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衝撃

 気付いた時には朝だった。温かい朝だ。窓から日差しが差し込んでいる。とは言え冬の朝がこんなに暖かいだろかと疑問に思う。

 暖炉で火が燃えている。

 おかしいな、昨日消し忘れたにしろもう消えて灰になっているはずだ。そう疑問に思っていると、何かいい香りがする。キッチンからの様だ、誰か居るのだろうか?

 恐る恐るキッチンへ向かう。

 そこには人影が在った。肌色が見える。長身の男が料理をしている。

 しかも裸で…

 適度に発達した肩周りの筋肉が動くたびに躍動し。

 綺麗に括れた腰が左右にくねる。

 引き締まったお尻と足が何とも、何とも…って、何で男の人が裸でキッチンに居るの?

 「これは夢?」

 頬をつねってみる。

 痛い…夢じゃない。

 「お目覚めですか?」と、裸の男が私に気付いて振り向く…裸の…裸の男が…振りむ…

 「チョット!」私は咄嗟に顔を背けた。

 「どうしました?」

 男が近付く感覚がした。

 私は警戒し叫んだ。

 「こっち来ないでください!」

 不思議そうに男が聞く「どうしてですか?昨晩はあんなに優しく僕を抱いてくれたのに。」

 「だだだいた!」抱いたって…え?

 男は嬉しそうな声で語る。「そうですよ。あなたの胸は暖かく柔らかでとても心地よかった。胸の奥から優しさがにじみ出ていて本当に天国のようでした。」

 何を言っているんだろうこの男は。

 「変態!強姦!出て行てください!」と、私は叫んだ。

 「ひどいですよ。昨日は…」と、男のシュンとした声が聞こえる。

 「だから知らない。あたな一体誰なの?」

 「誰って?昨晩の猫です。」と、男は言った。

 猫?それってあの、「昨日のって猫ちゃん?」

 「そうその猫です。」

 何を言ってるんだろう、この変態は、「そんな分け?」と、言って猫の事が心配になった「そうだ猫ちゃん!」

 私は猫の様子を見に行った。居ない!マフラーの中には居ない。暖炉の前にも。ベッドの下にも居ない。何処にも居ない!

