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 しばらく経って、明るい満月が見える夜になった。

 今日はスーパームーンだと、父が母に言っていたのが、今朝、部屋にいたときに聞こえた。

 部屋の窓を開けっぱなしにして家を出ていってしまった華は、シニガミサマに部屋の窓まで送り届けてもらった。


「さて、ここまで送ってくれてありがとう、死神様」


 部屋の窓から室内に入った華は、振り返って死神様にお礼を言った。


「別にいいよ。今日はもうほとんどやることないし」


 死神様はそっぽ向いてそういった。

 なんだか、初めの頃に戻ったようで、懐かしい。とはいっても、ほんの二、三日前のことだけれど。


「なんか今日、優しくない…?」

「ちょっとそれどういう意味?まるで僕がいつも優しくないような言い方をしないで欲しいんだけど」


 あー悲しい。といって泣き真似をする死神様。

 華は何も気がついていないふりをしながら、思っていることを率直にいった。


「だって、普段のあなただったら多分、見返りを求めてきそうだもの」


 華は笑顔で言った。

 死神様は黙ってしまった。どうやら当たりだったようだ。


「でもまさか、あなたがあの作戦に同意してくれるなんて、思いもしなかったわ」

「あぁ、さっきの?」

「えぇ」


 今日起こったことは全て、私の作戦なのだ。成功するかは死神様が協力してくれるかにかかっていたのだけれど、成功してよかったわ。

 作戦とは、昨日からずっと行動していたのだ。

 まず、昨日の夜、父と母の声を録音する。そして、その日の夜、死神様がくることはなんとなくわかっていたから、協力してくれないかと頼む。そして後日、何かされる日は前日に呼び出されるので、死神様にスマホを渡して上空から色々されているところを撮ってもらって、警察を呼んでもらう。それから私は死んだふりをして待つ。その間に死神様に時間を稼いでもらう。

 ここまでやってくれるなんて思ってもなかったし、死んだふりでここまで騙せるなんて思ってもいなかったけど、成功して本当に良かった。


「ま、ちょっとね」

「何よそれ」


 死神様の曖昧な答えに、華はむっとしてしまう。はぐらかされてしまったようで、なんだか私としても気に食わない。


「さて、お父さんとお母さんもいなくなっちゃったし、これからどうしようかしら」


 昨日録音したものを警察に提出して、そのままあれよあれよという間に父と母は逮捕されてしまった。

 やっと自由に慣れたような気がして、とても嬉しい。今の私ならなんでもできそうだ。

 死神様の方を見ると、とても驚いたような表情をしていた。



「君、まだ生きれると思ってるの?」



「え?」


 その言葉に、華は何も言葉が出てこなかった。



「ふーん、どうやら本当にそう思ってたみたいだね」

「ちょっと待って、どういうこと…?」


 女は僕から逃げようと、どんどん後ずさっていく。

 三番は女のその表情を見て、高揚した気分になった。

 そう、これだ。ずっとこの表情が見たかった。


「知ってるかい?死神もまた、君たちが言うお化けっていうものと同類なんだよ」

「…それが一体どうし…」


 女はやっと気がついたようで、床でも窓の外でもないようなところを見つめた。


「幽霊、神様、妖怪…そう言ったものが見える人ってね、大体“霊感”って呼ばれるものがないと見れないんだよ。それ以外の人は、死期が近い人だけ。君は後者だ。おまけに、もっといい情報教えてあげるよ。僕が回収しにきた魂のリストの中に、君の家の住所も入っていたんだよ」


 女は救急箱を踏んで、転んでしまう。そのまま立てなくなったのか、座ったまま後ずさって、壁まで到達してしまった。

 三番は女の心情を考えつつも、どんどん追い込んでいく。


「ちょっと待って、でも、私の家の住所ってなると、お父さんとお母さんも含まれるんじゃないかしら…?」


 女は相当焦っているようで、どうにか生きる時間を伸ばそうとしている。


「年齢だよ。君には双子の兄弟とか、同い年の兄弟、いとこがいなさそうだったから、君しかいないだろ?」


 人間って、本当に馬鹿。馬鹿らしい。

 生きている時間を伸ばしたって、苦痛が続くのはそっちなのに。

 三番は質問に答えながらも、ゆっくりと女の方へと歩いていく。


「僕はね、生きる希望を抱いている人、活気に満ち溢れている人、そう言った人たちのことを死へ誘うのが大好きなんだ。死にかけとか、今にも死にそうな顔をしている、そんな人たちの魂を回収するのは、なんか嫌だ」

「だから…だから私のことを助けてくれたの?」


 女は裏切り者でも見るような、軽蔑の目で三番のことを見つめた。


「まぁ、それもあるのかな」


 この女を助けた理由が、本当にわからない。どうしてあんなことをしたのか、今でもわかっていない。

 そんなことは、今はどうだっていいか。


「あ、そうだ、せっかくだし、僕の顔も見せてあげるよ」


 三番は笑ってフードをとった。


「ヒッ…」


 そこには顔半分の皮も肉も無くなった、骸骨で、もう半分は先ほどのイケメンの顔があった。


「いいね、その顔。本当に楽しい、最高の気分」


 三番はそう言って、何もないところから、何かの動物の骨が飾られた大鎌を持って笑顔で言い放った。


「それじゃあ、人生お疲れ様。最後にいい笑顔を見せてくれたから、僕が魂を運んであげるよ」


 女は三番から逃げるべく、腰を抜かしながら部屋を出ていった。

 直後、大きな音がした。

 部屋の扉を出てみると、そこには階段を真っ逆さまに転がり落ちたらしい、女の死体が残されていた。



 女の魂を小瓶に入れて、人間界の上空を歩く。

 スーパームーンよりもはるかに明るい人間界は、今日も忙しなく動いている。

 今日で、長い間溜め込んでいた残業も終わった。やっと家に帰ることができる。

 だがその前に、冥府に魂を置いてこないといけない。持っていったら、あとは上の仕事だ。

 三番は顔の半分に触れた。

 骨が剥き出しになっているこの部分は、死神じゃなかったらきっと、精神的にも、あとは社会的にも死んでいたかもしれない。

 三番は気にしないようにしながら、冥府へと戻っていった。

作者です、最後まで読んでくださりありがとうございました。

この話は、実話をもとに作成させていただいたお話しです。妄想の部分もありますが、大体は実話です。

いじめは犯罪です。言葉であろうが暴力だろうがなんだろうが、それは人を簡単に殺します。加害者も被害者も、全部簡単に殺して、壊してしまいます。

何気なく発した言葉でもいじめに発展してしまうことがあります。

親しき仲にも礼儀あり、普段身近にいる人にほど、優しい言葉を使って欲しい。気にかけてやってほしい。明日にはそこにいない可能性だってあるのだから。

最後にもう一度、この作品を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。この話はこれで一度幕を下させていただきます。またどこかで会えることを心待ちにしております。


伊織雨音

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