20
窓から差し込む陽光で目が覚めた。
「ん〜〜〜」
私は体を伸ばしながら、体を起こす。
…………ここはどこだ?
自分の部屋ではない。なんとも豪華なお部屋だ。
「……思い出した」
私は昨日、結局王宮で過ごすことを選んだのだ。というか、あの流れは王宮で過ごす以外選択肢はなかった。
昨晩、あの従者たちにとんでもなく怒られた。
確かに私の言い方も上から目線だったけれど、「殿下になんて口のきき方を!」と散々説教された。
当の本人は気にした様子はなくどこか楽しそうに私を見ていたけれど……。
『俺の近くでその価値を分からせてやる』
なんて言われたら、城に来るしかない。
というか、私に断る権利などない。王子の言葉を蹴るなんて 、私の首が飛んでしまう。
というわけで、私は今この王宮で一晩過ごしたのだが、起きてからも落ち着かない。
神界で過ごしていた時も豪華な場所だったけれど、日々勉強ばかりでほとんど部屋の中の様子など覚えていない。
私の生活が一変してしまった。
これから全てが変わってくるのだろう。私は新しい世界でも必ず生き残ってみせる。
そして、絶対に家族を殺した犯人を見つけ出す。
私はクローゼットを開けて、新しいドレスに着替えた。
クローゼットのドレスを勝手に着て良いのか分からなかったが、この部屋にあるものは全て自由に使っていいと王子に言われたのだから、遠慮なく使わせてもらおう。
……こんな高価なドレスを着るのは初めてだ。
豚に真珠になるかもと思ったが、あまりにも自分に似合っていて驚いた。
デコルテが出る緑色のシックなドレス……。まるでプリンセスにでもなったみたい!
鏡の前の自分の姿に驚く。……外見は本当に良い。というか、神界に行ってから本当に雰囲気が少し変わった気がする。
……この世界で生きていくなんて余裕じゃない?
私はドレッサーに近づき、メイクをする。芸術の神シャーロットに教えてもらったのだもの。メイクは完璧よ。
自分の顔に似合って、自分のパーツを引き立たせる化粧の仕方を分かっている。
「できた!」
我ながらに上手くできたと思う。
鏡をじっと見つめながら、完璧に仕上がったメイクに満足する。
こんなに綺麗に着飾っても、きっと王子の心は少しも靡くことはないのだろう。
「……てか、王子って婚約者いるよね?」
私はふとそんな疑問が頭の中で浮かんだ。
ごく当たり前のことを今思いつくなんて……。幼い頃から婚約者は決まってる。住んでいる世界が違うのだ。
恋愛結婚などできるはずがない。
……どう足掻いても、私と王子が一緒になる未来など存在しないのだ。
王子が結婚するまでは、少しだけ王子のそばで楽しませてもらおう。




