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序章ープロローグー

ここはランデルス王国、リアレーン領、中央都市ライア。

リアレーン領で最大の都市であり、都市の周囲を城壁で囲い、ランデルス王国の守りの要とされている都市だ。


数百年前に起きた人間と魔族の戦争は人間が勝利した。

その後、魔族は衰退していき、人々が生活領域を拡大することになる。



俺は、レオン・バークス、14歳。

この国の直属騎士団である聖闘騎士団のリアレーン支部、第二部隊副隊長を務めている。


周囲からは、中級貴族である俺の家のコネで騎士団に入団したと思われている。


その通り……だったら、もっと話は簡単だっただろう。



だが実際には、俺は家のコネを使うことなく、実力でここまで上がってきたのだ。

なぜなら、両親は俺が騎士団に入ることを良く思わなかった。


仮にも貴族ということで将来をある程度決められていた俺は、家のために政略に利用されるのを嫌い、両親の反対を押し切って騎士団に入った。


今では、ほぼ絶縁状態だ。だから、俺は自分の力だけで副隊長を務めているのだ。


それを快く思わない団員もいるが俺には関係ない話。

俺は、当たり障りなく、楽しく生きていきたいだけなのだ。

ただそれだけのはずだった。



***



はあ、気持ちいいなあ……やっぱり、天気がいい日は、日向で昼寝するにかぎる。


そんなことを考えながら、俺はベッドの上に倒れ込む。

部屋の外では慌ただしく走り回る足音が聞こえる。


きっと気のせいだ、気のせいであってくれ。


そう祈りつつ、俺は静かに目を閉じた。


コンコン


扉をノックする音が聞こえた気がした。

……いや、気のせいだ。


ドンドン


気のせい……。



「副隊長、いらっしゃいますか?招集命令が出ています、至急、お越しください!」



どうやら気のせいではなかったようだ。

返事をする前に要件を述べるとは……俺が部屋にいることはお見通しってところか。



「聖闘騎士団、第二部隊レオン・バークス副隊長様は、腹痛のため招集命令には応じられないと隊長に伝えてくれ」



俺は扉を開けることなく返事をした。

俺の言葉に用件を伝えに来た騎士も扉を開けることなく、応答する。



「お戯れを。隊長は本部への招集に応じております。

現在の第二部隊の全権は、レオン・バークス副隊長に委ねられています。

今回の招集には、領内に魔王が姿を現したことが関係しているようです。

討伐隊も派遣される可能性が高いです。どうか、至急、招集に応じてください」



魔王……か。昔話で聞いたことはあるけど、俺が騎士団に入ってからは遭遇したことないな。


たしかに魔王クラスであれば、隊長格が出張らないと討伐は厳しいか……。

面倒くさいなあ、なんでこんな時に隊長は不在なんだよ、まったく。


俺は重い身体を無理矢理起こし、部屋を出た。



***



「魔導部隊、近接部隊の援護を怠るな!

前線部隊、左右に展開し、敵の退路をふさぐんだ!

敵は1人、このまま討伐するぞ!」



俺の指示に鬨の声(ときのこえ)が上がる。


士気は十分だ、敵も魔王とはいえ手負いのようだし、このまま押し切れる。



「どうやら、油断していたようですね。人間とは追い詰められてから力を発揮すると聞いていましたが、まさかこれほどとは……驚きですね。

しかし、このまま討伐されるわけにもいかないのですよ!」



魔王はそう言うと、その禍々しい魔力を全身にみなぎらせていく。


俺には、その行動に見覚えがあった。

全身に魔力を集中し、圧縮した魔力を瞬間的に解放することで周囲を巻き込む自爆技。

自身の命と引き換えに、その威力は絶大なものとなる。



「全軍後退!魔導部隊、前線に防御結界を展開しろ!

