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私は顔が良いだけ  作者: 大木戸 いずみ


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「お前に望むことなど何一つない」

「……強情ね」

「私を殺す度胸などないくせに」


 ……なるほど。

 この状況でもまだ舐められているのか、私。

 私は彼女を片手で抑えながらドレスの裾をもう片手で手に取り、口で裂いた。ビリビリビリッとその場に容赦なく布が破れる音が聞こえる。

 その様子に気付いた陰は目を丸くして、首を私の方向へと向ける。


「な、に……を……」


 私は無言のまま、絶対に解けない結び方で彼女の両手を縛り、足も拘束した。必死に抵抗しようと足を動かすのを抑えるのは手間取ったが、なんとか結べた。……おかげでドレスは見るも無残な姿になってしまったけれど。


「敵の捕獲の仕方まで完璧なのか」


 陰は何やらブツブツと呟いていたが、何を言っていたのか聞き取れなかった。

 よし、これでもう私が抑え込まなくていい。


「拷問でもするつもり?」

「拷問しても、陰は何も話さないように訓練されているでしょ? 自害されても困るし……」

「たかが平民にこんな屈辱的な……」


 彼女は必死に布を解こうとするけれど、絶対に無理だろう。

 本人では絶対に解くことのできない結び方で縛っている。たかが平民だって、やるときゃやるんだぞ。


「そうね、まずは名前。なんていうの?」

「名前? ……カレン」

「私は」

「ルナでしょ。殿下から聞いている」

「流石~。じゃあ、次、家族は?」

「一体なんの質問をして」

「答えて」


 カレンの言葉を遮るように私は強い口調でそう言った。

 ここでじっと質問をしているよりも、動きながら質疑応答をした方が効率良いわよね……?

 私はさらにドレスを破る。その行動に彼女は「何をしているの」と目を見開いて私をじっと見つめる。彼女の足に布を巻いて、引きずれるようにした。

 

「ちょっと! なに!?」

「折角だから散策しながら、質問しようと思って。貴女ならここに詳しいだろうし。……他にもっと道具があれば私がこんなに力をかけて運ぶ必要もないんだけど」

「……信じられない」


 私は出来るだけ疲れないようにと、彼女の足に結んだ紐を腰に結んだ。

 ふぅ、これでだいぶ楽になった。


「それで、家族は?」


 私は歩き始めながら口を開いた。

 傍から見たら、私たちは相応奇妙に見える。もはや陰だけ見たら怪物に見間違えるかもしれない。今日、王宮内で魔物を発見したと噂が広まれば、それは間違いなく私たちだろう。


「……兄がひとり」


 諦めたように彼女は応える。


「お兄さんも陰?」

「そんな簡単に陰の情報を教えるとでも?」


 私は急に乱暴に歩き始めた。

 引きずられている側はさっきよりも衝撃が強くなったはず。手荒な真似だが、まだかわいい手荒な真似だ。


「わかった! もっと大人しく歩いてくれ! 兄は宮廷画家だ!」

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