幼なじみが何故かvtuberを布教してくるんだけど
大みそかの話。
「事前参りって言うんだっけ、こういうの」
「(コクッ)」
?
幼なじみが全く喋らない。
元々無口で、僕と2人きりのときにしか声を出さないんだけど。
でも、「うん」「違うよ」くらいは言うのに。
外、神社だけどさ。
『元日は不味いから大みそかにお参りしよう』
今朝、メッセージが入った。理由は教えてくれなかった。
何が不味いのかな、分かんない。
「やっぱり、人は少ないね」
「(コクッ)」
「御朱印はどうする?」
「(フルフル)」
「じゃ、鳥居くぐってお参りしようか」
「(コクッ)」
クイッ、と僕の袖を引っ張ってくる。
このポーズで歩くのだろう。
なんだか、デートみたいな。
いやいや、この幼なじみに、そんな感情を抱いてはいけない。それに、この子にも迷惑だろう。
小さい頃から、今の高2までの関係。
去年くらいから、様子が変だし、ある女性vtuberを推してくるけど、色々あるのだろう。分かんない。
「小銭あげようか?」
賽銭箱の前、僕は聞く。
「いくらがいい?」
「(フルフル)」
「そっか」
大みそかの昼間。
皆は、やっぱり元日、つまり明日に行くのだろう。
明日は来年、西暦が変わる。そう思うと、ワクワクしてくる。2025年じゃなくなる、明日から。
ワクワクしながらお参りしたいのだろう、大みそかの昼間、参拝客は少ない。がらん、としている。
新型コロナが現れ、事前に参拝するってのも出てきたけど、まあ、ここは田舎だし。都会かな、そういうのは。
5円。
いや、
「10円、かな」
賽銭箱に10円玉を1枚入れ、パンパン、と手を叩いた後、手を合わせ、おがむ。作法はよく分からない。
僕は、高2です。
自分はどうでもいいので、隣の―。
目を開け、隣を見る。
「ねえ」
おっ、やっと声を出した。
「なに、祈ったの」
こういうのって言ってもいいんだっけ。
「教えて」
うーん。
じゃ、教えるか。
「君が元気でいますように。
来年は、3年生だから。
大学に行くか、就職するか、僕には分からない。でも、とにかく健康で、幸せでいますように」
笑顔で教える。
僕のことだったら、5円でいいけど、この子の幸せを願ったから。
「…そ」
?
なんか、顔が赤くなったような。
「ねえ」
「うん? 何?」
「今日、配信するから、みてね」
「ああ、例のvtuberだね。プレミアム会員じゃないから、バックグラウンドだっけ、できないんだよね。なるべく頑張るよ」
「感想教えて」
「好きだよね、そのvtuber」
じっ、と見てくる。
何か、言いたげな。
「なに?」
「なんでもないっ」
そして、再び袖を引っ張り、無言モード。
なんか、力が少し強いような。
「屋台見ようか」
「(フルフル)」
「帰る?」
「(コクッ)」
「はあい」
まあ、好きにしたらいいよ。好きなよう生きたら。僕はできる限り支えるから。幼なじみだし。
ありがとうございました!
『vtuberの正体がばれている』てのは知ってるけど『ヒロインがvtuberであることに気付いていない』てのは知らないので書きました。
鈍感主人公って、いいですよね。今では絶滅危惧種かもしれませんが。
…尊い関係(*´∀`*)




