episode3 悪魔
※注意※
本編には過激な暴力描写が含まれます。
苦手な方は閲覧をお控えいただくか、ブラウザバックを推奨します。
また、本作はフィクションであり、暴力行為を助長する意図はありません。
作中の行為を現実で真似することは絶対におやめください。
憎きシスターの鼻を潰した拳は、叫びたくなるほどの激痛と熱を訴えており、指の間から血を垂らしていた。
けれどそれを凌駕するほどの快感に目覚めていた。
目の前であのクソ女は顔を俯いているが床に血を垂らしていて、隣にいるシスターは私を恐ろしい目で見ていた。
その視線が非常に気持ちよかった。
今まで私を見下してた奴が、逆に見下してやってる。そんな優越感が、私の心を満たしていた。
「あぁ…ははは!ねえ、今どんな気持ち?ずっと支配していたと思っていた女が、突然殴りかかってどんな気持ち?ねぇ?」
自分でも驚くほどの饒舌ぶりにさらに心が湧き上がった。
「ちょ…調子に乗るなぁ!」
顔を真っ赤にして手下の女が私に殴りかかってきた。
「っ…!」
殴りかかってくる姿は見えた。しかしさっきまでのダメージで反応が遅れてしまい、顔を背いた瞬間だった。
バコッ、と鈍く重い音と共に頬にめり込んだ。
……痛いなぁ、でも…。
「ごぶっ…がぁ…!」
彼女の腹部を蹴り飛ばした。内臓を靴底で押しつぶす生々しい感覚。彼女はボールのように宙に舞い、壁に激突していった。
……これは昨夜、あなたがやったことなのよ?
人としての道を踏み外した罪悪感?そんなもの、床に崩れ落ちた女の姿を見た瞬間消え失せてしまった。
「けほ…っこほ…っ!あ、あんた…!先輩を殴って…!ただじゃ済まないわよ…!」
彼女の言葉に私は腹の底から笑いが止まらなかった。
「えぇ…ええそうね!もうただじゃ済まないかもねぇ!!」
そんなこと、今更だ。既に堕ちるところまで堕ちたの。
もう人間として良心も、理性も捨てた。
完全に悪になったのに、なんでこんなに心が清らかで、ドキドキが止まらないんだろう。背徳感というやつかな。
「や…やめて!」
一人、シスターが私を見て座りながら恐ろしい表情で後ずさっていた。
「え?やめるわけないでしょ?あなたも私をいじめたでしょ?」
ゆっくりと彼女に近づいた。既に私に対して恐れをなしているようだ。でも今は…1発でも殴らないと気が済まない。
「そ、そうよ!私はあの二人に命令されて仕方なく…!」
…こいつは何を言ってるんだろう。
あんなに楽しそうに私の髪を引っ張って、それを命令された?
「…そう。」
人は、愚かだ。
ガッ!
「あぁあああ゙あ゙っっ!!痛いっ!!」
私は容赦なく髪を掴み、真上に引っ張り上げた。
ブチブチブチッと、頭皮から毛髪が引き裂かれる嫌な音がした。髪の毛って本気で引っ張ったら抜けるんだ。
「痛い痛い痛い!ハゲちゃう!髪ががあぁぁあ!!」
シスターは涙目で私の腕に跡をつけるほど強く握っていたが、やがて腕に赤い血が滲むほど掻きむしってきた。
痛いけど、このくらいの抵抗がちょうどいい。嘘つきにはこのくらい"教育"が必要だ。
その時だった。
バリバリバリバリバリッ!
「ああぁあああ゙あ゙゙あ゙!!!」
突然視界が真っ白に染まったかと思うと、体中に火花が散るような激しい痛みに襲われ、悲鳴を上げたまま体の力が抜けてしまった。
体が…痺れて動かない。
これは…雷…?
床に崩れ落ち、視界の端がチカチカと点滅していた。
「…この悪魔が。」
低く、よく通る声がシレネの耳を打った。
視界だけを動かすと、廊下の中心で一人の男が立っていた。
金糸の刺繍が施された純白の法衣。胸元には、見覚えのある紋章。
「っ…教祖直属幹部、ラリウッド…!」




