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私は顔が良いだけ  作者: 大木戸 いずみ


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 あっという間に月日が流れた。

 早いもので、王宮試験は明日だ。

 この数か月間、ずっと体力づくりに集中した。初日、屋敷の周り百周だけで動けなくなった。意外と広いウエスト家を恨みながら、死に物狂いで走り終えた。……もちろん、ジョルジは容赦なくて、走り終えた私を見て「次は筋トレだ」とだけ言葉を放つ。

 正直、ちゃんと殺意が湧いた。……けど、毎日ジョルジの言うメニューを必死にでこなしていくと、少しずつ成果が出ていることを実感した。

 筆記試験の方は、ジョルジが模擬筆記試験を行ってくれた。満点だった。

 彼の少し驚いた様子を見れたものの、すぐに「これからは全ての時間を体力作りに費やそう」なんて言うから、思わず手が出そうになってしまった。もちろん、我慢した。

 というわけで、騎士を目指すにはあまりにも短期間だったが、私は信じられないぐらいの急成長を遂げた。……体力面で。

 晩御飯の時にウエスト家のみんなと少し会話をするだけで、それ以外はずっとジョルジの地獄メニューに挑んでいた。毎日、飽きずに、ずっと。

 本当に我ながら、よく頑張ったと思う。神界での訓練よりもしんどかったかもしれない。

 ジョルジのメニューは死ぬかと思うほどきついが、身体を壊すことはない。それがまた悔しい。

 ありがたいことに、ジョルジからはメニューをこなす代わりに、家事は一切しなくてもいいと言われた。そのおかげもあって、嫌というほど体力作りに没頭できた。もちろんこれはちょっと皮肉を込めている。

 ウエスト家に住み着いて、最初の数日ですぐにこの屋敷に慣れた。この国ではかなり異質な構造をしているが、住みにくいとかではない。

 初日の体力強化訓練を終えた後に、脳も体も限界を迎えており、リチャードの部屋に間違えて入ってしまったこと以外はなにもやらかしてはいない。

 ……そういえば、あの時のリチャードの驚きといったら、今でもまだ笑ってしまう。

 まるで幽霊でも見たのかと思うぐらいの声で叫ばれた。ギャー―ッと言った彼の声に驚き、私も叫び声を上げてしまった。

 若い男女の叫び声がこの屋敷中に響いたのは傑作だったわ。

 少し変わったことと言えば、リックが少し懐いてくれたことだ。

 ルナお姉ちゃん、って私を呼ぶようになった。疲れのあまりか、ジーンッと心にきて、リックを思わず抱きしめた。

 リックは本当にこの過酷な訓練の中での癒しだった。

 ずっと「ルナお姉ちゃん、すごい! 頑張れ!」って応援し続けてくれた。私が庭で汗だくになって倒れ込んで休憩している時でも「ルナお姉ちゃん可愛い」って言ってくれたのだから。

 こんな姿を本当に可愛いと思うのか? と心の中で呟きながら、「見る目あるわね~、リック」と言って頭を撫でていた。

 そして、その様子を見たジョルジが「まだ元気そうだな」って言ってきて、更に私は追い込まれるのだったけれど……。

 とにもかくにも、私は驚異的な成長を遂げたのよ!!

 ちゃんとリチャードから聞いたから、個人的見解ではないわ。父がルナに対して慄いているって言ってたぜ、と教えてくれた。

 普段ジョルジは私を褒めない。だからこそ、そういう話を第三者から聞くと嬉しくなる。

 私はそんなことを振り返りながら、今日も庭へと足を進めた。

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