episode4 力 vs 魔術
体が焼けるように熱く、骨の髄まで響く痺れ。
視界は酷く点滅して歯を食いしばって意識を持たないと暗闇に連れていかれそうだ。
「あ…がが…!」
声がまともに出ず、出せたとしても呻き声だけ。
それをラリウッドはゴミを見ているような冷えた瞳で見下ろしていた。
(突然…何するのよ…!)
襲われるのも無理はない。周りから見たら三人のシスターを倒す危ないシスターだと。しかし事情を聞かず私を悪だと決めつけて魔法を放ったことに、腹の底が煮え立った。
「たった一人で、三人も手を出すのは…なんて醜く、可哀想な人間だ。」
ラリウッドはそう言い放つと、倒れ込んだシレネに近づいた。
「立て、お前を"恩寵の聖室"に連れていく。そこでお前の罪を悔い改めろ。」
――恩寵の聖室?
知らない単語が耳を通った。けれど私の全身がこう嘆いてた。
――絶対そこに行くな。そこは…私が私でなくなる…と。
「……やなこった。」
私は痺れて動かない指先に、無理やり力を込めた。
爪が掌に食い込み、血が滲む。その痛みで、麻痺した神経を怒りで無理やり叩き起こす。
「…まだ立つのか、愚か者が。」
ラリウッドは再びシレネに杖を構え、魔術を唱え始めた。
「…足掻くよ、お前の正義に、鉄槌を下す。」
体は既に限界を超えていた。これ以上動けば細胞が崩壊しそうだ。けどそんなことは知らない。怒りの行き場をラリウッドに流し込むつもりで、床を蹴り飛ばした。
「はぁ…殺さない程度に気絶させよう。」
ラリウッドはため息をつき、そう呟いた。
シレネは全ての力を左腕に込めて、ラリウッドに振り下ろした。
しかしだった。
「【雷壁】」
バリバリバリバリッ!!
「あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙!!」
ラリウッドは自分を守るために前方に雷の壁を生成した。
シレネの拳から全身に雷が走り、毛が逆立つほどの感電を喰らった。
「っ…!」
シレネは自分の体を支える力を失い、事切れたかのように倒れた。
「……無駄な抵抗を。」
ラリウッドは信者にシレネを抱えさせると、そのまま信者と共に背中を向けた。その時だった。
……バリッ
「…なんだ?」
背後から音がして振り返ると、先ほど生成した雷壁に、ヒビが入っていた。
ヒビの位置は完全にシレネの拳を受け止めていたところだった。
――あり得ない。
魔術は具現化しているように見えて、物のように扱えない。
炎は熱を持つが、その炎を他者は扱えない。
水は液体のように流れるが、軌道を変えることはできない。
雷も生物に激しい痛みを与え、物のように触れない。
それをシレネは本当に物のようにヒビを作った。
…こいつ、ただの人間ではないな。




