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私は顔が良いだけ  作者: 大木戸 いずみ


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 身震いするほどの威厳と眩しいほどの美しさに会場は一瞬たじろぐが、すぐに全員が跪く。

 え、どうしてエドがここに?

 王子が入団試験に現れるなんて絶対あり得ないでしょ。私がいるから? ……私の存在は監視しないといけない対象だから?

 私は頭の中でそんなことをぐるぐると考えながら、「顔を上げよ」という言葉でエドの方を見た。

 遠い存在だな、と改めて思う。私の手の届かないところで輝いている。

 王子と一緒にいたあの数日間は私の人生で異様な日だったんだわ。

 王子は長い髪をハーフアップにまとめており、クールな表情を浮かべている。冷血感半端ないけれど、実は優しいのよね。

 …………ん? 今一瞬赤い瞳と目が合った気がする。……気のせい? 

 こんなに人数がいるんだもの、私のことなんて見つけられるはずがないわよね。


「殿下がお前たちの試験の様子を拝見なさる。しっかりと気合を入れて試験に取り組め!」


 大きな男の声が耳にうるさく響く。

 会場は一丸となって「はい!!」と元気よく返答する。私はエドがいたということに驚きが未だに抜けきれず、声を出し忘れた。


「あの人ってアーサー様じゃないか?」

「ほら、王族の……」

「ほんとだ! あのさっき喋ってた人が無敵のガイル団長だろ? ……おっかねえよな」


 小さな声で話し合っている隣にいる貴族であろう者たちの会話が聞こえる。

 私は観客席の方を見た。……あのガイル団長という隣にいる濃い金髪の整った顔をしている男性。あの人が多分アーサーという男だろう。

 嫡子でない王族……。そりゃ、王宮騎士団にいるわよね。魔法を使える騎士、か。


「その隣にいるのは平民枠の団長と副団長だろ?」

「お前あの二人を知らねえのか?」

「平民には疎くてさ」

「バカかよ、お前。あの二人は伝説なんだぜ。ガイル団長と同等、いやそれ以上の実力がある人たちだ。最も前線で活躍している。平民だと思って甘く見るな」


 貴族にも意外と良い奴がいるじゃない。

 私はこの審査員たちを王子以外誰ひとり知らない。平民枠の団長と副団長の方へと目を向ける。

 何も発していないが、彼らの存在感は確かにすごい。慄くような雰囲気を漂わせている。……一人はすごく身長が低い女性だけど。

 女性の方が副団長、よね?

 もう一人の男性は、貴族枠の団長よりかは細身だが、しっかりとした体つきに思えた。背が高く、胸ぐらいまであるであろう髪を団子にして頭の後ろでまとめている。

 修羅をくぐり抜けた顔をしている彼に対して、女性の方は可愛らしい童顔だ。……けど、貫禄はある。


「一人、女じゃねえか」

「馬鹿、お前本当に何にも知らねえんだな。エリザベス団長は女性として初めて団長になった人だ。この男社会であそこまで上りつめるってすげえんだからな」


 ……あ、女性の方が団長だったのね。近くでの解説助かるわ。


「この四人の前でってだけでも心臓が壊れちまうぐらい緊張するのに、それに加えて殿下まで…………、今年はついてないな」

 

 逆に自分の実力を発揮できるからついているんじゃない?

 私はそう言おうと思ったが、全然見知らぬ人なので、心の中にとどめておいた。

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