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3 お題【お父さん】 『バッカじゃないの』

5/16 投稿


「もうパパはほんっとに過保護でぇ、ハタチになっても門限が夕方の6時なんですよ」


「ええっ!! そらウザいなあ。えっ、ほんまに?」


「本当ですよ! いや、だって、まだハタチなんですよ? 何かあったらどうするんですか!」


「そやけど6時はないやろ。部活帰りの中学生だってもうちょい遅いんちゃう?」


「いやいや! こんな可愛い娘に何かあったらどうするんですか!」



 ……バッカじゃないの?


 くだらないバラエティー番組に、ため息を吐く。


 大御所俳優と、その一人娘。

 二世タレントってだけで大して可愛くもないのに……

 と毒づいていたら、芸人がそれと同じことを上手にツッコみ、スタジオにどっと笑いが起こる。


 ふふっ、だよね。

 バカ親もいいとこだよね。


 少しスッキリした気持ちで、テレビを消した。





「うちのお父さん、ほんとに過保護でさ。せっかく免許取ったのに、なかなか運転させてくれないの。こないだなんか、近所のドラッグストアまで行くだけなのに、助手席に乗り込んで来たんだよ」


「心配なんじゃない? 女の子だし」


「心配しすぎだって! 運転にもいちいち口出してくるしウザいよ! あーあ、高速に乗って、自由に遠出してみたいなあ」



 ……バッカじゃないの?


 空いた席を狙う人達でごった返す学食。

 ランチそっちのけで愚痴る友人を無視し、黙々とフォークを口に運ぶ。


 父親が稼いだ金で免許を取らせてもらって、車も貸してもらって、運転だって教えてもらって。


 感謝されるどころかウザがられるなんて。

 こんな娘でも、父親にとっては可愛いのかな。





「ちょっと聞いてよ! うちの父親、土日ずっとリビングから動かないんだけど。そこ通らないとキッチンに行けないし、水も飲めないし。マジ無理」


「うえっ」


「きったないパジャマでゴロゴロしてるし……加齢臭? なんか臭いし。邪魔だからどっか行けっての」



 ……バッカじゃないの?


 夕日が射す満員電車。

 すぐ後ろから聞こえる女子高生達の会話に、思わず舌打ちしそうになる。


 家族の為にあくせく働いて、休みの日にただ休んでいるだけで、何でこんな風に言われなきゃならないんだろう。


 横に立っているおっさんより、このコ達の方がよっぽど化粧臭いのに。


 ……父親って、哀れだなあ。




 ゴーッという爆音と共に、地下に入った電車。

 黒い鏡に映る自分の顔を見て、ふと思う。


 もし、道端でお父さんにバッタリ会ったら。

 お互い父娘おやこだって、すぐに気付くのかな。

 私の顔は、お父さんによく似ているみたいだから。



 ────バッカじゃないの。


 一生会うこともないのに。

 私に会いたくない人に、会うことなんて出来ないのに。



 私はお母さんがいればいい。

 それでいい。



 ……それでいいんだ。



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― 新着の感想 ―
斜に構えてるけど、お父さん好きなツンデレさん。  と見ていたら…………離婚しちゃったのか。 そして付いていくという選択肢は最初から与えられなかった…………。 父よ! キサマの血は何色だあっ!?
空気のように当たり前になっていると、ありがたさもわからなくなるのですよね。失くしてから気がつくこともあるのかな。 主人公ちゃんの最後の言葉が沁みます。 「それでいい」のだと思います。 どこかの空の下で…
バラエティー番組の雛壇トークや学食で耳にした学友の愚痴。 それらにおける男親への辛辣な言説への視点人物の反応が、何とも考えさせられますね。
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