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ざまぁ担当の男たちが『アホの子』すぎて自滅ばかりするから、何もしてないのに『最凶の悪役令嬢』にされてるんですけど?  作者: フーラー
第2章 チート級の戦闘力を持つけど、婚約破棄されて国を出る男『アホード』

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2-6 当然皆さん、わかってますよね。アホードが犯したミスに

そして時は、ドワーフの酒場に戻る。



「はじめまして、アンジュ。僕はアホード。明日戦う相手だよ」


そして、彼は一杯のソーダとグラスを二つ用意する。

これは、アホードが未成年だからだ。



「よかったら奢らせてよ? カイカフルさんの家って貧乏なんでしょ?」

「ああ、相変わらずご挨拶だね、このガキは……」



そういいながらカイカフルは悪態をつくが、彼のその言動には慣れっこという感じで、あまり不愉快な表情は見せずに苦笑した。


そしてカイカフルは、彼のほうを見て頭を下げる。



「ところでさ、アホード……。頼みがあるんだ」

「なに?」

「明日の試合なんだけどさ……。思いっきり手加減してくれないか?」

「え?」



アホードは驚いたふりをして見せた。

だが、彼の頭の中ではアンジュのことは『恐ろしく狡猾な悪女』になっているため、その発言に心の中で身構えた。



「実はこの子さ、転移者なんだけど……なぜか全然レベルが上がらないんだ。この数週間みっちり稽古したのに、簡単な魔法も使えないんだよね……」

「へえ……」


そうカイカフルがいうが、アホードはその言葉を信じていない。

通常『どんなに鍛えてもレベルが上がらない』ということは、ありえないからだ。



アンジュもうなだれながら、呟くようにアホードに話しかける。


「そ、そうなんです……。だから、この大陸で最強のアホードさんに全力で来られたら、命がいくつあっても足りないなって、カイカフルさんと相談してたんですよ……」

「そうなんだ……」



そういいながらも、アホードは彼女をそっと値踏みするように見据えた。



「だから……。負けてくれなんていうつもりはありませんけど……せめて、最初の一撃は手心を加えてほしいんです……」

「そうそう。その一撃でKOすりゃ、あんたも名誉が傷つくことはないだろ? 頼むよ、アホード?」



そうカイカフルは頭を下げる。



(! ……アンジュの今の表情……?)



だが、カイカフルが頭を下げた瞬間、アンジュが俯いてニヤリと笑うのをアホードは見逃さなかった。


……まあ彼女が笑みを浮かべたのは単に、



「カイカフルの足元に、ドワーフが飼っている子猫がすり寄っているのを見つけたから」



だったのだが。

だが、それを見たアホードはドキリ、と胸が高鳴る。



(なるほど……。これは僕を油断させるための罠だな……。手加減した初撃をかまそうとしたところで、全力のカウンターを打ち込むつもり、か……?)



また、彼はこうも思った。



(或いは……。魔法を反射したり、吸収したりする戦い方をするのかも……。このゲーム、あえて魔法防御を成長させずに、反射させるダメージを大きくする戦法もあったからね……。或いは、ステータス差を無視できる『幻術』を使ってくる可能性もあるな……)



このゲームは様々な『勝ち筋』があるため、ステータスが低いことが必ずしも不利にはならない。極論、レベルが1だとしても、最強の剣士を倒す勝ち筋はいくつもある。


そのためアホードは警戒心を強め、アンジュに差し出す予定のグラスに、例の薬をそっと忍ばせる。


……幸い、二人は彼の手元には注意を払っていない。



(よし、バレてないな……)



そう思いながらも、薬を入れ終えた彼は答える。



「……そうだね、僕も人殺しはしたくないし……。なら、最初の一撃は軽く行くからさ。それでアンジュさんは倒れてくれたら良いよ」

「おや、思ったより話が分かるじゃないか」



無論、アホードは約束を守るつもりはない。

最初から全力の一撃を叩き込まないと、こちらが危ないとアホードは解釈しているからだ。


勿論致命傷になることだけは避けるつもりだが、少なくとも1カ月は目が覚めないような一撃を初段で打ち込み、試合を終わらせる腹積もりである。


だが、そのことを知らないアンジュはそれを聞いて感激したような表情を見せ、彼に抱き着いた。



「ありがとうございます、アホードさん! 本当にこの世界の男性って、優しいんですね!」

「うっひゃあ!」



彼はノワールにされた時と同様、思わずびくりと体を震わせたのを見て、カイカフルは楽しそうに笑う。



「アハハ! アホード、あんたは相変わらず女の子が苦手なんだねえ!」

「し、しょうがないだろ! 昔っから、どうしてもこういうのが苦手なんだよ、僕は……。と、とにかく……。話はこれで終わりだよね! ほら、ジュースでも飲もう、ね!」



そういって彼はドギマギしながら震える手元をろくに見ずに、彼女にグラスを渡した。



「ええ、ありがとうございます、アホードさん!」

「それじゃ明日の試合が穏便に済むことを祈って! かんぱーい!」



アホードは、緊張を隠すようにそうわざと大きな声を出しながらグラスを掲げ、自分が注いだソーダを一気飲みした。


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