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出会い

 その日は冬のとても寒い日だった。

 街頭に火が暖かく灯る頃、私は仕事を終え石畳の大通りを歩いていました。

 特に用事もなくいつも通りに帰宅するつもりでした。でも、ふといつもは通らない裏路地が気になる。

 何だろう。

 誰かに呼ばれているような、そんな気した。

 そして私は吸い込まれるように裏路地へ。

 そこは、冷たい湿気と吹き抜ける風で大通りよりかなり寒い。

 家々からは、様々な音が聞こえてくる。

 男性の笑い声。

 女性の笑い声。

 男女が愛し合う声。

 夫婦喧嘩の声。

 得体の知れない声。

 何だか怖くなってきた。

 何でこんな所に着たんだっけ?

 戻ろう。

 そう思って来た道を引き返そうとしたその時。

 すぐ近くで

 「助けて」

 と、助けを求める様な声が聞こえた。

 私はその声に恐る恐る聞き返した。

 「だれですか?」

 その問いに返事はない。

 「ニャーニャーニャー…」

 猫の声が聞こえる。

 「何処に居るんですか?」

 やはり問いに返事はない。

 「ニャーニャー…」

 また猫の声だ。

 助けを求める声は気のせいだたのだろうか。

 「ニャー……」

 猫の声がさっきより弱くなっている気がする。

 何処だろう近くにいるはずだと。私は猫を探した。

 「ニャー……」

 弱々しい猫の声が聞こえる。

 あそこだ。

 家と家との隙間に猫がうずくまっている。

 銀色の綺麗な毛並みの猫だ。

 足に怪我をしている。

 私は猫に手を伸ばし抱き上げる。

 弱っているせいだろうか、抵抗すること無く抱き上げられた。

 よく見ると右脚の怪我は大したことがない。

 しかし、体が冷たい。これでは凍え死んでしまうと首に撒いていた赤いマフラーで猫を包んだ。そして私の服の下へ入れ、胸で抱きしめた。

 マフラー越しに猫の冷えた体の感覚が伝わってくる。

 早くもっと温めてあげなくては。

 私は裏路地を走った。

 そしていつもの大通りへ。

 馬車が大通りを走ってくる。

 「すみません!停まって下さい!」

 私は叫んだ。でも、馬車が眼の前を通り過ぎる。

 声が聞こえなかったのだろう?

 今度は騎馬隊の姿が見えた。

 「すみまんせん。助けてください。」

 馬がゆっくりと歩みをとめ。馬に乗った警務官が話しかけてくる。

 「どうしました?」

 「猫が、死にそうなんです。」と、私がそう言うと。

 「なんだ猫か。」と呟いて、警務官は馬を足で蹴り行ってしまった。

 誰も助けてくれない。

 走るしかない。

 私は走った。

 必死だった、とにかく早くと言う気持ちだった。

 息が切れる。

 苦しい。

 でも、早く温めてあげなきゃ。

 必死の思い出澄んでいるアパートの前にたどり着き、駆け込んだ。

 でも、未だだ。

 私の家はこの五階建てアパートの最上階。

 息を整えて一気に駆け上がる。二階三階、足が重い、息が苦しい。四階急限界が近い。。

 「後、一階…」

 最後の力を振り絞り。重い足を持ち上げながら何とか家の前までたどり着いた。

 鍵を開け中へ。

 部屋に荷物を放り出してランプに明かりをつける。

 そして服の中に居る猫をそっと出すと、腕のかなで猫の金色の瞳が私を見つめていた。

 胸の中で温まり、少しは元気になっただろうか。

 猫をマフラーごと椅子の上に置く。

 そして暖炉に薪を焚べ、マッチで火をつけた。

 炎が次第に大きくなり、暖かくなっていく。

 猫の乗った椅子を猫ごとヨイショと暖炉の前に持っきた。

 「これ暖かくなるよ。」と、猫に話しかける。

 その声に猫は頭を上げ、私を観て、再び頭をマフラーの上に下ろした。

 私は綺麗な布と綺麗な水を用意した。

 猫をマフラーから私の膝の上に移し、傷口を水で洗った。傷口はそんなに深くはない、これなら直ぐに治りそうだ。

 それにさっきと比べて体も冷たく無くなっている。このまま暖炉の前で温まっていればよくなるだろうと思った。

 全力疾走で疲れたせいか。暖炉の暖かさと安堵のためか急に眠くなってきた。

 そう思っている内に私は眠りに着いていた。

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