やつは俺が抑える!」



俺は魔力を集中しながら魔王との距離を詰める。

そして膨大な魔力の放出を封じ込めるための結界を魔王の周囲に展開した。



「南北の門は、かの者の力を。東西の門は、かの者の意識を。

 地の門はすでに閉ざされ、残された天蓋の門にて、かの者のすべてを封じ込めよ。

 結界魔法、六道門結界(りくどうもんけっかい)!」



魔王は結界の中で自爆技を放ち、消滅した。

こちら側の死傷者は、極めて少なく、魔王相手に完全勝利と言えるだろう。


どこからともなく歓声が上がる。



「レオン副隊長は、普段やる気がないように見えるのに、こういうときは頼りになるよな」



「たしかにな。あの人が普段からちゃんとやってりゃ、隊長昇格もすぐだろうに」



「まあ、向上心の塊みたいなやつよりはいいじゃねえか」



歓声に交じって、俺に対して何か言っているようだが、それについては聞かなかったことにする。

自覚はしている、俺はやればできるのだと。

ただ、面倒くさがりでやればできるけど、なるべくやりたくないだけなんだ。



「副隊長、先ほどの魔王が潜んでいたと思われる洞窟を発見しましたが、いかがいたしましょう?」



魔王の拠点か、討伐後に魔物が出現しても面倒だし、一応調べておくか。



「面倒だな、お前たちだけでは調査は難しいのか?」



「え、ええ、なにぶん、魔王がいた場所ですし、我々だけではとても……」



まあ、そうなるよね。面倒だけど、仕方がないか。



「分かった、俺が調べてくる、誰か一緒に来てくれ。

それ以外の者は、先に帰還してくれて構わない」



「ははっ。では、我々がお供します」



***



洞窟の中は薄暗い通路が伸びており、特に罠などが仕掛けられている様子もない。

当然か、仮にも魔王がいるという洞窟に興味本位で近づく者も、そうはいないはずだ。


もし、そんなやつがいたとしても相手も魔王だ、何の準備もなく挑めば確実に返り討ちにあうはず。

そう考えれば、罠を仕掛けるだけ無駄ということか。


しばらく歩くと、やや明るい広間に出る。

どうやら、ここだけは吹き抜けになっており、陽の光が入るようになっているらしい。


ここも特に異常はなし……か。

どうやら、魔物が大量に潜んでいる心配もなさそうだな。


そう判断し、帰還命令を出そうとしたとき、1人の騎士が声をあげる。



「副隊長殿、こちらに何やら描かれているようですが」



騎士の指し示す壁、そこには人間の文字とは異なる文字のようなものと、壁画が描かれていた。

内容を理解できずに困惑する騎士たち。


しかし、俺にはその内容が理解できた。


かつて、家の書庫にあった古い書物。

文字のような奇妙な形が並んだ絵本のようなものを見たことがあったのだ。


俺は、そのときの記憶を頼りに壁画を観察する。


どうやらここに描かれているのは、魔王が編み出した秘術のようだった。


俺は、騎士たちに洞窟内部の調査を指示し、壁画の解析を始めた。


所々が欠けていて分からないところも多いが、なんとか解析できそうだ。


ふと気づくと、俺が心躍らせている間に騎士たちは全員広間からいなくなっていた。

そしてどこからともなく聞こえてくる詠唱。


何か変だ、なにかイヤな予感がする。


そう思った次の瞬間、吹き抜けになっている天井から一筋の光が降ってきて、周囲を包み込んだ。


轟音とともに崩壊する洞窟から、俺は生還した。


俺はもともと魔力適正が高い、だから魔物との戦闘時や周辺調査の際には、自分に魔力結界を施している。

この程度の魔法攻撃であれば、自分の周囲を取り囲む結界だけで傷を負うこともないのだ。


いったい誰が……まさか、どこかに魔物が潜んでいたのか。


そう考えて周囲を見回すと、そこには、先ほどまで一緒に洞窟の調査をしていた騎士たち。

俺の生還に、目を丸くして驚きを隠せない様子で呆然と立ち尽くしている。



「あの魔法を受けて、無傷だと……」



先頭の騎士団のつぶやきで、俺の予感は確信に変わった。

どうやら、俺を襲撃したのは彼らのようだ。


俺は知っていた。

彼らは俺が若くして副隊長の座についたことが気に入らないのだ。

家のコネで入ったとバカにしていた小僧が、自分よりも力があるということを認めたくないのだ。


俺の生還に覚悟を決めたように剣を抜き放つ、騎士たち。

次の瞬間、俺は騎士たちを切り伏せていた。

といっても、剣の腹や柄での打撃であり、命を奪うことはしなかった。



「なぜこんなことを?」



俺の問いに騎士たちは少し目を伏せた。



「俺たちはあんたが副隊長に就いているのが納得できなかった。

それを上に掛け合ったが、隊長は、あんたは強いと話すら聞いてくれない。

それでも納得しない俺たちに、試しに襲撃でもしてみたらどうだと言う始末」



あの、クソ隊長、自分が対応するのが面倒だからって、なにも本当に襲撃させることはないだろうが。

それで俺が死んだら、どうしてくれるってんだ。

まあ、あの程度の攻撃ならその心配もいらないけども。



「でも、隊長があんたを信頼している意味がようやく分かったよ。

本当に強いんだな、それに俺たちを殺そうとすればできるのに、殺すこともしなかった。

責任は俺が持つと言っていた隊長の気持ちも少しは分かるってもんだ。

俺たちは反逆者だ、心置きなく処刑してくれ」



そう言うと騎士たちは皆、首をさらけ出した。

まるで、一思いに首をはねてくれと言わんばかりに。

俺はそんな騎士たちの頭を叩きながら回った。



「責任は隊長が持つんだろ?だったら、俺があとで隊長に文句を言いに行くさ。

顔を上げろ、胸を張って帰還するぞ!俺たちは魔王を討伐したんだからな」



俺の言葉に騎士たちは立ち上がり、歩き出す。

涙を流す者、礼を述べる者、一生の忠誠を誓う者、さまざまだが、まあこれでよかったんだ。


さて、あのクソ隊長には、どういう罰を与えてやろうかな。

俺はこの後の隊長への拷問を想像し、心躍らせながら帰還するのだった。


俺がこのときに見つけた壁画に描かれていた秘術。

それを解析し、自分の秘術とするのは、まだ数年先のことである。

数ある作品の中から、この作品をお読みいただきありがとうございます。


現在、ほかの小説を優先的に執筆中です。

そのため、こちらは不定期更新となります。

万が一、続きが気になる読者の方がいましたら、「早く続きを書け」とコメントいただければ、優先的に続きを書きますので、何かあればコメントいただければ幸いです。


もし、この作品が面白い、続きが気になると思ってくださった方は、ブックマークと評価の方をしていただけると励みになります。

何卒、宜しくお願い致します。


今後、あとがきでは、物語の進行にかかわる一幕を書いていく予定ですので、合わせてお楽しみいただければ幸いです。


それでは、これからもこの作品を、どうぞ宜しくお願い致します。

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[良い点] 色んな伏線が織り込まれてますね!
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