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「ルナ・グレイディ!」
一次試験通過で私の名が呼ばれた。私はホッと安堵のため息をつく。
……良かった。けど、まだ気を抜いていられないわ。
私はふとさっきコソコソと私の悪口を言っていた人達へと目を向ける。彼女たちの泣き顔が目に入った。
あの泣き方はどう見ても落ちたのよね……?
「ヴァイオレット・グレート!」
あ、もしかして、この名前……、さっきの紫色の髪の子じゃないかしら?
会場で彼女を探した。名を呼ばれた瞬間立ち上がり、もう移動している。私も早く移動しないと!
私は席を立ち、会場を出た。悪口を言っていた女の子たちの前を涼しい顔で通過した。「どうしてこいつが……」という声は聞こえて来たけれど、無視しておこう。
グレートってもう名は体を表しているのね。彼女によく似合っている名だわ。
私は次の実技のことを考え、訓練場まで歩いた。
身体能力、剣術、……これで私が落ちるわけがない。……そうやって自信過剰になるのもよくないわね。けど、自信過剰になれるぐらいに頑張ったのだから大丈夫よ。
私はそう自分に言い聞かせていた。本当は心の底では少し緊張していた。
今まで試験というものを受けたことがなく、今まで通りの動きができるかちょっとだけ心配だった。
訓練場についたが、なんだかざわついている。……しかも、人数がさっきの試験会場にいた人たち全員合格したのかってぐらい多い。
こんなに人が多いのに、ぎゅうぎゅうにならない訓練場って……。どれだけ広いのよ。
私はそんなことを思いながら、訓練場を見渡した。……まるで闘技場だわ。観客席のようなものがある。一番後ろの席に衛兵がまばらに並んでいる。
誰かがもし暴走した時にすぐに見つけられるようになっているし、絶対に捕らえられるようにしているってわけね……。
私が観客席を眺めていると、そこに人が四名現れた。……審査員にしては多くない?
「第二試験をあと五分で始める! すぐに準備しろ!」
一番大きな体格の人が大声で私たちに怒鳴る。
一次試験おめでとう、っていう言葉もないのね……。私たちはみんな急に急いで準備を始める。髪をまとめて、服装チェック。剣は騎士団の方から支給される。
準備運動したり、ストレッチしたり……。
私はじっと審査員たちを観察していた。
ここに貴族枠と平民枠の受験者が集まっているということは、彼らは王宮騎士団の貴族枠と平民枠の団長と騎士団長だろう。
どうしていきなり合同になんかなったのかしら……。
「貴族枠と平民枠の試験を同じ場所で行う! 今回はこちらの方も共に審査に入る!!」
さっきの男の大きな声がもう一度会場に響き渡る。
全員動きを止めて、観客席の方へと目を移す。そこに圧倒的なオーラを放つ者が現れた。
…………エド!?!




