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断罪のシレネ〜神を否定した人間の物語〜  作者: 蒼月ケン


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3/5

episode3 悪魔

※注意※

本編には過激な暴力描写が含まれます。

苦手な方は閲覧をお控えいただくか、ブラウザバックを推奨します。

また、本作はフィクションであり、暴力行為を助長する意図はありません。

作中の行為を現実で真似することは絶対におやめください。

 憎きシスターの鼻を潰した拳は、叫びたくなるほどの激痛と熱を訴えており、指の間から血を垂らしていた。

 けれどそれを凌駕するほどの快感に目覚めていた。

目の前であのクソ女は顔を俯いているが床に血を垂らしていて、隣にいるシスターは私を恐ろしい目で見ていた。


 その視線が非常に気持ちよかった。

今まで私を見下してた奴が、逆に見下してやってる。そんな優越感が、私の心を満たしていた。


「あぁ…ははは!ねえ、今どんな気持ち?ずっと支配していたと思っていた女が、突然殴りかかってどんな気持ち?ねぇ?」


自分でも驚くほどの饒舌ぶりにさらに心が湧き上がった。

「ちょ…調子に乗るなぁ!」

顔を真っ赤にして手下の女が私に殴りかかってきた。

「っ…!」

 

 殴りかかってくる姿は見えた。しかしさっきまでのダメージで反応が遅れてしまい、顔を背いた瞬間だった。

バコッ、と鈍く重い音と共に頬にめり込んだ。

 ……痛いなぁ、でも…。

「ごぶっ…がぁ…!」

彼女の腹部を蹴り飛ばした。内臓を靴底で押しつぶす生々しい感覚。彼女はボールのように宙に舞い、壁に激突していった。

……これは昨夜、あなたがやったことなのよ?


人としての道を踏み外した罪悪感?そんなもの、床に崩れ落ちた女の姿を見た瞬間消え失せてしまった。


 「けほ…っこほ…っ!あ、あんた…!先輩を殴って…!ただじゃ済まないわよ…!」

 彼女の言葉に私は腹の底から笑いが止まらなかった。

「えぇ…ええそうね!もうただじゃ済まないかもねぇ!!」

そんなこと、今更だ。既に堕ちるところまで堕ちたの。

もう人間として良心も、理性も捨てた。

完全に悪になったのに、なんでこんなに心が清らかで、ドキドキが止まらないんだろう。背徳感というやつかな。


 「や…やめて!」

一人、シスターが私を見て座りながら恐ろしい表情で後ずさっていた。

「え?やめるわけないでしょ?あなたも私をいじめたでしょ?」

ゆっくりと彼女に近づいた。既に私に対して恐れをなしているようだ。でも今は…1発でも殴らないと気が済まない。

「そ、そうよ!私はあの二人に命令されて仕方なく…!」

…こいつは何を言ってるんだろう。

あんなに楽しそうに私の髪を引っ張って、それを命令された?

「…そう。」

人は、愚かだ。


 ガッ!

「あぁあああ゙あ゙っっ!!痛いっ!!」

私は容赦なく髪を掴み、真上に引っ張り上げた。

ブチブチブチッと、頭皮から毛髪が引き裂かれる嫌な音がした。髪の毛って本気で引っ張ったら抜けるんだ。

「痛い痛い痛い!ハゲちゃう!髪ががあぁぁあ!!」

シスターは涙目で私の腕に跡をつけるほど強く握っていたが、やがて腕に赤い血が滲むほど掻きむしってきた。

痛いけど、このくらいの抵抗がちょうどいい。嘘つきにはこのくらい"教育"が必要だ。


 その時だった。

バリバリバリバリバリッ!

「ああぁあああ゙あ゙゙あ゙!!!」

突然視界が真っ白に染まったかと思うと、体中に火花が散るような激しい痛みに襲われ、悲鳴を上げたまま体の力が抜けてしまった。

体が…痺れて動かない。

これは…雷…?

 

 床に崩れ落ち、視界の端がチカチカと点滅していた。

「…この悪魔が。」

低く、よく通る声がシレネの耳を打った。

視界だけを動かすと、廊下の中心で一人の男が立っていた。

金糸の刺繍が施された純白の法衣。胸元には、見覚えのある紋章。

「っ…教祖直属幹部、ラリウッド…!」

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