第2話 異世界へ転生
大幅に改訂しました。
俺は日本に住む日本人として半世紀程ぼっちで生きてきた。
良い師匠に恵まれ、中国武術の腕は既に奥義まで習得したくらいだが、それを使う機会などあるわけでもなく今日まで生きてきた。
ある日横断歩道を渡っていると、何もなかったはずなのにトラックが1台いきなり現れ俺はそいつにぶち当てられ、目の前が真っ暗になってしまった。
ここは時空の狭間。
俺は長い間ここで眠っていたと思う位意識が朦朧としていた。
そんな中、俺の眠りを覚ます者が現れた。
「目覚めよ」
俺は目を開け声がする方を見ると、そこに天使がいた。
「私はラグエル。あなたは今時空の狭間にいます」
「俺はトラックがいきなり現れて、ひかれたはずでは?」
「異世界転生するためには良くある事だ、気にしなくていい。
あのトラックは今まで何人もの日本人を異世界へ送るために活躍しているやつだぞ」
「なぜ日本人?」
「あの世界の人間は神の遺伝子を23個も持っており、その中でも日本人は霊性が高いから選ばれるのさ」
「という事は、異世界の人間はそこまでではないという事か」
「そういう事だ。目覚めたとこ悪いが、ユグドラシルの世界へ行ってくれないか?
あそこを救って欲しい」
「そんな力なんて持ってないよ。
元の世界に戻してくれないかな?」
「既に死んだから無理だ。
力ならあるさ
次の中から選ぶといい
貴族の子として生まれ勇者になる道
魔族として生まれ魔王になる道
スラムの娼婦の子として生まれ天使の力を得た頃に仲間の記憶が消される道
生まれた時から奴隷だが、巨人をも超える力を得る道
村人として生まれ、偉大な魔道士になる道
さぁ、どれがいい?」
「これは、あれだな、小説とかアニメであった異世界へいくというやつだ。
元の世界よりはおもしろそうだな
何を選ぶかか・・・
ん?真ん中のだけ将来性が不明みたいだけど?
他のは栄光が待ってる気ががするのに」
「そのとおりですよ。さぁ、どうしますか?」
「決まった道というのも面白くないから、真ん中のスラムのでいいよ」
「では、そのようにしましょう
ちなみにあなたの選んだ道は、あなたの本来の道です
さすがですね
運命はあるものです」
ラグエルがそう言い終わると、俺は目の前が暗くなり、どこかに落ちていく感じがした・・・
ある町のスラムで一人の男の子が産声を上げた。
名前はマックスと名付けられた。
母親は娼婦で父親は誰かわからない。
俺が6歳の時、母親は病気で亡くなった事で俺は前世での記憶を思い出した。
唯一の身内が亡くなったので俺はひとりで何とか生きていこうと思った矢先、母親の友人のナオさんが強引に俺を引き取ると泣き出したので、仕方なく成人式までは育てられる事になった。
ナオさんには、見知らぬ獣人との間にできた俺と同じ年の娘ティカがおり、その子は生まれながらに皮膚病にかかっていて、顔にもかさぶたなどが付いているので、獣人ともあいまって周囲からは嫌われ避けられていた。
そのため普通は布切れを包帯がわりにして顔や体に巻いていて、いつも人目を避けていた。
しかし、ナオさんが母親の友人という事もあって、俺はティカの面倒をよくみていた。
俺にとって外見などどうでもよく、特に記憶が戻ってからは外見よりその人の魂を見るようになっている事もあって、ティカは純粋な魂を持っているため俺にとっては美しく見えたのだ。
ナオさんも、俺がティカの事を普通に接していたので好感を抱いており、俺のためというよりティカのために俺を引き取ったような気がした。
俺は同じスラムにあるナオさんの家に住む事になった時の事、ティカはもの凄く喜んでくれたものだ。
「ティカ!、今日からマックスはうちの子になったからよろしくね」
と少し大きな声で奥に声をかけると、奥から猫耳を頭に生やした茶髪の少女が走ってきた。
「え! にいたんが本当のにいたんになったの?」
「ええそうよ! これからずっと一緒にいてくれるわ」
「やったあ! にいたん! にいたん!」
と言って、ティカはその時嬉しそうに抱きついてきたので、思わずかわいくて抱きしめてしまった事もある。
ティカは見た目のせいで友達もおらず、唯一避けない俺にすっかりなつき、
俺の事を兄と思って慕っていたのだ。
「ティカ、これからはよろしくね」
俺、ナオさん、そしてティカの家族生活は、貧しくみすぼらしい家ながらも幸せな日々が続いていた。
しかし、魔物が多く魔王ですら存在し俺達の生まれる前には大規模な魔王軍との戦争もあったらしく勇者と言われた王を始め多くの成人男性が亡くなった事情もあり、俺はティカにも武術を教える事にした。
