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次の日、いつもの生活のせいでか日が昇る前に目が覚めた。
……昨日の試験で疲れていても、この時間に起きれてしまう私ってすごいわね。
私はベッドから体を起こして、軽くストレッチをする。
不合格だったことをみんなに伝えた時の反応を思い出し、私はまた吹き出してしまう。リックは「そんなの絶対におかしい!!」って大声で怒ってくれて、ナタリーとリチャードもずっと文句を言ってくれていた。そして、あのジョルジが物凄い形相で怒っていた。
もちろん、私に対してじゃなくて、審査員四人に対して。最高のリアクションだったわ。
今すぐ家を飛び出す勢いだったんだもの。
私のためにそれほどみんな怒ってくれるとは思わなかったから、嬉しくなってしまった。
ちゃんと、今日の演習の話も伝えた。だけど、そんなことに耳を持たず、みんな「ルナを落とすなんてどうかしてる」と憤怒していた。
もう一度あの光景を見たいぐらいだわ。
私はそんなことを考えながら、ストレッチを終えて着替える。いつも通りの訓練着。
今回の演習でへまはできない。それに、私は絶対に浮く。白い目で見られることは百も承知だ。強気で行くしかない。
自分で自分のことを鼓舞して、私は部屋を出た。
演習場所として指定された山は最悪だった。
というのも、良い噂を聞いたことがない。「ここに立ち入れば生きて出てこれない」や「悪党の住処」などと呼ばれている。
そしてなによりも私が昔誘拐された場所だ。よりにもよってどうしてこの場所なのかしら……。
神様のイタズラ? なにか試されてる? ……前者だったら、絶対に神に文句を言ってやる。
きっと偶然なんだろうけど、またこの山に来ることになるとは思わなかった。
それにしても、よくここを実践でなくて、演習で使おうと思ったわね……。
「どうして彼女がいるの? 試験に落ちたはずでしょ?」
「なんか慈悲でこの演習にだけ参加できるらしいぜ」
「俺らだったら、絶対にそんなことしてくれないのにな。顔が良いってやっぱり得だよな」
「おい、あそこに不合格者がいるぞ」
「受かったって勘違いしたんじゃねえか?」
「なんでここに来てるんだ?」
ごちゃごちゃうるさいわね。
あちこちから私に対しての視線を感じる。それに、悪口を言っているのもしっかりと聞こえている。
私のことに気を向けていないで、演習に集中したらいいのに……。よそ見していると、足元すくわれるってことをしっかりとその体に教えてあげるわ。




