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第34話 強くなるには

「んぁ……?」


 なんか物音がした気がして、オレは目を開けた。

 視界はまだ薄暗い。時間で言えば多分、朝の5時ちょっと前くらいか。

 起き上がってみると……お。


「レラ……?」


 昨日オレ達のパーティーに加わった問題児が、どこかに行こうとしていた。

 周りを起こさないように気を遣っているのか、足音を殺している。

 ……まぁオレは起きちゃったんだけども。

 そんでどこ行くんだろ……


「着いてってみるか……」


 尾行とか自信ないけど、とりあえず自分に言い聞かせるように呟いてから、オレはそっと立ち上がった。

 直後、ナッシュが目を覚ました。寝起きゆえか、いつにも増して不愛想な視線が飛んでくる。

 ……うん、オレに隠密行動の才能はないってハッキリ分かんだね。


 ◇


「……でェ、なんで俺まで尾行しなきゃなんねぇんだよォ」

「しょうがないじゃん、俺この世界の土地勘とかないんだから。1人だと迷子になっちゃうだろ」

「なっちまえよ迷子によォ。つーか俺だってこんなとこの土地勘なんざねぇわァ」


 ダル気な声を冷めた視線が飛んでくるが、何だかんだ言いながらもナッシュは今、オレのレラ尾行に同伴してくれている。

 こっそりとどこかへ行ったレラをこっそりと追いかけると、レラは程近い森へと入っていった


「早朝の森とか絶対迷子になるじゃん……ナッシュ、ナビ頼むぞ」

「知るかボケェ」


 そのまま薄暗い森の中を、2人でガサガサと突き進んでいく。

 ……でも、ぶっちゃけレラどこにいるか分かんねぇな……

 周り見回しても、木とナッシュしか見えん。


「……おいィ、こっちだァ」

「ん。……お」


 ナッシュが指した方向に意識を向けてみると、オレにもすぐに感じられた。

 風の魔力……多分レラだ。

 魔力を追って走ってみると、少し開けたところにメカクレ少年がいた。

 レラがパーカーのポケットから、大量の小石を取り出した。やたらポケットが(ふく)らんでるけど、中身は全部小石っぽいな。

 オレ達がこっそりと見守る中、レラは集中した様子で小石をまとめて放り投げた。

 大量の小石が宙を舞う。

 直後、レラが口を開いた。


「《風弾(ストーム・バレット)》」


 レラの手許に、青緑色の魔法陣が浮かぶ。

 そこから小ぶりな魔法弾が、いくつも発射された。

 飛んだ先にあるのは──さっきレラが投げた小石。

 ガガガッ! と破砕音を響かせ、風弾が小石を撃ち落とした。

 ……いや、撃ち落とせたのは投げた小石の3割くらいか。


「ちっ……」


 レラの舌打ちが聞こえた。やっぱ全部撃ち落とす気だったのか。


「どうやらァ、俺に負けた理由をちゃんと解ってるみてぇだなァ」


 昨日のナッシュとのタイマンの話か。


「負けた理由って……シンプルにお前のが上手(うわて)だったとかじゃねぇの?」

「脳ミソの形したアクセサリーとかァ、洒落(しゃれ)たモン頭ん中に入れてるみてぇだなァ」

「何それ、どういう言い回しなの?」


 そんな特殊な言い回しの嫌味、初めて聞いたわ。つーか分かりづれぇわ。


「あいつが俺に負けたァ……言い換えりゃ俺に手を読まれたのはァ、あいつの手札が接近戦しかなかったからだァ」

「……と言うと?」

「刀剣での接近戦をメインとする冒険者ァ──アタッカーは敵に接近できなけりゃ無力だァ。そんであのガキは避けも受けもイイ線行ってたがァ、それだけだったから読まれたァ」

「つまり……魔法の撃ち合いで勝てるようになればいいってこと?」

「それもあながち間違いじゃねェ。あのガキに必要なのはァ、相手の中距離攻撃を牽制(けんせい)する飛び道具だからなァ。遠くからでも殺せる火力がねぇとォ、牽制にはならねェ」


 確かに『このくらいなら別に大丈夫だなー』レベルの威力の技だったら、そのまま力ずくで突破される。

 相手を受けに回らせて、攻めを潰せるだけの火力が必要だ。

 そして、どれだけ火力が高くても当たらなければ意味はない。特にアタッカーであるレラは、高速で動き回りながら相手を狙う必要がある。

 今やってるのも多分そのための、動きながら動く的に当てる特訓か。


「……行くぞォ。これ以上邪魔する必要はねェ」


 言いながら、ナッシュはスッタスッタ歩いて行った。

 やべぇ、置いてかれる。


「そこの勇者止まりなさい、そこの勇者止まりなさい。ウゥ~」

「誰が逃亡犯だァ、ぶっ飛ばすぞォ!!」


 あ、通じた。

 こっちの世界でも逃亡犯への呼び止めはこのフレーズなんだな。

 ……しかし、レラが強くなるために、魔法の腕を(みが)くのかぁ……つまり!


「オレが強くなるためには、逆に接近戦の腕を磨いた方がいいってことか!!」

「お前の『頭に脳みそ詰まってませんアピール』はもう聞き飽きてんだよォ」

「だから辛辣(しんらつ)かって」


 まぁ、さすがにそこまで単純な話じゃないのは分かってるけども。


「自分のォ、それか自分の武器や技の強みを理解しろってことだァ。そんでそれを最大限に活かすゥ、またはそれと最も相性のいい戦い方を見つけるんだよォ」

「なるほど……」


 オレの強みって言うと、まぁ転生ボーナスだよな。

 全部の属性の適性が高くて、復活魔法が自動で発動する。

 言い換えればそれだけ魔力がたくさんあるってことだ。最後まで魔力たっぷりで戦える。

 ……うん、だんだん見えてきた。


「フッ、伊達(だて)にバトルアニメを履修(りしゅう)してないぜ……!」

「何をニヤニヤ笑ってんだァ、気持ち悪ぃなァ」


 ◇


「あ、2人帰ってきた」

「どこに行っていたんだ? もう全員起きているぞ」

「ひとまず、燻製(くんせい)は温めておきましたよ」

「ナッシュー、早く朝メシ作ってくれよー!」

「おはよー、おかえりー」


 戻ったオレとナッシュに、パーティーメンバー4人と1羽から、そんな声が飛んできた。

 ……うん、4人ね。


「……なんでお前のが先に帰ってきてんだよクソガキィ」

「え、何言ってんの? ボクずっとここにいたけど?」


 レラが頭をかきながら言った。

 ウソ吐いてんな、分っかりやす。

 これで本人バレてないって思ってるのが逆にすごいわ。

 ……まぁでも、こういうポンコツキャラが豹変(ひょうへん)して、カッコ良く新技を披露(ひろう)するのも醍醐味(だいごみ)の1つだ。

 楽しみだ。



(つづく)

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