91
そして、私は最終試験に落ちた。
ここまで来てまさか落ちるとは思わなかった。合格者の名前が呼ばれなかったということはそういうことだろう。
……ちなみに、最終面接で落ちたのは私だけ☆
そんなことってある~~!?
受け答え完璧だったはずなんだけどなぁ……。
皆、私をジロジロと見ながら会場を出ていく。ここまで来て、私だけ落ちたとなると、逆に注目を浴びる。一体こいつは何を言ったんだ、というのが皆の気持ちだろう。
私も「なんかまずいこと言ったっけ?」という気持ちになっている。
一人ぽつんと残されて、私は机に顔を伏せた。
とりあえず状況を整理しないと! と思っているが、実際は絶望に打ちのめされていた。
ジョルジになんて言おう。というか、ウエスト家の皆に合わせる顔がない……。
それに、エドにも。……いや、もう彼なら結果は知っているかもしれない。がっかりさせたかしら……。
割と楽観的な私もこれは結構クる。こんな挫折を経験したことがないから、どう折り合いをつければ良いのか分からない。みんなから失望されることもショックだが、なによりも、私が騎士になれないという事実があまりにも受け入れがたい。
あ~~~~! もう!! どうすればいいのよ~~~!
私が机に額をつけながら、盛大にため息をついていると、ガタッと誰かが目の前に立つ気配を感じた。自分のことに切羽詰まり過ぎて、人がこの部屋に入ってきたことに気付かなかった。
反射的に顔を上げる。
「……エド、様」
私はその名を呼んだ。
忙しいはずのエドが私の前に立っていた。相変わらず格好良くて、彼の周りだけ煌めいている。
二次試験の時に遠い存在だと思っていた人が、今こんなにも近くにいる。……なんだか変な気持ちになる。
手の届かない人が、すぐに手の触れれる場所にいる。
「しょぼくれているな」
「…………まさか落ちるとは思わなかったので」
私はへらっと力のない笑顔を見せる。
眉間に皺を寄せながら、エドは私のことを見ていた。そんな険しい表情をしていても、美形のままだ。
「なんて答えた?」
「え?」
「あいつらに言ってもなにも答えない。……直接聞く方がいいだろうと思ってな」
「なんの話を」
「お前はある質問で落とされた。『騎士として死ぬ覚悟はあるか』に対してなんて答えたんだ?」
「ちゃんと誠心誠意ある答えを」
「なんて答えたんだ?」
エドはゆっくりな口調で強調するかのようにそう聞いた。私は彼の圧に一度口を閉ざした。
その質問だったのね、私が落とされた理由は……。私は心の中で自分の言ったことを振り返る。別に悪いことを言っていない。
「言えないのか?」
エドの言葉に私は小さくため息をつき、口を開いた。




