第7話 新たな門出
俺は老人こと天使ラグエルに教えてもらった武器強化の術を、ティカのダガー2本に施すことにした。
良く切れて、折れず、魔法防御・・いや、いっそ敵を自動追尾し攻撃したり、自動的に手元に戻ってくるようにするか。
それを見ていた老人は
「ほう、フライングダガーじゃな」と言った。
どうやら似たようなものが存在するらしい。
「これで私の役目も終わった。
ティカよ、これは私からのプレゼントだ
ケレリーの作ったダガーを倍にしてやろう。これで4本になる
戦い方はケレリー・・・ここではマックスか、彼に聞くといい
では、さらばだ」
老人はそう言うと天使ラグエルの姿になり、消えていった。
いや、正確には俺達は転移させられた。
ティカは何が起きたかわからず、あっけにとられた。
次に俺が目覚めた時は、知らない天井だった・・・
俺は部屋の中でベッドに横たわっていたのだ。
横にはティカが座って寝ている。どうやら手間をかけさせたみたいだ。
俺は起きて様子をみようとすると、ティカと逆となりの方から声をかけられた。
「ようやく目覚めたか!」
声のする方をみると、赤髪をたなびかせたシルヴィアがいた。
「なんで、あなたがここに?」
「城で気絶していたあんたをここまで運んだのは私よ。少しは感謝しなさい!」
「それは・・・どうもありがとう」
「うん!よし!」
そう満足げに答えたシルヴィアは、腰にある剣をカチャカチャとわざとらしく鳴らして、こっちをチラチラとみている。
「・・・それ聖剣だね。勇者になったんだおめでとう」
「そーなのよ! よく気づいたわね!」
あれだけカチャカチャさせれば誰でも気づくって
「でね! あなた達を私達のパーティーに入れる事にしたから喜ぶといいわ!」
「いや、俺はいいよ。ティカだけを頼む」
「は? 意味わかんない! 勇者のパーティーよ! 美女がいるパーティーよ!」
「最後の言葉、自分で言うか?
俺はトラブルの元になるからだよ。襲撃されたばかりだしな」
「大丈夫よ!私といればそんな事はなくなるわ!」
「一緒にいたから襲われたんだよ。とにかくこれ以上トラブルに巻き込まれるのはごめんだ」
「・・・わかった」
(とりあえずティカが入れば、彼との関わりは保たれるわ。
彼らを襲った黒幕を潰してからまた誘えば済むことよ!
そうよ! やってやるわ!)
シルヴィアには悪いが勇者パーティーに入るわけにはいかない。
それは俺の役目ではないからだ。
ティカに事情を説明し、シルヴィア達とパーティーを組むよう説得した。
最初はしがみついて嫌がったけど、シルヴィアのパーティーに入ればティカの皮膚の病気を治る事を話したらしぶしぶ了解してくれた。
俺は、ティカに神からの恩恵をといって、奇跡の力でティカを癒した。
神といってもあの女神ではないのだが、嘘を言うわけではないのでセーフだ。
ティカのかさぶたなどは綺麗に落ち、肌が綺麗になったのをみると
改めて、ティカって可愛い子だと思った。
俺は兄貴ながら心配になってティカに注意をした。
「ティカ、おまえ結構可愛いから、男が寄ってくるだろうが気をつけろよ。
騙されたりしないようにな」
ティカは照れながら答えた。
「ありがとう・・・大丈夫だよ。私が好きなのは・・・」
後半は良く聞き取れなかったが、まぁ大丈夫だろう。
何かあれば俺が飛んでいくし、聖剣なみのダガーが4本もあるし・・・ちょっと過保護かも?
いやいや、大事な俺の妹だからこれくらいは当然だな。うん。
そのやりとりを見ていたシルヴィアに俺は改めてお願いした。
「という事で、ティカを頼む」
シルヴィアは放心していたらしくハッっとなって言った
「それはいいけど、今の何?
今治癒魔法使ってなかった?
シーラでさえ治癒できない病気を治したよね?」
「あれは、神の恩恵だ。俺の力じゃないよ」
「え?今女神様現れてたの? 全然気付かなかったけど
それに女神様がなんで治癒するために現れるの?」
「それは・・・ほら、シルヴィアさんと一緒にパーティーを組むための褒美じゃないかな?」
「ああ、なるほどね!」
(って納得するわけないじゃない。いつか正体掴んでみせるわ!)
「それより、あなたはどうするの? スラムでの殺害の件で衛兵が探しているわよ?」
「衛兵か・・・
それもいいな」
「シルヴィアさん、お願いがあります。
あなたの力で、俺を衛兵にしてくれませんか? できればスラムのあたりだと嬉しい」
「出来なくはないけど、なんで?」
「あそこで苦しんでいる人たちを助けたいんだ」
「そういう理由ならいいわ」
(衛兵って事は私の部下にもなるという事よね。都合がいいわ!フフフッ)
こうして俺達の新しい門出が始まった。
第1部 完です。
これで、第1話につながります。