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第5話 ウッソだろお前

 行く先は、先ほど(おぼ)れた川だ。

 あれからそこそこ移動してしまったが、この近くにも流れているだろう。

 空腹オジサンを木陰に残し、オレは駆け出した。

 もっとも、普段ほとんど運動していないため、足は遅いが。


「ねぇ、この魔法使ってみたら?」


 ふと、天の声(ナレーター)がオレの頭に触れた。

 直後、とある魔法のイメージが脳内に流れてくる。

 なるほど、すげー便利そうだ。


(体に魔力がぐるぐる循環(じゅんかん)するイメージ……)


 自分に言い聞かせるように魔力をコントロールし、オレは魔法名を発声した。


「《超駆(エクシード)》!!」


 瞬間、オレの全身から白いオーラが立ち昇った。時折それがバチッとスパークする。

 全種族共通のサポート系魔法、無属性魔法。

 その1つである《超駆(エクシード)》は、肉体に魔力を巡らせ身体能力を活性化する魔法らしい。

 これで鈍足な陰キャオタクも俊足になれる。


「よし、行くぜ!」


 全力で大地を蹴り飛ばす。

 直後、思いっきり転んだ。


「あぶすっ!」


 変な声が出た。

 俊足になるどころか、指1本動かせない。

 自分の体じゃなくなったような気さえする。


(あー……これ多分、急に身体能力だけが上がったから、体と意識が追い付いてない的なやつか……)


 倒れたまま分析していると、天の声(ナレーター)が「あー」と声を()らした。


「ごめん、それ練習しないと使えない系だった、忘れてた」

「クソガイドめ……」


 ぼやきつつ《超駆(エクシード)》を解除し、普通に走った。

 移動すること数分、川が見えた。近くには釣り人もいる。

 もし既に何匹か釣っていたら、交渉次第で分けてもらえるかもしれない。

 近寄ってみると、横に置かれた(おけ)の中には、丸々と太った魚が7匹。望みありだ。


「なぁ、ちょっといいか?」

「ん?」


 釣り人が振り向いた。

 純白の髪をボブカットに切り揃えた、18歳くらいの少女。

 その顔を見て、オレは息を呑んだ。

 超のつく美少女だったからだ。

 髪同様に白い肌は透き通るようで、黒い大きな目はくりくりしている。

 あと胸が大きかった。恐らくFカップ。

 数多の女性キャラを見てきた変態オタクのオレの目に狂いはない!


「とっとと交渉すれば?」


 天の声(ナレーター)が冷たい視線と言葉をぶつけてきた。

 気を取り直して、交渉する。


「あっちの木陰で、人が行き倒れてるんだ。すげぇ腹減ってるみたいで、2~3匹くらい魚分けてもらえないかなーと……」


 少女が目を見開いて「えっ」と声を上げた。


「大変じゃん! 2~3匹なんて言わずに、これ全部持ってって!」

「え? いや、ありがたいけど……いいのか?」

「気にしないで! ボク釣り上手いから、7匹くらいすぐに取り戻せるよ!」


 ……ボク、だと?


「良かったじゃん。ほら、早くオジサンのとこに……」


 そんな天の声(ナレーター)の言葉を無視し、オレは叫んだ。

 絶対に看過できない事案だった。


「認めんぞー!!」

「「……は?」」


 突然のことに、少女と天の声(ナレーター)の声がハモる。


「元気系ボクッ子なら貧乳であるべきだ! その属性のキャラに巨乳の組み合わせは邪道・オブ・邪道だぁーっ!!」


 途端、少女の白い(ほほ)が赤く染まった。


「ボ、ボクだって、好きでこんなおっきな胸になったんじゃないよ! そんなこと言う人にはお魚あげない!」

「……あっ」


 ……やってしまった。

 あと個人的な性癖を大声で叫んでしまった。


「えーっと……すいませんしたっ!」


 ざしゃっ! と音を立てて、オレは勢いよく土下座した。

 これぞやらかした時のジャパニーズ・リーサルウェポン。魔法にも劣らぬ威力がある。

 その効果──かは分からないが、少女は桶を差し出した。


「……冗談だよ。ほら、持ってって。困ってる人を見捨てる方が気分悪いから」

「あ、ありがとう!」

「ありがとねー!」


 お礼を言って、オレと天の声(ナレーター)は桶を受け取って駆け出した。

 後ろの方で少女が何か言ったが、オレ達には聞こえなかった。


「こっそり(のぞ)いてみたけど……そっかそっか、オジサン逃げ切ったか」


 ◇


 魚を手に木陰に戻ると、白髪(はくはつ)の男性は、変わらずぐったりしていた。

 火を起こすべく、先ほどゴブリンに向けてやったのと同じイメージで魔法を使う。

 今度はカッコ良く魔法名も言う。


「《炎弾(ブレイズ・バレット)》!!」


 炎属性の下級魔法らしいが、魚を焼くだけなら十分すぎる火力だ。

 ほんの数分で、魚はこんがり焼けた。

 念のため毒見するが、焼いただけでも十分美味い。


「ほら、魚焼けたぞ」

「助かる、ありがたくいただこう……」


 (しぶ)い声を(こぼ)し、男は魚にかぶりついた。

 よほど空腹だったのだろう、見る見るうちに魚がその体積を減らしていく。

 オレが差し出したおかわりを受け取りつつ、男は軽く頭を下げた。


「すまない、3日ぶりの食事につい夢中になってしまった。改めて礼を言わせてくれ」

「そんな食ってなかったの!?」


 むしろ遠慮(えんりょ)せずもっと食べてほしい。

 そう思った矢先、男の口からこんな言葉が出た。


「しかし()()()()()は、()()()()より脂がのっていて美味いな」

「……ん?」


 おいちょっと待て、今なんつった?

 1回深呼吸をしてから、オレは恐る恐る訊ねた。


「えっと……アナタいま魔界って言いませんでした……?」

「ん? あぁ、自己紹介がまだだったな」


 そう前置きし、男は名乗った。


「5代目魔王のドルーオだ。と言っても、1月前のクーデターで魔界を追放された身だがな」


 いや、通りすがりの魔王来たやん……



(つづく)


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