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私は顔が良いだけ  作者: 大木戸 いずみ


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 私はナタリーと話し終えた後、手紙を開けて読みながら屋敷の外へでと出た。

 この景色を見るのは最後かもしれない。……そう思うと、あれだけ朝この光景を見るのが億劫だったのが、少し寂しい気もした。

 神界の頃の方が、毎日の鍛錬は楽だったってすごいわよね? 

 ジョルジ、神を超えたじゃん……。


「おはようございます」


 私は改めてジョルジの異常さに気付き、もう既に庭で立っていたジョルジに挨拶をした。

 選手と指導者は全く別の能力だというが、まさにその通りだった。

 ジョルジは「おはよう」と短く挨拶をした後、私に剣を渡す。……いつもなら、先に走り込みなのに。


「構えてみろ。……俺を敵だと思って」


 ジョルジから剣を受け取り、剣を両手で強く握りしめて、彼に向けた。

 めちゃくちゃ筋肉と体力を培ったはずなのに、悲しいことに体型の変化はあまりなかった。……いや、もはや良かったかもしれない。

 ゴリゴリのマッチョになっていたと思ったら、このままの方がずっと良い。

 私は真っ直ぐジョルジの方を見つめた。彼もまたじっと私を見つめ返す。

 構えで強さが分かるという。これはイザベラに教えてもらった。呼吸の仕方や殺気などから感じられる。少しのブレも許されない。

 この姿勢を私は神界の五年間で非の打ち所がないほどまで完璧にした。


「キープだ。ずっとその状態のままで」


 ずっと……? ずっと、とは?

 ジョルジの発した「ずっと」の長さがどれぐらいかは分からなかった。けれど、聞き返してはいけない。

 きっと、ジョルジが「やめていい」というまではこの構えを続けておかなければならない。

 …………終わりが分からないのってきつすぎない?

 今までの地獄のメニューは終わりが分かっていた。だから、最後まで踏ん張れたところもある。けれど、今回は終わりを知らない。

 ここに来て、最後にこんな精神力を試されるようなことさせるの!? 最終チェックじゃなかったの!?

 私は心の中で叫びながら、微動だにせず、じっと構え続けた。

 


 

 どれぐらい経ったか分からない。

 けれど、私はずっと構え続けた。手が震えるかと思っていたけれど、訓練のおかげで少しもきつくはない。

 ジョルジはなにも言わず、ずっと私を見ている。

 目の前の敵は私を観察し続けているのだ。私も殺気を途切れされることなく、向き合わなければならない。

 ……ジョルジの役目の方がきついのではないかと思えてくる。

 だって、ずっと私のことを見ているわけでしょ? 飽きもせず……。ジョルジの忍耐力はとんでもないと分かってはいたが、まさかここで発揮してくるなんて……。

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