おもに太極拳という格闘技を教えた。これは相手の攻撃を受け流す事に長けた体術で、気功という魔力に似たものの使い方も教えた。身体能力を高めるだけでなく、打撃や魔法等を気功によってダメージを減らせる便利なものだ。
ティカは見た目こそアレだが、獣人でもあるため身体能力が高く、蟷螂拳まで教え、手にダガーを持った蟷螂拳の技は凄かった。
この国では15歳になると神殿で年に1度成人を祝う儀式が行われる。神殿は各神ごと色々あり、どこで受けてもいい事になっている。この国では軍神マルスが男の子には人気で、次は美の女神ディアナが人気で、平民は商売と旅の神ヘルメスが人気だ。成人式では各神殿で祝福してくれる。神といっても本来は堕天使達なのだが・・・
成人式を受けた神殿で、それぞれの神に応じた加護がもらえるため、成人式を受ける神殿選びも重要になっている。
軍神マルスなら戦闘に強くなるなどであるが、それは人により受ける量が異なってくるので、以前より強くなるものがいると思えば、あまりかわらない者もいる。
どちらかというと後者の方が多いのだ。
俺とティカは癒しの女神メアリーのところにいく予定だ。
癒しの女神を選んだのは、その女神が一番ましだったのと、俺をこの世界へ召喚しようと願ったのがその女神だからだ。もっともその召喚された俺が天使であり、今はマックスとしてスラムにいる事までは知ってはいないはずだ。
俺が癒しの神殿にいくと、赤い髪の子と長い金髪の子にあった。どうやら貴族の子みたいだ。
今年この神殿で成人式を受けるのは俺を含めてこの4人だけらしい。
すると金髪の子が俺に声をかけてきた。
「私はシーラ。そしてあっちはシルヴィアよ。あなたもここで成人式を?」
結構美人だなぁ。着ているものも立派だ。俺達とは天と地ほどの差があるな。
「俺はマックス。それとこっちはティカです。ここで成人式を受けるために来ました」
「よ、よろしくです」
ティカはお辞儀をして挨拶をした。
「あなた方はどこの人?」
「俺たちはスラムの出身です」
「スラム・・・それなのに、なぜ商売やお金の神殿でなくここにきたの?」
「お金なんてどうでもいいですよ。
それよりお二人は貴族のようですので、俺達にあまりかかわらない方がいいのではないですか?」
シルヴィアはフッと笑って
「私達はそんな事は気にしない。身分やしきたりなどただの貴族の決めた飾りでしかないのだから」
「そういう風に考える貴族もいるのですね」
シルヴィアが興味深そうに俺を見つめて
「あなた本当にスラムの子?それにしては落ち着いてるし、知性も見えるわ。」
「貴族にも落ち着かないバカだっているでしょ? ならスラムにも俺みたいなのがいても不思議じゃないのでは?」
「ハハハッ たしかにそうね。あなた気に入ったわ!」
お互い打ち解けていると、神官が現れそこに水をさした。
「静粛に・・・今年は4人ですね。公女様と・・スラムの子ですか・・・
それでは、儀式を行います。こちらへ来てください。」
公女って、お姫様か!?
なんか俺達場違いな気がしてきたよ。
というより、公女様が俺達みたいなスラムの連中と対等に話していいのか?
「公女様とはしらず、ご無礼な態度をお許し下さい」
俺は二人に対し謝罪した。
シルヴィアはそれを受けて答えた。
「謝罪は不要です。むしろ謝罪などしなくていいわ!
あなたとは、この先も関わって行く気がするしね。」
「ありがとうございます」
4人は神官の前に集まり、女神の像の前に来た。
「さぁ、女神様の祝福をあなた方に・・
その言葉と共に女神が現れた。
「私は女神メアリー、あなた方に祝福を与えます。
この教会を見つけ、入って来られたこと自体あなた方に力がある証拠です。
その力を善き方向に使う事を望みます」
そう話女神は消えた。
神官は何事もなかったかのように話しだした。
「これで成人式は終わりです」
そう宣言し奥へ戻っていった。
シルヴィアは
「やっぱり私は選ばれたんだわ!」と言って喜んだ。
シーラは当然のように
「そうね。やはりお母様の言ったとおりね。
女神メアリーの神殿を見つけ、そこで成人式を受けなさいと言った時は理由がわからなかったけど、ここはどうやら特別な教会のようね」と言った。
俺は少し考え事をしていた。
特別な教会?
普通では見つけられず入れないだと!?
どういう事だ?
ふと気づくとティカが俺の服を引っ張っていた。
それに気づいて周りをみると、ふたりの公女とティカが俺を見ていた。
「あ、すまない。少しぼーっとしていたようだ
ティカ、帰ろうか」
「うん」
俺たちは家に帰ることにした。
一応ファンタジーの世界ですが、レベルやステータス表示などはありません。