 「猫ちゃんを何処へやったんですか!」

 男を観ないように顔を背けながら男を問いただした。

 「ここに居ますよ。」男がそう言った。

 どう言うことだろう?「ここって?」男が居るのはキッチン。不安が過る。

 「まさか料理して…」最悪の事を考えてしまった。

 「そう料理してました。」と、ひょうひょうと言った。

 「な…な…なんて言うことをするんですか?」怒りと悲しみがこみ上げてくる。

 男は何の罪悪感も無いように、「いや、朝食をと思って。」と、言った。

 「だからって…だからって…」

 「美味しく出来てるといいのですが。」

 この男はなんとうい事を平然と言うのか。

 私は感情的になり叫んだ。

 「なんていう事をしてくれたんですか!」

 「喜んでもらえると思って…」と、男はしゅんとしたやっと自分のした事がわかったのだろうか。

 「猫ちゃんを返して下さい!」

 「だから僕が猫です。」

 まったくこの男は、「未だ言うか野蛮人!」

 「人間に傷つけられて路地で弱って死にかけている所を助けてもらった猫ですよ。」と、男は言った。猫を拾った事を知っている。

 「何でそこまで知ってるの?もしかしてストーカー?」

 「いや、ほら観て下さいこの太ももの傷を。」と、男は言った。

 「太ももの傷、たしかに猫ちゃんにも在った。」

 「ほらここ。」と、男は言った。

 その声にちらりと男の方を向く…足元から脹脛、膝そこから徐々に上へ…

 「って、そんな所見れるわけ無いでしょう!」

 「何で?」

 「何でって太ももの横には…」と、私は声を詰まらせた。

 男が聞き返す。

 「横には?」

 「横には…」男の人の太ももの横には…横には…

 って「言える分け無いでしょ。変態!」

 「見てもらえないんですか?」悲しそうな男の声。

 「一つ質問します、何で猫が人間の姿をしているんですか?」

 「分かりません。朝起きたらこうなっていました。」

 「本当ですか?前にも人間の姿になったことは?」

 「無いです。」

 「こうやって女の人を騙してるんじゃ。」

 「そんな事はありません。こんな事初めてだし。」

 「ああ、もう分りました。」と、私は根負けした。

 嬉しそうな男の声がする。

 「信じてもらえたんですね。」と、嬉しそうな声が聞こえた。

 「未だです!取り敢えず傷を確認させて下さい。」

 「それじゃあ、早速!」

 「チョット、待って下さい。後ろ向いて下さい。」

 「何で?」

 「何でじゃないです!いいから向いて下さい!」

 前からなんて見れるはずが無いじゃないのと私は思った。

 「はい…わかりました。」男は渋々と言った感じだ。

 男の足音が聞こえる。どうやら後ろを向いているようだ。

 「向きましたか?」

 「はい向きました。」

 その声に、私はゆっくりと男の方を向いた。

 そこには男の裸の後ろ姿が在った。

 細身の筋肉質で引き締まった体。

 発達した肩と脚の筋肉。

 腰は括れ美しい体をしている。

 言われてみれば確かに猫の様な体つきをしている。

 見とれてしまった。

 いやこの変態があの猫ちゃんなのか確かめなくては。

 太ももの傷を確認しなくては。

 信用した分けではないので、少し遠目から太ももを確認する。

 お尻。お尻が目に入る。

 引き締まった、されど柔らかそうなお尻。

 いやいや。そこではない。もう少し横を見なくては。

 引き締まった太もも、高く跳躍できそうな脚だ。

 右脚に傷がある。確かに昨日猫ちゃんの右脚に在った傷に似ている。

 「確かに傷はありますね。」

 私がそう言うと。

 「だから言ったでしょ。」と、男が振り向ことした。

 私は叫ぶ、

 「だめ!未だこっち向かないで。」と、言いながら顔を背けた。

 「まだ信用してないから。」と、私は言った。

 信用していないという言葉に反応したのか男が語りだした。

 「昨日、空腹のあまり店先の肉を奪ったんです。そうしたら店の人間に追い回されて。木の棒で脚を傷つけられました。それでも必死で走って走ってでもその内に寒さのせいか傷のせいか体が動かなくなって、身を隠す為に隙間に入ったんですけど。どんどんと意識が遠くなっていったです。人間に見つかるかも知れないのに僕は何故かが鳴いて助けを呼んでいました。そうしたら優しい声と温かい温もりを感じたんです。微かな意識の中、感じたのが胸の暖かさと優しさ。それと凄いスピードで走る感覚と蹄の音、馬車の車輪の音、必死で叫ぶ人の声、早まっていく心臓の音、荒い吐息。」

 確かに昨晩の出来事に酷似している。まるで本当に体験したような、本当に…

 「本当に猫ちゃんなんですか?」と、少し疑いながらもそうなのではないかと思った。

 「そうですよ。」と自称猫が言う。

 「分かりました。」

 「じゃあ!」

 「未だです!百歩譲ってあなたが昨晩の猫ちゃんだと信じましょう。でも取り敢えず服を着て下さい。」猫ちゃんにしろ何にしろ、まず服を着てもらいた。部屋に裸の男が居たのではたまったものではない。

 「服ですね。でも僕服を持っていないんです。」

 「服を持っていない?」

 「猫ですし。いつも裸ですからね。」と、男は言った。確かに猫ちゃんは普通服を着ていない。

 仕方がないので、「私の服を…体型がだいぶ違うからダメですね。」

 「そうなんですか。」

 「取り敢えず。テーブルクロスとか、そこら辺布でなんとかしましょう。」

 「まずテーブルクロスを腰に巻いてください。」

 部屋にあったテーブルクロスを手に取り、猫ちゃん…いや猫さんの元へ、裸を見ないように後ずさりで猫ちゃんに渡した。

 受け取った自称猫ちゃんは「どうやって巻くんですか?」と聞いた。

 「巻けないの?」

 「猫ですし、良くわからないんです。」

 巻けないのだって、「料理はできるのに?」

 「料理は人の真似をしたら何とか出来ました。」

 「それなのに布を巻けないの?」

 「はい、巻けません。」と、きっぱり言った。

 「仕方がない。」

 私は巻いてあげることにした。

 「後ろ向いていて下さいね。」

 後ろを向いた猫さんの腰に布を巻き付ける為に近付く。

 大きいく滑らかな背中。

 腰から手を回しいてもう片方の手でつかもうとする。

 背中が急接近してくる。

 目を開けていては耐えられない。

 目を閉じて布を掴もうと手をのばす。

 頬に暖かな肌の温もりが伝わってくる。

 ピトッと滑やかな感触が頬に伝わる。

 アッと思い体制をそらす。

 すると今度は胸に柔らかい感触が当たる。

 コレはもしやお尻!そう思い後ろに勢いよく避けようとした。

 しかし、テーブルクロスと手が猫さんの前に行っている。その事を忘れて避けたのだ。

 猫さんは体制を崩して後ろに倒れてくる。私もそれに押されるように体制を崩し床に倒れ込む。

 胸に伝わる暖かな温もり、そして腕に伝わる滑やかな肌の感触。

 「昨日と同じだね。」と、猫さんの声がそういった。

 うっらっと目を開けると、肌色が見える。す

 私の開いた足の間に男が背を向けた状態で座って居る。

 男に手を回し、胸が猫さんの背中に押し付けられている。

 これは、どういう状況だろうか?

 はたから見れはこれは私が裸の男に抱きついている状況に見えるのではないだろうか。

 恥ずかしい!

 胸の中から熱いものがこみ上げてくる。

 それは全身をめぐり体中を熱くする。

 何だろうかこの感覚は。

 ああ顔が熱い!体が熱い!

 汗が溢れ出て体を濡らしていく。

 ああ…ああもうダメ!

 眼の前が真っ白になり私は気絶をした。

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