漁に出る
ーー男どきょなら五尺のからだぁーどんっと乗りだせぇ波ーのー上チョイ
男が一人船に乗る。丘には子を抱く妻置いて。
よいしょと錨を挙げたなら。どんと乗りだせ波の上。
男は一人海に出る。沖には一羽の鴎鳥。
うんしょとオールを漕いだなら。今日は帰れぬ波枕。
男は一人潮を待つ。日焼け素肌がしぶきに濡れる。
こらしょと舵を切ったなら。沖に見えるはローソク岩だ。
男は一人網投げる。海にはニシンの大量だ。
こいしょと網を挙げたなら。ほーら揚げろよ大漁旗だ。
女は一人飯を炊く。大漁豊漁祈願して。
我が子はそろそろ起きたろか。おしめを変えに向かい出す。
女は一人咽び泣く。幼い我が子を腕に抱き。
我が子になんと言ったろか。玉の素肌が涙に濡れる。
女は一人家で待つ。解れた網を繕って。
我が子は里を出たかろか。ニシンの煙が囲炉裏を囲む。
女は一人丘で待つ。右には小さな墓一つ。
我が子の船は無事だろか。帰らぬ男を思い出す。
ーー男稼業はぁーやめーらーれぬチョイ
ヤサエーエンヤーアノサーアノドーコイショー




