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衝撃

 気絶していた私に少しずつ意識が戻ってきた。

 体が重い。

 床の硬い感覚がする。

 どうやら気絶して床に仰向けで倒れているようだ。

 額を温かい感覚が触れる。それは柔らかく弾力があり滑るような滑らかさと粘り気がある。暖かさが通り過ぎると今度は何かが揮発して行く様なスーッと冷たい感覚を感じる。また、額を温かい少しヌルリとした感覚が触れる。そしてスーッとする冷たい感覚その後にやってくる。

 何だろうか。

 私はゆっくりと目を開けた。

 今朝の男の顔が目の前にあった。

 端正な顔立ちに綺麗な瞳をしている。

 さっきは裸に気を取られて顔をあまり見ていなかったが何と美しい顔をしているのだろう。

 その男の顔が近付居てくる。

 そして額に温かい感覚。

 男が顔を遠ざける瞬間、男は舌を艷やかな唇の間にしまった。

 また、男の顔が近づく、吐息が私の顔を擽る。

 吐息が漏れるその唇から鮮やかな赤いベルベットの様な舌がゆっくりと姿を現す。

 私はあの美しい舌に舐められているのだ。

 暖かくヌルリとした感覚が額を走る。

 その瞬間、私は我に返った。

 「チョット!」

 私は頭を上げ、とっさに起き上がろうとした。

 起き上がれない!何故?

 そんな私を意にぜず、男は表情一つ変えず、私の上げた首筋を無言で舐め始めた。

 額とは感覚が違う。舐められた瞬間。

 胸を、腹を、脚を何かが走り抜けた。

 「ン…」

 変な声が出てしまった。

 全身が擽ったいような、柔らかい綿に包まれて居るような、痺れているような、何だろうこの全身を包む感覚は。分からない。だけど一つ言えるとことはとてもとても気持ちがいい。

 「ああ…」

 私の口から思わす吐息が漏れる。

 気持ちがいい、このまま彼と…

 いや!

 このままではダメ!

 男にこのまま舐め続けられてはダメ!

 私は又立ち上がろうとする。

 肩が重い、何かが乗っかっているようだ。

 見ると男の細く筋肉質な腕が私の肩を押さえつけている。

 私は裸の男に肩を押さえつけられ舐められているのだ。

 裸!ハッとして男の下半身を見てしまった。

 裸!

 じゃない!

 良かった、かろうじて下半身にはさっきのテーブルクロスが不格好では在るが何とか巻き付いている。

 ああ、良かった、じゃない!私は拒否の意味合いを込めて、顔を大きく強く振っり、

 「チョット…ヤメテ…ねえ!」と、言った。

 その状態では流石に舐めていられ無かったのか、やっと男は舐めるのを止めて口を開いた。そして男は囁くよう声「何で?」と、言った。

 「何でって…嫌だから…」

 そうは言ったが。なんだろう、嫌というか、変な気分というか、何だろう、とにかく訳がわからなかった。

 男は顔をグッと近づけ、「嫌?舐められるの好きでしょ。」と、言った。

 男の顔が近い、私は顔を背けて、「そんなわけ無いじゃない。」と、言っう。

 「そうかな?寝てる時、僕が舐めて上げたら怖かった顔が優しくなって笑顔になっていたよ。」と、男は笑みを浮かべた。

 「え?」私は寝てる間に、それを思った瞬間に顔が強張っていた。寝ている間に男に舐めていられいた事への恐怖だろうか、それを無意識に受け入れていた自分への苛立ちだろうか。顔が強張っていた。

 「また、怖い顔になっているし。僕がまた舐めて笑顔にしてあげるよ。」

 と、言い又、私の首筋を舐め始めた。

 男の温かい感触が首筋を通り抜ける。

 「だから…止め…」

 まただ、またあの何とも言えない感覚が全身を包み込む。

 男に舐められ少し力が抜ける。

 強張った顔が段々と緩んでいく。

 ふと、幼い時に飼っていた猫の事を思い出していた。

 そう言えばあの子も一度舐め始めると飽きるまで舐め続けていたな。止めさせようとすると怒るし。ああ、あの子もあれは私が喜ぶと思って舐め続けていのかも、それで何で止めさせようとすると何で僕の気持ちが分からないんだって怒ったのかも知れない。

 この行動やはり猫だ。男の人は昨日の猫ちゃんで間違いないんだろうな。

 ああ、もういい、飽きるまで舐めさせるしか無いか。

 私は猫さんの行為を受け入れることにした。

 猫さんは嬉しそうに私を舐めている。

 首筋から、耳の裏へ、そして耳へ行き、頬へと…そこから下へ下がって唇へ…

 「唇はダメ!」

 顔を背けて唇は死守する。

 猫さんが私の目を見つめて語りかける。

 「ダメなの?」

 「ダメ!そこは絶対にダメ!」

 「ダメ?」

 「ダメったらダメ!」

 その言葉に猫さんは子供のようにむくれた表情をし

 「もういい!」と、立ち上がって暖炉の前でうずくまった。

 いじけてしまったようだ。

 やっとこれで開放された。ああ…顔中がヨダレでベチャベチャだ。

 顔を洗ってこよう。

 うずくまる猫さんを横目にやっぱり猫ちゃんだと思いながら洗面台へと向かった。

 顔を洗い、洗面台から戻ると男は眠っていた。

 キッチの台の上には焦げた目玉焼きとパンが、お鍋の中には水の様なスープが入っている。

 一生懸命作ってくれたんのね。そう思い。

 私は焦げた目玉焼きとパンを食べ、水のように薄いスープを飲んだ。

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