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なんか探偵みたいな質問されちゃった。
神界で自分が神と人間のハーフであることをしって、人間界で言う五年間を向こうで修行してきました……なんて言っても絶対に信じてもらえないだろうし。
「王子が信じたいルナ・グレイディを信じてください」
あ、また王子って言っちゃった。
今回は王子を王子と呼んだことに対して反応した。
「エド、でいい」
愛称!?
突然の距離感に私は心の中で大きな声でつっこんだ。王子の考えていることが全く分からない。私と二人っきりにさせてたと思えば、恋愛観の話を持ち出したり……。
まさか……、王子ってば私のことが好き!? ……そんなわけないか。お花畑の脳みそは卒業したのよ。彼が私を好いたとしても、この恋は実らない。
神の血が入っているのに、ただの平民なんだもの。どうしようもない。
「エド様」
私が彼の名を呼ぶと、エドは満足そうに微笑んだ。
……ちょっと、その笑顔は反則じゃない? 私を落としにきてる?
エドの笑顔に惑わされないように私は気を引き締めて、言葉を発する。
「私のこと嫌いじゃないんですか?」
我ながらになんて質問をしてるのよ! もう! もっと他に聞くことあったでしょ! 私の馬鹿!
チェイスについての情報をもっと根ほり葉ほり聞くことだってできたのに、何よこの質問は!
表情に出さないように努めているが、頭の中では感情が暴れている。
「……嫌っていたら、王宮に住めなど提案しないだろう」
「それはそうですけど……。私、これからも勝手な行動ばかりすると思います。ドレスもまたボロボロにしちゃいそうだし」
私がそう言うと、エドは優しく笑った。
おおお、なんだその甘いマスクは……。あまりの眩しさに目が溶けちゃう。
本当にどんな心の変化がエドの中であったというの? ……いや、それはお互い様か。私も心の変化しまくりだ。
「いくらでもドレスをボロボロにしてくれていい。嫌というほど与えてやる。……それと、ルナがどれだけ勝手な行動をしたとしても、俺はお前を見捨てない。約束しよう」
そんな殺し文句がこの世にあっていいのか? いや、ダメだ。この世界の女性を言葉だけで骨抜きにしてしまう。王子の言葉の殺傷能力をご自分で理解していただかないと。
てか、どうしてエドはこんな私にプロポーズみたいな約束をしてくれるわけ!?
頭の回転が速くなりつつあった私の脳もショート寸前だ。
…………とりあえず、勘違い女にはなりたくない。王子の慈悲だと捉えておくのが一番いい。
家族を失った可哀想な平民に対しての同情として受け取っておかないと、私が恥ずかしくて辛い思いをすることになる。




