いつも通りじゃない朝
「父さん!母さんっ!!」
俺は必死に呼ぶ。返事はない。周りの野次のざわつきも今の俺の耳には届いていない。
俺の意識は朦朧としており何をしたらいいのかわからない感覚だったが、口が勝手に両親を呼んでいた。
………いや、これは夢か。
両親が轢き逃げで死んだ日の夢。最近は見なくなったのにな…。
「……ん、朝、か。」
なんだか妙にお腹が空くな。昨日の晩飯じゃ足りなかったのか?
…いや、昨日の晩飯の記憶がない。それにこのベッド、なんかいつもと違うよう、な………
目を開け周りを見渡す。俺はなんだか高級そうなベッドに寝ていて、壁は石造り。まるで城の中だ。
「……夢じゃ無かった、かぁ…喜ぶべきか悲しむべきか…。」
とりあえず状況確認とするか。こういう時にテンパらないで情報を集めるのが真のゲーマーだ。
俺はここに何も持ってきていないので持ちもの確認は必要ない。 近くにあった窓から外を見る。どうやらここはジル国の王城らしい。
次は何故ここにいるか。記憶が曖昧だが恐らくあの門番が倒れた俺を助けてくれたのだろう。
…だが何故だ?それならその辺の宿屋にいるはずだ。わざわざ王城に運ばれた意味。
不審者としての扱いはされていない。ならば歓迎されている、のか?
ここまでわかったら無駄な考察は必要ない。直接聞いた方がいいからな。
とりあえず部屋の外から出てだれか捕まえてそいつに聞けばいいだろう。
カギはかかってない、よな?ならさっさと外に出y
ゴンッ!!
「いってぇえ!!っ誰だよ急にドア開けやがって!!ノックくらいしろやゴラァッ!」
言ってから気付く。不味いことをしてしまった。いくら相手が悪かろうがここは下手に出るべきだった。
どうやらドアを開けたのはあの門番だったらしい。門番は最初キョトンとしていたが状況を理解したのか、顔がどんどん青ざめていった。
「す、すすすすいませんでした!!どうか私の命一つでお許しください!!」
こ、この構えは!日本人が持つ必殺技の一つ、DO☆GE☆ZA!!まさかこの世界にもあったとはな…驚きだぜ…。
…いや、しかしそれちょっとこっちが困る。なんだ、この世界のジル国は人に危害を加えると死ななきゃいけんのか。
「あ、えと。こちらこそいきなりすいません。少し聞きたいことがあるんですけど……。」
今から下手に出ても遅い気がするが…まぁこいつ年下っぽいしチョロそうだから大丈夫だろ。それにしても一国の門番がこれでいいのだろうか。こいつまだ子供だぞ?
「…寛大な処置、感謝致します。ではこちらに。朝食を兼ねて王がお話をしたいようです。勇者様。」
…朝食くれるのは助かる。勇者だから王が話があるのもわかる…いやわからんわ。
なぁ父さん母さん。俺異世界の勇者になっちまったらしい…ぼくおうちかえりたい