い光を宿した目は私をまっすぐに睨みつけた。


「……貴女が西洋人だからです。」


胸が、キュッと縮む。


「どうせ私達のこと、野蛮だって。内心馬鹿にしているんでしょう」


やっぱり、そういうことなのね。


でも……胸の奥が少しだけチクリとした。


こうするしかないと思った私はとっさに自分の手を風花さんの前に差し出した。


「手、見て」

硬くなった場所を、わざと見せる。


「これ、剣の稽古の跡よ。私も、同じ」


私は、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「私は……風花さんとちゃんと話がしたいだけ」


風花さんは、まだ警戒を解いていない表情で言った。


「……良い人そうだとは思いました。でも……まだ信用しきれません」


それはそうよね……


けど……仲良くなりたい!


「別にすぐ信用してくれるなんて思ってないわ。」

私は背筋を伸ばした。

「でも、裏切ったり馬鹿にしたり嘘はつかない。約束する。」


風花さんは、考え込むようにうつむいてしまったのでどうにか話題をかえようと話しかける。


「そう言えば、訓練場を見学したいんだよね……ついてきて」


風花さんと2人きりの道中は重い沈黙で押しつぶされそうだった。


「ふ、風花さん……聞きたかったんだけどなんで訓練場が見たいの?理由を聞きたくて……」


「私は西洋が初めてなので……西洋の兵隊さん見てみようかなと……」


よかった……。

返事をしてくれただけで、深い沈黙も少しだけ軽くになった気がした。


「風花さん、もう少しで城の訓練場よ。」

 

訓練場からは、兵達の掛け声と、金属が打ち合わされる乾いた音が響いていた。


「どう?私の国の兵達は」


そう声をかけると、風花さんは一歩前に出て、目を輝かせながら辺りを見回した。


「……すごい」


鎧に、剣に、隊列を組んで動く兵達。

風花さんの視線は、忙しなく行き来している。


「刀の形状それに……この甲冑は和国の物と全然形が違う……全身をくまなく覆ってて動きづらそうなのに、動きが鈍くならないなんて……」


その声は、さっきまでの警戒を忘れたみたいに弾んでいた。


「すごい……この甲冑……ちゃんと関節も動くようになってるんだ……」


私は少しだけ自慢げに胸を張った。


「どう?すごいでしょ」


そのとき風花さんは、ふっと動きを止めた。


「……でも」


一瞬、空気が張り詰める。


「もし倒れたりしたら、簡単に起き上がれないくらい重い……しかもこんなに金属を大量に使っていて精巧な作りのこの甲冑を大量生産なんてできるわけがない……武装としては優秀だけど……」


その言葉に私は少しだけ眉をひそめた。


「それは……確かに、そうかもしれないけど」


否定したい気持ちと納得してしまう気持ちが胸の中でぶつかる。


風花さんは、私の反応を確かめるように、ちらりとこちらを見た。


……試されてる。


そう思った私は、ゆっくりと息を吸った。


「でもね」


私は、剣を振る兵士達を指さす。


「この装備で、あれだけ動けるまで訓練するの。なんでか分かる?」


私の問いに風花さんは戸惑ったように首を横に振る。


「私の国、グレイシアは国土のほとんどが山岳地で平地は少なく、しかも凍えるような寒さ……はっきり言って兵隊や武器をたくさん用意できる和国のように豊かな国ではないから……」


風花さんは私の言葉に顔を伏せる。


「だからできるだけ質を高めるために大量生産できないようなこの鎧を使っているの……」


風花さんは黙っていた。

その沈黙が、やけに長く感じる。


やがて、彼女は小さく息を吐いた。


「……なるほど」


その一言だけで、胸の奥が少し軽くなった。


すると、風花さんは地面に置かれた盾の前にしゃがみ込み、指で縁をなぞった。


「これ何?」


「え?盾だけど……ほらあの兵みたいに腕に装備して剣を防ぐの」


「これ……和国では、持つ物はないよ……置く物が一般的で盾で壁を作り、盾と盾の隙間から槍を突きだして敵の突撃を防いだり鉄砲や弓矢から身を守るために使うの」


「え?持たないの?」


思わず声が出る。


「うん。だから、この西洋の盾は盾と言うとより……ただの板としか思えないかな……」


その一言が面白くて、私は小さく笑ってしまった。


「名前や身を守ると言うようとは同じなのに、使い方が全然違うのね。」


そう言いながら、私も隣にしゃがみ込む。


風花さんは一瞬、驚いたように私を見たけれど、すぐに視線を戻した。


少しの沈黙。


風花さんの指が、盾の縁をなぞる。


「……ねえ」


小さな声だった。


「和国の装備や戦い方の話、聞きたい?」


その言葉に胸がふっとなる。


「聞きたい」


即答すると、風花さんはほんの少しだけ、口元を緩めた。


「……いいよ」


その言葉は、訓練場の喧騒の中で、確かにはっきりと聞こえた。


初めての作品でまだまだ不慣れで読みづらかったりするかもしれませんので分からない点や誤字脱字などはコメントのほうに書いてくださると嬉しいです。

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