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私は顔が良いだけ  作者: 大木戸 いずみ


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「おはよう」

「おはようございます、夫人」


 廊下でナタリーとすれ違う。彼女は手に持っていたいくつかの手紙のうち、一つを私に渡す。


「これ、貴女宛にきていたわ」

「ありがとうございます」

「……いつも匿名だけど、これってやっぱり恋人なの?」

「秘密です」


 私はそう言って、ニコッと微笑んだ。

 ナタリーは口を少し尖らして「やっぱり教えてくれないのね~」と悔しがる。

 これはエドからだ。

 王宮とやりとりをしているとバレたら面倒くさいので、いつも匿名で送ってきてくれる。……ちなみに、私から返信を書いたことは一度もない。

 書く時間がないほど、体力強化訓練は厳しく、時間に追い詰められていた。読む時間がかろうじてあったぐらいだ。

 内容は大体いつも新情報の提供や操作の進捗具合。……あまり大幅に何か分かったことはない。

 前に私たちを襲った仮面の男がデミゴットだと可能性が高いという情報ぐらい。彼の発していた言語がどこの国の言語や古語にもあたらないらしい。

 あとは、エドの親族、つまりは王族の裏切りがあったようだ。その裏切り者はチェイスのスパイだったって。これはかなり有力情報じゃない!! ってなったのだけど、拷問される前に舌を噛みきって死んでしまった。

 というわけで何も聞き出せずに終わった。

 徹底してるわね、チェイス、と思いながら、私は訓練に励んだ。弟を発見するまで随分と長い道のりだけど、向こう見ずに突っ走るよりはいい。相手は強敵だもの。

 この遠い道のりが一番の近道だと信じている。


「今日も訓練なの?」

「いえ、ジョルジさん曰く『最終チェック』だそうです」


 はじめは旦那様、と呼んでいたが、堅苦しいと言われ「ジョルジさん」となった。 

 ナタリーは感慨深い目で私を見つめる。


「とうとう明日だものね。案外あっという間だったわね」


 いいえ、めちゃくちゃ長かったです。

 訓練がしんどすぎたせいで、一日がものすごく長く感じられた。いつまで経っても終わることのできない忍耐が試される地獄メニュー。

 あっという間という気持ちも分かるが、振り返ると、やはり長い。


「よくここまで文句ひとつ言わずに頑張ったわね」

「途中で投げ出さないと約束したので」

「正直ね、私は貴女はすぐにやめてしまうんじゃないかって思っていたのよ。初日は頑張れても、続けるのは大変でしょ? 継続できるって才能だもの。しかもあのメニュー……、リチャードはできなかったのよ」


 そう言って、ナタリーはどこか懐かしそうに笑った。

 リチャードも「あれをよく続けているな」と驚いていた。まさか、彼も地獄メニュー経験者だったとは……。


「リチャードもかつては騎士になりたいって言ってたのよ。……ふふっ、意外でしょ?」


 ナタリーの発言に私は「え」と驚きの声を漏らした。

 ……確かに、リチャードの剣の腕はすごいと有名だ。言われてみれば不思議な話ではない。残念なことに、リチャードとはまだ一度も手合わせしたことないけれど。……まさか騎士になりたかったなんてつゆ知らずだったわ。

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